仮想通貨や「メルカリ」でのトラブルに対応しきれていない?――景表法違反は企業の“やり得”!? 消費者庁は被害者を救えるか?

――消費者庁や国民生活センターは消費者の保護を目的として設立されており、被害者にとってのセーフティネットとされている。しかし、その役割についてはしっかりと知られていないのが実情であろう。これまでの消費者保護政策の歩みをたどるとともに、その役割と課題について明らかにしていこう。

『新しい消費者教育:これからの消費生活を考える』(慶應義塾大学出版会)

 前記事までの今月の特集ではさまざまな「情弱ビジネス」について見てきたが、もちろん国や行政はこれらのビジネスが引き起こす問題をただ指をくわえて見ていたわけではない。昨今では消費者庁による景品表示法違反の措置命令や、詐欺まがいのビジネスや特殊詐欺目的の「アポ電」に対する国民生活センターの注意喚起など、行政による消費者保護に関するニュースがメディアで取り上げられることも多くなっている。そこで本稿では、「日本において消費者保護政策がどのように整備されてきたか」をテーマに、消費者政策の推移とその課題などを見ていく。

 日本での消費者運動は戦前もあったが、1948年には東京の主婦らが粗悪な配給マッチが出回っていることに抗議する「不良マッチ追放運動」が起こったから注目された。この運動を契機に、日本における消費者団体の草分け的存在となる主婦連合会が結成。その後、62年には「家庭用品品質表示法」「景品表示法」が制定され、国民生活センターの前身となる特殊法人国民生活研究所が設立された(70年に国民生活センターが発足。2003年に独立行政法人化)。高度経済成長期の65年には、国民生活水準の向上に関する事務を所管する現・消費者庁の前身「経済企画庁国民生活局」が発足。また、同年には兵庫県にて全国初の消費生活センター「神戸生活科学センター」も開設されている。なお、消費生活センターは各地方自治体が設置する行政機関であり、国民生活センターと共に消費生活に関する苦情などを受け付け、紛争解決やその調査・研究を行っている。

 68年、「消費者保護基本法」が制定。国民生活センター調査室長補佐を経て、現在は日本女子大学にて消費者政策や消費者法を研究する細川幸一教授は、同法を日本において初めて消費者行政の枠組みを作ったと評する。

 また、この頃から悪質な訪問販売やマルチ商法が社会問題化し、72年には「割賦販売法」にクーリング・オフ制度が導入され、76年に「訪問販売等に関する法律」(2000年に「特定商取引に関する法律」と改題)も制定された。

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