年間収益は1兆円を超える国立大附属病院――最高学府最大のタブー学部? 不正入試で揺れる医学部の闇

――複数の大学で不適切な得点操作等が明らかになった、医学部の不正入試問題。社会全体で女性の権利の改善運動が進む中、女性を不利に扱う得点操作は強い非難を浴びた。なぜ医学部のみで、このような前近代的な横暴がまかり通ったのか。その背景を、大学における医学部の地位、権力や、カネの動きの側面から明らかにする。

医は仁術……ならぬ、算術?(写真はイメージ)

 女性や浪人生を不利に扱う得点操作に、文科省官僚が関わった裏口入学。東京医科大学の裏口入学問題の調査では、「もしも入学を許されたら寄付金は3000万円用意するつもりです」といった生々しいメモの存在も発覚した。こうした医学部における不正の裏には、大学における医学部の権力・地位の高さや、カネを動かす力の大きさがあるのではないだろうか? 本稿では、そのような仮説をもとに、問題の病巣をリポートしたい――。

 まず、医学部を持つ大学の現状を整理しておこう。医学部のある大学は全部で82校。うち国公立が51校、私立が31校だ。偏差値の序列では、上から東大、京大、阪大、慶應……といった順になるが、「受験の難易度とはまた別に『古い歴史を持つ大学のほうが偉い』という価値観が医学部にはあります」と私大勤務医は話す。

「日本の医学部でもっとも長い歴史を持つのは東大で、旧帝大の他6校と共に国公立大のヒエラルキーではトップにあります。私立では慶應、慈恵医大、日本医科大の歴史が古く、私立御三家といわれています」(私大勤務医)

 その下に位置するのが、旧六医大と言われる国立の千葉大や新潟大、金沢大などの旧制医科大学。さらに下には戦後に大学に昇格した「旧制医専(旧制医学専門学校)」のグループがあり、国公立では東京医科歯科、大阪市立、群馬、広島など、私立では順天堂、昭和、東京医、東京女子医などがここに該当。そして最下層に位置するのが、比較的歴史の浅い「新設医学部」のグループで、国立の筑波や富山、福井、私立の北里、帝京、東海などが並ぶ。

 この序列は、おおむね受験の難易度とも相関。私立大学は、序列が下になるほど学費が高くなる傾向もある。なお、不正入試を認めた9校のうち、神戸大学を除く8校は私立大学だった。

「私立でも医学部のみの単科大学や、順天堂大や昭和大のように医学部を中心に発展した大学が目立っています。そのような私大は、創立者一族が今も権力を持っているところが多く、『ウチはウチの選び方をしてもいいだろう』という意識から不正を行いやすい環境にあったといえるでしょう」(同)

 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏も次のように続ける。

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