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【愛用品リスト/7】逝ってしまったMacBookAirによせて

先月、享年6歳で世を去ったMacBookAirは、そう、2013年に購入したものであった。悲しみに浸る間もなく、いや、正確には「しゅ、出費が〜!」と咽び泣きながら、私は彼女(女性だったのか??)をリサイクルセンターに出し、今この文章を、新しくむかえたMacBookAirで書いている。情弱な私はデータのバックアップとかいうやつのやり方がよくわかっておらず、飛んでしまったデータがいくつかあるが、いいのよ、過去は振り返らない主義だ。データはPCの中にではなく、私の頭の中にある。今は、ただ前を向いて歩いていこうと思っている。

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(←亡骸 生きてる→)(ちょっと指紋が……)

ところで、この【愛用品リスト】に、亡きMacBookAirのことを書こうかどうか、実は少し迷ったのである。

亡き彼女を購入した2013年はまだ、新しいiPhoneが発表されるとてんやわんやの大騒ぎで、発売日にはAppleStoreの前に徹夜で並ぶような人がいた時代だった。何かを買うために徹夜で並ぶって、私は経験したことがないのだけど、振り返るとめっちゃ楽しそうだよな。しかし今となっては、少なくとも私の観測範囲では、新しいiPhoneが出てもみんな「ふーん」といった風情だ。誰も徹夜でなど並ばない。スマホやPCは日常において決して特別な存在ではなく、値段は安くないものの、誰もが持っているいわば生活必需品。生活必需品ーーそう、洗剤みたいな存在。【愛用品リスト】は愛用品について思いを綴るやつなので、私はただの洗剤について思いを綴れるのか? と、亡き彼女について書くのを躊躇ったというわけである。いやむしろ、この時代だからこそ、こだわりの洗剤があるならそれについて書くことはけっこうクールだけど、PCについて語ることなくね? と思ったのである。しかし語ることが特になくても、毎日使っているものだし、欠かせないものであることに変わりはないからなあ。そう思って、迷いつつも今これを書いている。うーん、キーボードは前のやつのほうが好き。新しいやつ、なんかチャタチャタうるさい気がする。でも指紋認証はわりと便利で、よいと思う。

ところで私、新しいPCは色をスペースグレイにしてしまったんだよね。なんか、オフィスで使っている人のやつを見ていて、カッコイイかなと思っちゃったんだよね。でも開封した瞬間、「あれ、黒い……?」と思って、今は、ちょっと、ちょっと間違えたかなと正直思っているよね。私は部屋のものをベージュや白など薄い色でまとめているんだけど、スペースグレイはその中でちょっと浮くよね。ノートPCなんてそんなに大きくないし存在感ないでしょと思ってナメていたけど、私の家が狭いからか、部屋の中で意外と存在感があるね。ようやく目に馴染んできた気がするけど、買って2〜3日は毎朝目覚めるたびに「黒い!」と思っていたよね。

しかし、ものは考えようだ。パズルのピースを1つ入れ替えたら、他の部分との不協和が生じ、周辺もいろいろ変えたくなるーーきっと、同じようなことが今私の身にも起きている。PCが黒くなったことで(?)、今までヨシとしてきた部屋のいろいろな部分が、なんだか気に入らなくなってきた。そういうわけで、私は今お部屋を大改造中なのである。家具や収納はとりあえず無印良品で全部買えばいいのよ、だって私センスないから。そんな甘っちょろいことを考えていた脳みそを入れ替えて、なんか、もっと、私は部屋を攻めてみたい。センスがないからと諦めていたけど、私は本当はもっと毒々しいものが好きだし、永遠の憧れは澁澤龍彦の部屋なんだ……髑髏とか変な貝殻とか呪われそうな鏡とかダミアン・ハーストのリトグラフとか置きたい。そして、澁澤龍彦の部屋ならば、置かれているのは確かにシルバーではなく、スペースグレイのMacBookAirな気がする。

まあしかしさすがに、今の私のセンスと購買力で澁澤龍彦の部屋を実現しようとしたら、ただの悪趣味な人になってしまう。だからまだまだ無印良品のお世話にはなりますけど、MacBookAirが黒くなったことで、「私が作りたかった部屋」のことをもう一度、思い出したという次第だ。

いつか、澁澤龍彦のような部屋を実現して、訪れる人に「あなたの隣にあるのはかつてフランスの画家が所有していたネズミの剥製でね……」とか言って、びっくりさせるんだ。今は亡きシルバーの彼女と、我が家に新しくやってきたスペースグレイの彼女(また女性なのか??)に、そして私の果てなき夢に、乾杯。

【愛用品リスト】はこうして、まだまだ続く。


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