警察庁も採用するアリババ級の監視技術――世界を“監視する”NECの技術!「顔認証」監視国家へ進む日本

――いつの間にか世界の最先端テクノロジー大国になっていた中国。それを認めたくない人々からの批判として、常に引き合いに出されるのが顔認証技術やAIを使った国民の監視だ。一党独裁国家による不当な人権侵害であるかのように喧伝されているが、すでに多くの国で同様のハイテク監視が行われつつあることをご存じだろうか?

AI・人工知能EXPO2019の様子。多くの企業が顔認証システムを開発していた。

 満席の講演会場。壇上の人物の言葉に熱心に耳を傾け、メモをとる白髪交じりのビジネスマンたち。そこにいたのは、アリババ・クラウドのデータ・インテリジェンスの最高責任者・朱金童氏だ。4月に東京で開催された「AI・人工知能EXPO 2019」の特別講演でひときわ注目を集めたゲストスピーカーで、講演中はマスコミの撮影・録音も許可されないという厳戒態勢の中で行われた。その内容は、今やAI(人工知能)の研究で世界トップクラスの技術力を誇るアリババのクラウド事業や、将来的なAIクラウドがもたらすインパクトを表層的に解説したものにすぎなかったが、AI強国から来た若い30代の技術者の講演を、一回りも二回りも年上の経営者、サラリーマンたちが聞き入る姿を見て、改めて時代が変わったと痛感した。

 顔認証決済や無人コンビニ、スコアリング制度、自動運転の普及など、中国は世界に先駆けて最先端の技術が導入され、国全体がAI関連の実証実験の場と化している。一方で、一党独裁による監視国家という指摘も少なくない。習近平政権の強権的な政策と、民間企業の技術力が組み合わさリ、今中国では人類が直面したことのない“ディストピア”が生まれようとしている。

 アリババには“裏”の顔がある。2018年11月に会長の馬雲(ジャック・マー)が中国共産党員だったことが明らかとなり、多くの人が衝撃を受けたが、馬はたびたび政府に協力すると明言してきた。実際、杭州市の本社オフィスのほか、都市部の拠点オフィスには警察が常駐していると報じられた。アリババには、自社のECや金融をはじめさまざまなサービスのネットワークをリアルタイムで監視する「アリシールド(阿里神盾局)」という部署があり、警察と連携して違法行為の取り締まりを行っているのだ。アリシールドは表向き、知的財産権侵害やポルノコンテンツの摘発を行っているとするが、実態は謎に包まれている。一方、傘下のアリババ・クラウドも杭州市の警察部門とタッグを組み、ビッグデータと防犯カメラ網、ネットワーク監視、AIを組み合わせた防犯システムの開発に取り組んでいる。

中国の民族自治区は巨大な収容所!?

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