エルサレムのイチゴ

【第31回】今週のアルジャジーラ〔UAE〕

隔週金曜日(たまに土曜日なこともある)に更新している「今週のアルジャジーラ」、今回はちょっとサムネイルの画像を変更してみました。イチゴをね、この大量に積まれた日本のスーパーで買ったらいくらすんのよというイチゴの山をね、アップにしてみたのです。意味は特にないです。

イチゴって原産地どこなんだろ? これはイスラエルの市場の写真なのだけど、モロッコでもイチゴ山盛りにしてあったし、中東ってイチゴいっぱいとれるのかな? 日本で買ったら500円くらいしそうなイチゴ、中東だと100円くらいです。

さて、今週の中東の様子はというと、相変わらずカタールがざわついている。それと、ISの拠点となっているイラクのモスルが陥落間近であるなどという記事もあり。

IS、モスルのモスクと斜塔を「爆破」 国家樹立宣言の場

あとは、IS指導者であるアブバクル・バグダディ氏がロシアによる空爆で死亡したという記事も読んだが、こちらは続報が入っておらず、あくまで可能性にとどまっているといったところだろうか。

IS指導者、ロシア空爆で死亡か 国防省が調査

そんなこんなで今週取り上げたい記事はこちら。ISは絡むものの場所は初登場のUAE、アラブ首長国連邦である。

Fighting ISIL through TV drama: The case of Black Crows

私はアラブ首長国連邦には一度だけ降り立ったことがあり(トランジットでよっただけだが)、アブダビの空港に数時間くらい滞在したことがある。エレベーターに指をはさんだ? 子供がギャーギャー泣いてしまい、周囲の大人たちを騒然とさせていたことだけはよく覚えている。あれちょっとやばい泣き方だったから一瞬(関係ないのに)焦ったけど、別に指の骨が折れたとかではなかったらしい。よかったよかった。お母さんはいかにもムスリムの女性といった風貌で、ふくよかな体を目元以外すべて真っ黒な布で覆っていた。

ちなみに、記事中でも触れられているラマダンは、先月に始まって今月24日に終わる──つまり明日だ。ラマダン期間中はみなさんご存知のとおり日中の食事を断ち(夜は食う)、いつも以上に清らかな気持ちを保ちながら、神様のことを想う。

しかし、そんな暇なラマダン中に見る昼ドラ(soap opera)が、イスラム世界ではちょっとした問題になっているという。イスラム教では飲酒や婚前の異性交遊などをタブーとしているので、お酒を飲んだり恋愛でメロメロになっていたりする昼ドラの世界はちょっとどうなの、しかもそれをラマダン中に見るなんてどうなの、という議論は以前からあった。

そんな昼ドラで、今度はISがやるような「殉教」を思わせるシーンが放映されていることについて問題視がされているらしい。「天国へはどうやって行くの? 船? 車?」と少年がたずねると、「何で行くかは問題じゃない。問題は、どのようにして天国へ入るかだ」と兵士が答え、自爆テロに使う爆弾付きのベルトを少年に与える。これを見た有識者から、「ISが作る宣伝動画じゃないんだから、こういうシーンはどうなの?」という話が出ているらしい。

私のイメージでは、イスラム教の世界ではキリスト教以上に「Paradise」を重視している印象があり、中東が舞台の映画を観ているとよく「天国ってどんなところなのかなあ?」みたいな無邪気な会話が繰り広げられている。私たちは天国でハッピーになるために生きているのであり、天国がハッピーならば生きている今が不幸だってへっちゃらさ、という世界観だ(私のイメージです)。やだよそんなの、と話を聞いただけだと思うけど、実際、自分が今差別されててお金もなくて、どうにも幸せになる機会が訪れなさそうだぞ?? っていう人生だったら、この世界観はぐっときちゃいますよね。

記事中に出てくるMBCというメディアはサウジアラビアのテレビ局らしいが、米国とこの問題について協議するための会場に選ばれたのがUAEのドバイであった、ということだ。今後、サウジアラビアやUAEのテレビドラマは変化していくのだろうか。

ISの宣伝動画を一度だけ見たことがあるが、「確かに、こりゃ上手いな」というのが私の個人的な感想だった。なんか、気分が盛り上がっちゃうんだよね。「よっしゃあああああ! ジハードだああああ!」という感じに、なる。思っても実行に移さないのは私が日本在住の日本人女性でイスラム教徒でもなく、彼らと私の間にだいぶ距離があるからだ。私がイラク在住のムスリムの男性とかだったら、盛り上がったあとどうなっていたかはわからない。

ナチスも映画をプロパガンダとして利用しており、学生時代に授業でレニ・リーフェンシュタールの『オリンピア』を見せられたことを思い出した。ペンは剣よりも強しというが、たぶんペンよりも強いのが動画・映画だ。変な言い方をすると、ペンが動かすのは上流の知識人階層だけだけど、動画はすべての人を動かす。貧乏でも、教養がなくても、モテなくても。どちらが強いかは明白だろう。

こんな時代だからこそ、私たちは動画が持つその恐ろしさについて自覚的でなければならないのでは、なんて考えたりもする。そんな真面目なトーンで今週はおしまいです。また再来週〜!

شكرا لك!