既存企業をDisrupt-マットレスとD2Cの相性について:D2C Brands.com vol.01

D2C Brands.comはD2C市場について考察をテーマに運営している。
①note:D2Cに関連するトピックスを取り上げ、考察を記載する。
②Twitter:他メディア(主に海外)のシェア
※Twitterではnoteの更新通知も行っていく。

1.米国Mattress Firmの破産
先日、米国マットレス最大手のMattress Firm(全米3,272店舗)が破産法申請していることが報道された。
その大きな要因としてD2Cスタートアップの台頭が理由だと様々なメディアで書かれている。
こちらは実際に米国でマットレスをD2Cで展開するCasperのCEOがどのように既存業界をDisruptしたのかインタビューされている記事になる。

Mattress Firmはオンライン化が進んでいることを認識することができず、2015年にSLEEPY'Sの買収をするなど店舗拡大を実施してきたことが破産の大きな要因だと考えられている。

一方で、Casperを始めとするD2Cは革新的な製品に加えて、優れた体験を提供することで差別性を図ってきたと言及されている。
例えば、既存の小売では数分の体験でマットレスという高価格な製品の購買決定を求められていたことに対して、D2Cでは100日間の試用期間を用意するなどして顧客の購買決定により寄り添った体験を提供している。

2.D2Cとマットレスについて
なぜCasperを始めとするD2Cスタートアップは既存業界をDisruptできたのだろうか?
本noteではマットレスとD2Cの特性からその理由についてもう少し具体的に考察する。
今回の報道を受けて改めてマットレスビジネスについて考えてみたが、一見すると店舗を活用しないと難しい業界に思えるが、非常にオンラインと相性が良いことが分かってきた。
以下は運営者が考えるD2Cとマットレスの相性が良い点である。

①サイズが明確
②高単価かつ低原価であること
③短時間では製品の良し悪しが判断できない製品性
④少ないアイテム数
⑤回転率の悪さ

ここからは各特性ごとに説明していく。

①サイズが明確
マットレスには基本的に規定のサイズがあり、サイズミスが発生するリスクが著しく低いことが挙げられる。
ECをチャネルとするD2Cではサイズが分からないということが購買決定を阻害することがある。
しかし、マットレスはシングル・セミダブル・ダブルと明確にサイズが規定されており、大きく間違えることがないため非常にECと相性が良いのである。
これはインテリア等でも言えることだが、仮にサイズを計測するときもアパレルなどと比較すると縦・横・高さがメインなので非常に簡単なことが特徴として挙げられる。

②高単価かつ低原価であること
Casperは高品質かつ低価格であると言われているが、それでも価格は約500ドル〜1000ドル程度とD2Cで多いアパレルやコスメと比較すると単価が高いことが特徴である。
既存業界の高級ブランドマットレスであれば数十万以上するものも珍しくない。日本で有名なエアウィーヴやシモンズも10万円〜が相場である。
しかし、店舗や人件費のことを考えると原価率はそれほど大きくないのではないかと思われる。
あくまで予測であるが20%前後程度ではないかと考える。

これから何が言いたいかというと、粗利率・粗利額が共に高く費用が捻出しやすいため、ブランディングやコミュニケーションに投資がしやすいということだ。というのも既存の業界では恐らく店舗や人件費が販管費内の占有比において高いのではないだろうかと推測できるが、D2Cの場合はここがカットすることが可能である。
また、D2Cでしばしば懸念点として挙げられる配送料も価格に対する占有費は小さくなりやすい傾向があるため、企業側が負担しやすい構造になる。
D2Cはブランディングやコミュニケーションなどにより投資をすることが可能なのである。

③短時間では製品の良し悪しが判断できない製品性
一見するとマットレスは店舗で選ばないと買いづらいイメージがあるのではないかと思う。
しかし、想像してみて欲しい。実際は数分横になって商品説明を受けても購買決定ができるほどの情報は入ってこないのである。
マットレスの良し悪しは良質な睡眠を取れるかどうかである。
なので、「実際に数日寝てみないと分からない」のである。
一方でCasperは100日間の使用体験や45分の睡眠体験など実際に睡眠することを大切にしている。

Casperはオンラインでスタートしているが、現在は実店舗も積極的に出しており、直近で200店舗まで拡大することを発表している。
これはあくまで売るための店舗ではなく、顧客が良質な購買決定をするための体験を提供する場だと考えられる。
売るための店舗ではどうしても売上がつきまとっていたが、CasperなどのD2Cの店舗はあくまで売上ではなく顧客に体験を提供するため、満足度が高まりやすいのである。

④少ないアイテム数
他業種と比較するとアイテム数も少ないことがマットレスの特徴である。
①とも通ずるものがあるが、サイズもパターンが決まっており、更に色も基本的にはシーツをかけるため、購買決定に影響は大きくないだろう。
国内のマットレスメーカーのアイテム数を見ても10種類以下のケースも少なくない。
オンラインの欠点になりがちなサイズや色について検討する必要が少なく、更に③のように店舗に行っても判断が難しい商材なためCasperのような100日間の使用体験等は当たり前のようで顧客のインサイトをうまくくすぐる施策だったのではないだろうか。

⑤回転率の悪さ
最後に回転率の悪さについてだが、店舗ビジネスにおいて回転率を高めることは非常に重要な要素になる。
しかし、マットレスという購買回数が少ない製品柄、店舗で回転率を向上させることは至難の技だろう。
回転率が悪いにも関わらず、店舗運営をすると場所代と人件費が大きく必要になる。
そうすると店舗での売上へのプレッシャーによる顧客満足度の低下やブランディング、顧客とのコミュニケーションといった重要施策に投資を行う費用が捻出できなくなってしまう。
しかし、D2Cではこの場所代と人件費がかからないため、本来重要な顧客の満足度やブランディング、コミュニケーションに投資を行うことができるのである。

以上、5つのマットレスとD2Cの相性について述べてきたが、あくまでこれらは一部でまだまだ奥が深いと考えている。
特にCasperの強みは単純に製品が良いだけでなく、データドリブンな戦略も大きいと思う。
またの機会にそういったところも分析し、考察できればと考えている。
日本ではまだマットレスに焦点を当てた、D2Cは運営者の知る限りないのではないかと思う。
上記の特性は米国に限らず、日本でも当てはまることが多く今後チャレンジされるスタートアップの参考になれば幸いだ

ご指摘やアドバイス等も頂戴できると嬉しいと考えております。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。

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