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三國志

僕はNHKで育った。
今でもよく覚えている。

「人形劇 三国志」は、
特に大好きだった。

1982年秋〜1984年春まで。

本放送を初回から1年半、
欠かさず見たと思う。

劉備、関羽、張飛の義兄弟、
そこに趙雲や諸葛亮、
それぞれの個性が輝き、響き合って、
幾多の試練を乗り越えていく。

最終回「孔明五丈原に死す」に至る、
出師の表、泣いて馬謖を斬る、
死せる孔明生ける仲達を走らす、
と怒涛のクライマックスは、
孔明を演じた森本レオの声が忘れられない。

あの優秀な才能が集まってくる、
劉備の人徳に心奪われた。
それでもまだ自分は少年時代。
理解できないことは多かった。

吉川英治文庫の「三国志」が、
全8巻、父親の書棚に並んでいた。
すぐに読み始めた。
人形劇を観ていたから、
読み進めるのは難しくない。

人形劇にない、もしくは覚えていない、
登場人物や場面がたくさんあった。
それでも8巻まで一気に読むことができて、
嬉しかったのを覚えている。

わからないところがあって当たり前。
また大人になってから読めばいい。
頭より心で読んでいた気がする。

吉川英治文庫を続けて読むか迷った。
事前に知識がないと、どれも難しそうだった。

なぜかだったかは思い出せないが、
「宮本武蔵」を手に取った。
これも全8巻、吉川英治の初期代表作だった。

波騒(なみざい)は世の常である。
波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は躍る。
けれど、誰か知ろう、百尺下の水の心を。水のふかさを。

現代にも通じる名文で、幕は閉じられる。

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