アルジャジーラ

【日記/65】今週のアルジャジーラ〔イラク〕

毎週金曜日に更新している「今週のアルジャジーラ」。アラブ・イスラム世界に興味津々の私が、アルジャジーラが報道した記事のなかからその週のお気に入りを引っ張ってきてぐだぐだ語る。なお、読んでいる人は、少ない。先週分はこちら

さっそく気になる記事だけど、今週はこちらを取り上げてみたい。

Iraqi Kurdistan: Everything is all right - everyone is ISIL

タイトルに「Kurdistan」という単語があるが、Kurdistanとはクルディスタン、クルド人が住んでいる地域のことだ。私が好んで読む小説や好んで観ていた映画には昔からよくこのクルド人が登場していたのだけど、そういえば私はクルド人問題について、最近まであまり理解していなかった。

クルド人とは、ある人にいわせれば「世界最大の少数民族」である。なんだその矛盾した言い草はという話だが、クルド人の人口は約2800万人といわれており、ちょうど東京都と神奈川県と千葉県の人口を合わせたくらいである。

東京都と神奈川県と千葉県の人口を合わせたくらいいるのだから、「全然少数じゃねえじゃんか!」ということになるのだけど、彼らは定まった国家に定住しておらず、トルコ、イラン、イラク、シリア、ドイツ、アフガニスタン、アゼルバイジャンなど中東地域の各国家にバラバラに居住している。バラバラに居住しているから、全然少数じゃねえのにどこに行ってもマイノリティ、「少数民族」扱いなのだ。ある日突然、日本が宇宙人に侵略されて、東京都と神奈川県と千葉県がバラバラの宇宙人国家によって統治されることになったら、我々は一気に「少数民族」である。国際社会から「関東人問題」とかいわれるようになる。大変だ。

記事では、そんなクルド人居住域のなかでも特に、イラクのモスルという大都市について書かれている。このモスルという都市は、2014年6月にISILに占拠され、以後重要拠点となっているらしい。モスルの人口は約170万人ということなので、世田谷区と渋谷区と港区と杉並区とを足したくらいの規模である。世田谷区と渋谷区と港区と杉並区が宇宙人国家の過激派組織に占拠されているのである。やっぱりとても大変だ。

もちろん、ただ占拠されて黙っているわけではない。米国の支援を受けたペシュメルガというクルド人民兵組織が存在する。ペシュメルガのTwitterアカウントはこちらだ。私はフォローしている。

モスルについて書かれている「イスラム国」制圧下で1年、変貌するモスルという記事も参考に読んだのだけど、ISILに占拠されたモスルは、この過激派組織によって街中のインフラが整えられたという良い面もなくはない。しかし、インターネットの使用が禁止され、米国などからの空爆に脅えていることから、当然ながら解放を望んでいるらしい。街の様子は一見穏やかに見えなくもないが、裏では常に緊張している。

さて、以下はかなり複雑な話で私も頭がこんがらがっているのだけど、アメリカは「テロと闘う」国家なので、当然ながらISIL掃討に意欲を見せ、前述したようにクルド人民兵組織ペシュメルガや、その他のクルド人組織を支援している。しかし、クルド人がいちばんたくさん住んでいるトルコにとっては、ペシュメルガなどのクルド人系組織は目障りな存在だ。

ここで、アメリカとクルド人組織 vs トルコとISIL という構造になってくれると初心者としてはわかりやすいのだが、トルコはISIL掃討のためアメリカを始めとする有志連合に参加しているし、アメリカはクルド人組織を支援する一方でトルコによるクルド人居住域への空爆を容認しているという。ええ、支援するけど攻撃されてもいいってどういうこと? 敵の敵は味方じゃなくて、敵の敵もやっぱり敵で、味方だけど純粋な味方というわけじゃなくて、結局、中東ってだれとだれが戦ってるの? 構造が複雑すぎる。

アメリカがトルコのクルド人空爆を容認

イスラエルとパレスチナの間の対立も、結局、だれとだれが対立しているのかよくわからない。イスラエル人 vs アラブ人 なのか、ユダヤ教徒 vs イスラム教徒なのか、争っている当人たちも答えがバラバラなのだという。

こちらも読んでね:【日記/61】今週のアルジャジーラ

今回は、読んでいる人が、ていうか何より私自身がイメージしやすいように人口規模を日本の都道府県や区に当てはめてみたのだけど、遥か遠く(に思える)中東で、東京都と神奈川県と千葉県と世田谷区と渋谷区と港区と杉並区が大変なことになっている。空爆で手足を失った人や亡くなった人は、いったいだれを恨むんだろう。どうしてこんなことになっているのか全然わからない、というすごく平凡なことを思った。

(※人口の計算が間違っていたらごめんなさい。)


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