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長門市令和5年度当初予算に対する修正案の内容

 令和5年度当初予算の中に「入学エール給付金事業」という事業がありました。これは子育て世帯の経済的負担軽減を目的とするもので、子育ての節目である小中学校入学時に小学校入学5万円、中学校入学10万円を給付するもので、事業費総額3,300万円の規模で実施されます。
 私はこの事業に反対する修正案を提出する動議を行いました。以下は修正案提出時の提案理由の説明です。反対理由としては大きく「子育て支援(国の子ども子育て支援法の定義では18歳の誕生日を迎えてから次の3月31日までが「子ども」)といいながら最も経済的負担の大きくなる高校入学が検討されなかった」「誕生日が1日違うだけで支給されるされないの差が大きすぎて心理的な分断を市民に生む」「多額の現金給付が子育て以外に使用される可能性があり単なるバラマキでしかない」「対象を絞った単純なお金配りではなく、子育て中の世帯にとって幅広く恩恵を受ける事業を行うべき」を挙げています。地元新聞の記事は短いので誤解を生むかも知れませんね。

・・・・・・ここから予算委員会での提案説明です・・・・・・・

 議案第8 号「令和5 年度長門市一般会計予算」に対する修正案の提出について提案説明を行います。
私は2月28日の本会議おきまして、第3款民生費2項児童福祉費1目児童福祉総務費「入学エール給付金事業」3千3百10万7千円について質疑を行っておりますが、今回の修正案はこの入学エール給付金事業3千3百10万7千円の削除を求めるものです。
 
 それではその理由について説明させていただきます。市長は、令和5年度施政方針において、当初予算の編成に当たっては、市民や関係団体等と一丸となった「フォア・ザ・ながと」で、「人口減少に立ち向かい、新たなステージへ導く」予算と位置付け、任期最後の集大成として取り組んだと述べられています。ここで、令和元年11月27日に市役所幹部職員を前にして行った訓示を一部御紹介します。市長は訓示で「市政運営のために、職員自ら当事者意識を持って実践し、私と一緒に市民の皆さんに本当に信頼される日本一のたたかう市役所をつくっていきましょう」と述べておられます。しかしながら「ポストコロナ時代を見据えつつ、人口減少に立ち向かう」本市のかじ取り役を担うべき市長からは、子育て世帯に寄り添う気持ちやその支援に取組む熱意やガッツ、まさに訓示で述べておられた「たたかう」気持ちを感じることができません。なぜならば、昨年のハローベイビー給付金事業修正案が可決された後に、それに代わる子育て世帯への経済支援策が示されなかったことがその象徴であり、もし市長に人口減少や少子化問題が最重要で喫緊の課題であるとの認識と理解、そして「たたかう」気持ちが本当におありなら、又は熱意やガッツがおありならば、議会が何と言おうと、何を置いてもまず、多子出産或いは多子世帯への支援策が、矢継ぎ早に示されたはずであり、少なからず期待もしておりましたが、残念ながら市長からは、議会が理解しなかったと、言い訳とも愚痴とも取れる言葉が出るだけでありました。
 
 さて、「令和5年度当初予算(案)の概要」では、子育て世代に選ばれるまちづくりにおける主な取組として、すくすく赤ちゃん応援券支給事業、小中学校修学旅行費補助事業、そして入学エール給付金事業が示されております。すくすく赤ちゃん応援券支給事業につきましては子どもの誕生を祝い、市内指定取扱店でおむつ等の購入ができる応援券の支給を行い、小中学校修学旅行費補助事業につきましては小中学校の修学旅行参加の実績に対して費用の一部を現金で補助するものであり、どちらの事業におきましても具体的な子育ての場面に活用が限定されたものであります。しかし入学エール給付金事業につきましては、事業名に「入学」と付けられているものの具体的な子育ての場面の支出を対象としたものではなく、その上、現金給付という方法は教育費だけに活用されるものではなく生活費や貯蓄、更には遊興費にも使えるということであり子育て家庭の経済的負担の軽減策として本当に正しいのかという疑問が残ります。また、子育て家庭を対象としながら、高等学校入学を対象としなかった理由についても疑義があります。2月28日の本会議での私の質疑に対して市長は、「「市長と協働のまちづくりミーティング」においても、小学校入学後の負担感を感じるといった意見をいただいたところであります」と答弁しておられ、この事がまずは小学校入学を対象にした理由として述べられたのだろうと解釈いたしますが、そのミーティングの参加者の発言の意図は、単純に経済的な負担を述べられたのではなく、保育園から小学校に上がるときに保育の時間が短くなることにより仕事との両立が困難になる、いわゆる「小1の壁」について問題提起されたのではなかったのでしょうか。「小1の壁」、これは5万円もらって解消する問題でしょうか。この「小1の壁」のようなものが子育ての節目ですが、市長は施政方針で、誰もが「子育てしながら働けるまち」の実現に取組むと述べられております。この件について岩藤睦子議員が2月28日の本会議で、「誰もが「子育てしながら働けるまち」の実現に該当する令和5年度の新規事業は何か」との質疑を行い、市長は具体的な事業についてはお答えになりませんでした。あるいは答えることができませんでした。なぜか、そもそも市長は「小1の壁」に象徴される、子育てしながら働くことが困難である理由について理解していらっしゃらなかったからではないでしょうか。これが高校入学を対象にしなかったと説明された理由の一つであります。
更に、文部科学省の調査結果をお示しになり、令和3年度の子どもの学習費調査では、公立の小学校、中学校、高等学校のうち最も学習費の支出が多いのは中学校だったことから、この度は義務教育である小中学校に入学した児童生徒を対象にしたと答弁されておりましたが、予算決算委員会総務民生分科会の林哲也委員の質疑で示されたようにその調査結果では中学校の年間の学習費が約53万8千円、高等学校約51万2千円でありその差はおよそ2万5千円ほどであります。確かにこの数字だけを見ると中学校の年間に係る学習費の金額の方が多いと見る事もできますが、その区分を見ると、中学校の学習費の中には学校給食費が約3万7千円含まれており、高等学校の学習費には持参する弁当の食材費は含まれていません。では条件を公平にするために学校給食費を外して比較すると逆転して高等学校の学習費の方が多くなります。また、この調査からは、高等学校に在学する子どもに対して出勤前に保護者が朝早く起きて弁当を用意して子どもに持たせてやる負担があるだろう事を推察する事ができますが、中学校の生徒の保護者には学校給食があるおかげでこの負担はありません。まさに「子育てしながら働けるまち」を実現しなければならない理由がここにあり、子育て支援は金額だけを見るのではなく現場に寄り添った当事者意識が必要だと認識する必要があります。この事業のおかげで、新しい気付きを得られたことに感謝申し上げます。さて、この文科省の調査結果と、先ほどの「市長と協働のまちづくりミーティング」の意見を根拠に高等学校を除外して義務教育だけを対象とした理由とするのは無理があります。そもそも政策決定は個別の意見を根拠とするのではなく、アンケート等の調査や実証実験のような全体的・客観的なデータに基づいて行われるべきだと考えますが、声の大きい人の意見が採用される、又は言ったもん勝ちにならないように議会も公平中立、総合的・俯瞰的な視点を持って審査を行われなければならないと反省しているところです。
 
さて、令和4年度のハローベイビー給付金事業の対象が100人あまり、今回の対象人数は400人ほどに増えております。もらえる人が多いのですから、委員のみなさんの周りに「もらえたらありがたい」という声が多いのは当然であります。お金をもらえる事を嫌がる人の方が少ないのではないでしょうか。しかし私の周りの幼保小中高の子育て世代からは「お金がもらえるのはありがたい」という声があると同時に、「本質はそこではない、現場を理解してほしい、もっと他に使いみちがあるだろう」との苦言も聞こえてきます。
 この事業の問題として、まずは金額設定、私はこの事業について高等学校を対象としないのはおかしいと申し上げているわけですが、この5万10万という金額設定は高等学校まで対象とした時にどうなっていたか。高等学校まで対象としたときに総額3千3百万円を超える規模の予算を組んだかどうか。ならばこの5万10万という金額設定が妥当なのかという疑問があります。そして金額もさることながら、もらえる人、もらえない人が差別される不公平性であります。同じ年に生まれた4月2日生まれは対象になり4月1日生まれは学年が違うので対象にならない、同じ子育て世代、同じ生活環境にあって誕生日が1日違うだけで5万円、又は10万円がもらえる人と、もらえない人の分断を生むような事業に、これが4年間の集大成かと大いに違和感を覚えます。
 
 本市は児童手当や、中学校卒業までの全児童生徒に加え高校卒業までの所得制限付き医療費の無料化に取組むと同時に現在、様々な年代を対象とした子育て支援事業も展開されておりますが「子育てしながら働けるまち」の実現は道半ば、少子化対策の費用対効果の高い施策の更なる検討が必要です。

瞬間的な「ばら撒き」ではサステナブルな子育て世帯への経済支援、少子化対策にはなりません。以上で提案理由の説明を終わります。

・・・・・予算委員会での提案説明以上・・・・・

 長文にお付き合いいただきありがとうございました。
国の子育て支援策の様子も見ながら、勇み足にならないような施策を行うべきだと思います。今回は、根回し無し、議会の客観的な判断に採決を委ねましたが、「いつもの反対討論」の仲間に見られたフシがあります。また、身近に給付を受ける支援者がいると余程大きな反対の支持者がいない限りこの議案には反対しにくいだろうと予想はしていました。

 私の頭の半分ぐらいを占めるPTAでもそうですが、道理や理屈ではなく物事を決める時に感情に流される事が多いです。議会は特に、将来展望を持って冷静に客観的に、そして総合的に判断したいものです。

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