南北融和が新たな差別を生む? 脱北者たちの告白本

――朝鮮半島の争いの歴史の証言者として、北朝鮮から亡命した“脱北者”は無視できない存在。ここでは、彼らが韓国などで出版した告白本を紹介しよう。

『脱北者たち』(駒草出版)

 朝鮮半島の現在進行形の歴史を語る証言者として、欠かせないのが、北朝鮮から韓国、もしくは海外に亡命した“脱北者”たちだ。脱北者の数は増え続け、現在では韓国に3万人以上が住んでいるとされている。そんな彼らがその体験を綴った書籍は、世界的に大きな注目を浴びることが増えている。

 15年には、脱北者イ・ヒョンソ氏が書いた手記『7つの名前を持つ少女』【9】が、アマゾンの子会社「グッドリーズ」の年間チョイス作品にノミネート。「中国で強制送還を避けるために苦労した話」「北朝鮮に残った家族を救出するために傾けた努力」などが描かれていると評価する。

 同じく、脱北者シン・ドンヒョクの『北朝鮮 14号管理所からの脱出』【10】は、世界に衝撃を与えた。同氏は北朝鮮の中でも特に統制が厳しい収容所「完全統制区域」から脱出した世界で唯一の人物だと主張。収容所内部の生活をワシントン・ポストのベテラン記者と共に書籍化した。同書はその内容の濃さからか日本を含む世界27カ国で出版されている。

 周知の通り、日本でも“脱北本”は数多く販売されている。『生きるための選択 ~少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った』(辰巳出版、パク・ヨンミ著)『自由を盗んだ少年~北朝鮮 悪童日記』(太田出版、金革著)『北の喜怒哀楽~45年間を北朝鮮で暮らして』(高木書房、木下公勝著)など枚挙に暇がないのだが、それらには脱北の過程で経験した苦しみや、北朝鮮の体制を批判するものが圧倒的に多い。一方、脱北者が定着している韓国では、それらの作風とは異なる脱北本が生まれている。

 韓国の北韓離脱住民定着支援事務所(脱北者支援センター)に勤務していた、作家チョン・ヨンソンは、脱北者をテーマにした長編小説『考える人たち』【11】を出版。そこには「韓国社会で生活する“脱北者”の現実」が生々しく描かれていた。チョン氏は、実際に脱北者から聞き取ったエピソードや、彼らのまわりに起こっている出来事を観察して小説に散りばめた。

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