軍艦島から福島第一原発まで “負の歴史”を忘却して変貌する「廃墟ブーム」の功罪

――1990年代以降一般化し、多くのライトマニアを生み出した「廃墟ブーム」。「軍艦島」に象徴されるように、いつの間にやら好事家の嗜好品から「我々日本人の記憶」へと変貌を遂げた廃墟をめぐる歴史を追う! 

 今年7月5日、ユネスコ世界遺産委員会の決定によって、日本全国23施設の「明治日本の産業革命遺産」が「世界文化遺産」として登録されたことは記憶に新しい。そのなかでも特に大きなインパクトをもって受け止められたのは、長崎県の南方に位置する「端島」。そう、あの「軍艦島」である。

 1974年に炭鉱が閉山、住人全員が島を退去して以降30年近くも手つかずのまま放置されたこの島が、いわゆる「廃墟マニア」から「日本最大の廃墟」として垂涎の的となっていたことはよく知られている。では、いつから……?

 今となっては当たり前のように語られる「廃墟マニア」、そして彼らが巻き起こした「廃墟ブーム」とは、いつ、どのような形で始まり、その背景には何があるのか? 本稿では、そんな問いに挑んでみたい。

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