ウイスキー

【日記/98】大食漢への止められない憧れ

コンプレックスは数え切れないくらいあるけれど、私にとってそのうちの1つは、少食なことである。どれくらいコンプレックスかというと、好きな男性のタイプが「あんまり量を食べない人」だったりするくらいには、重く受け止めている(一緒にいる人がすごく美味しそうにいっぱい食べる人だと、なんか損してる気分になる)。

しかも、私の場合は少食な上、料理の味がほとんどわからないバカ舌と来ており、さらにいうと酒も一滴も飲めない。

おそらく、前世がものすごい大食漢で、蔵の米を食いつぶし酒を飲み尽くし家族親戚に大迷惑をかけた上で愛人とセックスしてるときに腹上死とかしたジジイだったのだろう。だからきっと、神の罰によって生れながらにして飲食の愉しみを剥奪されているのである。腹上死のジジイのせいで、今世の私はこんなにも慎ましやかな生活を送っている。

少食であることには、もちろんメリットもある。一つは食費がかからないことだ。外食は量が多すぎてお腹が苦しくなってしまい苦手なので、私はもっぱら自炊派なのだが、一度に食べる量が多くないので自ずと安く上がる。

あと、バカ舌にもメリットはあり、こちらはもちろん何でも美味しいと思えることだ。青山のちょっといい店で食べる鮨(寿司ではなく鮨と書かせていただく)もスーパーのパック寿司もまったく同じテンションで「美味しい〜もぐもぐ」と思っているのが私なので、これは逆にいうと、たった500円で高級鮨店の味を楽しめる特殊な才能に恵まれていると考えることもできる。さらに、誰かがコンビニで買ってきた新商品のお菓子などがイマイチはずれだった場合、私は何でも美味しく食べるので、残飯処理係として活躍することも可能だ。学生時代などは「もし不味かったらチェコちゃんが食べるからとりあえず買ってみよう」みたいな役に回されることが多く、仲間内に欠かせない存在としてみんなに愛されていた。もう、みんな私がいないとお菓子の1つも買えないんだから、参っちゃうよネ。

まあそれはいいとして、少食とバカ舌と酒が飲めないことへの恨みつらみを書いているとキリがないので、とっとと本題に入る。

数年前にオーラが見える云々で一斉を風靡した江◯啓之さんというスピリチュアルカウンセラーがいたが、江原さんが言ってたんだっけな、別の人かもしれないけれど、ああいう職業の人は、ふっくらとした体格の人が多いらしい。霊感の強い人はその場にいる他人の思念などを吸収してしまうので、太ってしまうというのだ(ほんとかよ)。

ま、この話は眉唾だとしても、体格って面白いなあというのは最近個人的に思うことである。

昨今は欧米などで細すぎるモデルを登用することが批判的な意見を集めたりしているが、確かに細けりゃいいってもんじゃない。根拠とか理屈があるわけではなくなんとなく思うだけだが、「その人に合った体格」というのがあって、太いとか細いとかではなく、自分に合った体格になることがいちばんベストなのではないかと思う。

スピリチュアル関係の人はふっくらとした体格の人が多いというのは眉唾だと思うけど、人の体に触れる仕事、マッサージとか整体とかもっというと風俗とか、そういう関係の仕事をしている人はある程度ふっくらしていたほうがいいんだろうなと思う。すごく単純な話で、触れる面積が多いほうが気持ちいいからだ。私の人生の中でもっとも最高だったマッサージ師はジャカルタの空港のやっすいチェーン店で働いていたおばちゃんだが、おばちゃんは体がふっくらしていて手が肉厚だった。おばちゃんのぽちゃぽちゃした分厚い手で背中をぐりぐりされると、どんな痛みも凝りも、頭痛でさえ消えていった。あのおばちゃんにまた会いたい。耳元で「チップ、チーップ、プリーズ」とどんなに囁かれても、払います払いますいくらでも払いますうううう〜と、まったく不快にならないくらいおばちゃんは神の手だった。私の運命の人だと思ったのにジャカルタのチェーン店だからもう二度と会えないかもしれない……。私がアラブの石油王かZOZOの社長だったらおばちゃんに私専属のマッサージ師として生涯契約を結んでもらうのに……。

それで、最初の話にもどるけれど、量を食べる人、美味しいものが好きな人というのは、やはり生きる上でのエネルギー値が高いなと見ていて思うことが多い。食欲が旺盛な人は性欲も旺盛というのは少々短絡的すぎる関連付けだが、上品に表現するとアウトプットが多いからこそインプットも多大な量を必要としているのだろう。

エネルギー値が高い人というのは、はたから見ていてとても魅力的な人物であることが多い。エネルギーは必ずしも正の方向に、明るい方向に走っているわけではなく、負の方向に、暗い方向に走っているケースもあるのだけど、私はとにかくそのエネルギーの「量」に惹かれる。エネルギーの「方向」に惹かれるらしい人もいて、量が多かろうと少なかろうと負のエネルギーは嫌よという人もいると思うのだけど、私は「方向」はどっちに走っていたっていい。エネルギー値の高い人を見て、そのほとばしるエネルギーの片鱗に触れると、素直に羨ましいなと思う。

だからエネルギー値の高い人に憧れて、最近はなるべくたくさんごはんを食べようかなと思ったりもするのだけど、いかんせん胃が弱いので、ちょっとでも限界量をこえると愛用している大正漢方胃腸薬に登場してもらわねばならなくなり、なかなか人生思うようにはいかないなあと苦悩する日々である。お酒も嗜めるようになりたくて、ブルックリンのキングス・カウンティ・ディスティラリーのオシャなウイスキーとかを自宅で飲んだりしているが、味の感想は一言「まっず!」である。ごはんとお菓子は何を食べても「美味しい〜もぐもぐ」だが、酒は何を飲んでもまずい。どうなってるんだ腹上死のジジイ、私の人生を返せ。

写真はそういった経緯で「本棚のオブジェ」と化したウイスキーだが、しょうがないのでバニラアイスにちびちびかけて消費している。ハーゲンダッツよりもスーパーカップのほうが好きなレペゼンバカ舌、今日もこうして鬱屈とした社会への恨みを募らせていくのであった。

(※でもキングス・カウンティー蒸留所にはいつか行ってみたいな、なんて思っちゃうよね




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