変化する時代に法律がついていけないジレンマ――法制定には為政者の都合が優先される? 少数派を不安に陥れる悪法誕生のカラクリ

――法の解釈はともかく、今現在も法律は生み出され、また改正が審議されている。ここでは、そうした法律の制作に携わってきたおふた方に話を聞き、法律制定の裏方側から、なぜ“悪法”が生み出されてしまうのかその理由を探ってみた。果たして悪いのは、政治家か? 官僚か? それとも国民自身なのか……?

 現在、国会を賑わせている共謀罪(テロ等準備罪)に対し、「悪法」の大合唱が鳴りやまない。

 だが、厚生労働省による受動喫煙防止対策の新法案について、自民党の片山さつき議員が「全国の食べ物屋さんの経営が成り立たなくなる法律は、悪法」(17年2月9日 自民党厚生労働部会)と語るなど、さまざまな法律・法案が「悪法」のそしりを受けているようだ。

 なぜ「悪法」と呼ばれる法律が生み出されてしまうのか? 本稿では、そのメカニズムに焦点を当ててみよう。

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 そもそも「悪法」には明確な定義はなく、あくまでも個人の主観的な判断でその言葉が使われる。だが、議会で審議された後に制定される以上、万人にとっての悪法は存在しない。つまり為政者や官僚、財界など、一部の都合によって制定された法律が「悪法」と呼ばれてしまうようだ。

 衆議院法制局で15年間、法律立案に携わり、『元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術』(ダイヤモンド社)などの著書がある吉田利宏氏は、「日本では、立法のシステムが整えられているため、決定的な意味での悪法は出ない仕組みになっています」と語る。とはいえ、「悪法」そのものが存在しないわけではない。吉田氏は、「『国民のためにならない要素がある法律』を、悪法と規定すれば、悪法だらけといえるでしょう」と指摘する。

「法律を作る側にいる官僚は、多額の予算を使えるなど自分たちに都合のいい要件を法律に盛り込んでしまいがち。そのため、すべての国民の方を向かない、省益優先の法律が生まれやすくなってしまうんです。

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