相方愛、若手への喝、テレビ制作者への憤り…「今お笑いの仕事は趣味みたいなもん」【ビートきよし】が語る、昭和の芸人の矜持

 これまでの記事から語られてきた通り、同時代の流れの中に身を置くことこそ肝要であるがゆえに、芸人という職業は引退や休業が難しい。昭和の寄席で鍛えられ、80年代漫才ブームで世に出たツービートの片割れ・ビートきよし氏に、最近のテレビとお笑い業界事情、自分の“最後の仕事”について聞いた。

ビートきよし氏。(写真/北川泉)

 俺らの頃は、テレビに出るなんて、とんでもないことだったんだよ。雲の上よりさらに上、芸も運も実力も、すべてが揃ってようやく出られるかどうか。芸能界にはランクがしっかりあってさ、トップには銀幕スターがいて、次に歌い手さんとかいろいろ、一番下っ端がお笑い。その中でも、落語家さんや講談師が上にいて、その下が漫才師だから。それが今は、なんでもかんでもごちゃごちゃだよね。お笑いの人間が演技もキャスターもやっちゃうし、俳優やアナウンサーがバラエティにも出るし。

うちの相方だっていろいろやってるけど、あれは根底に芸があるからこそ、崩しても成立してるだけで。芸がないのに崩しちゃったら、それはただの破壊だよ。

 問題は、芸がないのにテレビに出て、飽きられちゃった後どうするか。一回でも味の濃い飯を食っちゃったら、薄い飯なんか食いたくなくなる。そうなると、普通の世界では生きられなくて、人を騙したり、盗んだりしちゃうでしょう。昔はヤクザが見せつけのために悪さをしたけど、今は一般の人が平気でそういうことをやっちゃう時代。俺らが修業したから偉いってことじゃなくて、そんな人生を歩んでほしくないっていうだけなんだよ。

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