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【日記/14】書評が書けない本

私のブログの主要カテゴリーの1つに、「書評」がある。自分としては「書評」ではなく、「読んだ本を元にしたエッセイ」というか、感想文のようなノリで書いているのだが、まあとにかくやたら読んだ本についてああだこうだと書いている。

しかし、当然ながら読んだ本すべてについて感想文を書いているわけではない。書きたいと思うような「引っかかり」が見つからず、何も書けなかった本、というのもある。そういった本は、もったいないので(貧乏性なのだ)、何の脈絡もなくいきなり他の話題に突っ込んだりして供養している。例をあげるなら、元旦に書いた夏目漱石の『行人』のエントリに出てくる橘玲の『「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する』などがそうだ。関係ない話をしているところでいきなり突っ込んでいる。

http://aniram-czech.hatenablog.com/entry/2016/01/01/112614

今回はこの1年以内くらいに読んだなかで、そんな「書評が書けなかった本」を紹介しようと思う。そしてここで供養して、古本屋で成仏してもらう。

1・岡田斗司夫『カリスマ論』

タイトルを見た瞬間、「よっしゃ、反論しちゃる」と意気込んで買った。反論という行為に心躍ってしまうところがせせこましいが、お金を払って買ったんだから文句はいわせない。だけど、読んでみたらあまり面白く反論できなさそうな本だとかんじたので、ボツになった。私は議論反論が大好きだが、愛のある反論がしたいというか、読んだ人が不快になる反論はしたくないと思っている。反論はただのdisとはちがい、同じテーブルの人たちの顔がポカポカしてきて、体温が上がるようなものでなければならないと思っている。disは不快になるだけだ。私はdisはやらない。

2・上野千鶴子、信田さよ子、北原みのり『毒婦たち:東電OLと木嶋佳苗のあいだ』

SOLOのコラムで東電OLのことを書こうかと思って、この本と園子温の映画『恋の罪』を観て臨んだが、しっくりこなかったのでボツになった。なんとなく思ったのは、同じ女性といえども性別以外は共通点が見つからないような人だっているわけで、そういう人の心情を無理に推し量って書くと政治的にヤバイ文章になるということだ。性別というものをあまり信頼しないほうがいいと思った。「女だから同じ女の気持ちがわかる」みたいなのは、ちょっとおマヌケな発想である。他人の気持ちなんか知らんよ。

それでも、自分の場合、東電OLよりはまだ木嶋佳苗のほうが心情的に理解できるところがある。私は、万に一つの確率で他人を刺し殺すことはあっても、自分の手首は絶対に切らないタイプの人間なのだ。

3・宇野常寛『ゼロ年代の想像力』

岡崎京子論を読みたくて買った。が、いちばん面白かったのは宮藤官九郎論であった。特に、『木更津キャッツアイ』がなぜあのような物語の構造になっているのかという話が興味深かった(だけど詳しくは忘れてしまった)。これにインスパイアされて、私もブログで宮藤官九郎論を書いてみようかと思ったが、私は『ごめんね青春!』しか内容をマトモに覚えているドラマがなく、今更他のドラマを見直すのもダルイので諦めた。宇野常寛の博識っぷりに感服した本でもある。

4・佐々木俊尚『レイヤー化する世界―テクノロジーとの共犯関係が始まる』

実は内容をあまり覚えていない。この本そのものよりは、この本の出版を機に東浩紀さんと佐々木俊尚さんがゲンロンカフェで行なった対談が面白かった(ニコニコ動画で見た)。佐々木さんも東さんもリベラル寄りの思想の持ち主だと私は認識しているのだが、佐々木さんとの対立構造を際立たせるためにか、東さんはあえて保守寄りの発言をしていた。

かくいう私自身も、かなりリベラルな思想の持ち主である。しかし対談のなかでいわれていた、リベラルというのは精神的マッチョでないと成立しないという話にとても考えさせられた。マッチョでない人を尊重できないリベラルは、おそらく長期的に見てうまくいかないだろう。半端なリベラルは、社会的な危機が訪れると一気に保守に傾くので注意が必要である。

5・カポーティ『遠い声 遠い部屋』

カポーティの『ティファニーで朝食を』がとても好きなので、その後続けて『冷血』と、この『遠い声 遠い部屋』を読んだが、どちらも今ひとつだった。しかし文学系は読む時期によって印象がだいぶ変わるので、何年かしたらまた挑戦してみたい。

そういえば、『陽だまりの彼女』という小説が「女子が男子に読んでほしい恋愛小説NO.1」というコピーで売り出されていたが、私にとっての「男子(というか男性)に読んでほしい小説」は、カポーティの『花盛りの家』という短編である。この小説には、女の狂気が詰まっている。狂っている。『ティファニー』と同じ文庫のなかに入っています。

こういうのが何冊かたまったら、またまとめてお葬式をしたいと思う。

なんまいだぶなんまいだぶ~

شكرا لك!