【九州論2】イリーガルなモノを密輸する玄関口!金塊、覚せい剤、手榴弾……九州で蠢く闇ビジネスの実相

――昨年、福岡市で約7・5億円もの金塊が盗まれる事件が起きたが、最近、九州では金塊の密輸事件も目立つ。また、東シナ海の洋上では覚せい剤の取引が行われてきたようで、北九州市の住宅街からはロケットランチャーが押収されることも……。こうしたモノが流通する九州の地下経済を解き明かしたい。

『天皇の金塊』(学習研究社)

 去る5月、2016年7月に福岡市の博多駅前で約7億5000万円相当の金塊が強奪された事件の容疑者10名が逮捕された。主犯格の男は「金塊を密輸するため、たびたび韓国を訪れている」と話しており、さらに逮捕者のうちのひとり、小松崎太郎(のちに不起訴処分)が自身のフェイスブックにNEWSの手越祐也と一緒に写っている写真をアップしていたことも相まって、この事件は大きな注目を浴びた。

 また、さかのぼって4月には同じく福岡市で、福岡空港から無申告で現金約7億3500万円を香港に持ち出そうとした、金塊密輸グループと見られる韓国人の男4人が逮捕されるなど、金塊密輸に絡んだ事件が九州で続発している。本稿では、この金塊密輸をはじめとする九州の闇ビジネスの内幕に迫りたい。

金塊密輸ブームは数年前に終わった

 まず、金塊密輸とはどんなビジネスなのか。一言でいえば、脱税である。海外から金塊を輸入する場合、その金額が免税範囲である20万円を超えていれば、税関で消費税を納めなければならない。この課税から逃れるための手段が密輸であり、要は、海外で買った金塊を密輸し、国内で売れば消費税分が利益になるのだ。14年の消費税増税で、その利ざやが5%から8%に伸びたことが金塊密輸増加の背景にあるといわれる。では、この金塊密輸は具体的にどのようにして行われているのか?

「香港もしくはマカオで金塊を買って、それをいったん韓国に持ち込んで、そこからフェリーで九州のどこかの港に揚げるというのが主流ですね。船を使うのは、空港よりも税関の検査がユルいから。で、韓国から日本に持ち込む運び屋は、日本の普通の主婦である場合が多い。中国人の女性ブローカーなどが、奥様方のネットワークを通じて20万~30万円で雇ってるんです。彼女たちからすれば、韓国旅行もできるし、オイシいバイトですよ」

 そう語るのは、裏社会系ライターのA氏。素人考えでは、密輸を仕切っているのは日本の暴力団なのかと勘ぐってしまうが、必ずしもそうではないらしい。

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