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視覚障害者の読書体験を広げる「アクセシブルライブラリー」

メディアドゥが提供する「アクセシブルライブラリー」は、視覚障害者が電子書籍を音声として利用できるようにした電子図書館サービスだ。電子書籍やデジタルならではの可能性を障害者サポートで発揮した好例として注目されている。

視覚障害者専用の電子図書館&自動読み上げサービス

以前、「ユアアイズ」という視覚障害者を含む読書困難者向けの読書支援スマホアプリを紹介したが、今回のアクセシブルライブラリーも視覚障害者の読書体験を支援するサービスだ。こちらが対象にするのは電子書籍で、ひと言で表すなら「視覚障害者専用の電子図書館&自動読み上げサービス」となる。

メディアドゥが、読者、出版者、自治体の間に立って、電子図書館サイトを管理・運営する形となる。

アクセシブルライブラリーの全体像
出所:メディアドゥ

サービスの核となるのは、音声合成技術を使った自動読み上げと視覚障害者に使いやすいユーザーインターフェースだ。自動読み上げは、言うまでもなく書籍の内容がテキストデータとして存在するからこそ可能なことで、電子書籍が持つ大きな利点でもある。デジタルらしく、再生スピードを変えたり、声質を男性風や女性風に変えたりもできる。

誰でも利用できるシンプルさ

その他の機能としては、本を探すための検索、新着書籍リスト、最近の閲覧履歴が10件表示されるマイリストがあるくらいで、電子書籍サービスとしては標準的なものだ。非常にシンプルだが、それゆえに誰にとっても使いやすくなっている。

視覚障害者の中にも、このようなサービスを使うことが得意な人と苦手な人がいるはずで、サービスの目的を考えると最もハードルを低くするというのは大事なことだ。

ウェブアプリケーションなので、スマホでもパソコンでもウェブブラウザーがあれば利用できる点も利用のしやすさにつながっている。当然のようにウェブアクセシビリティにも取り組んでおり、高齢者や障害者への配慮設計指針である日本産業規格(JIS規格)の「JIS X 8341-3」への準拠を念頭に開発されている。

全国9つの自治体・図書館が導入

アクセシブルライブラリーは、原則として自治体(市区町村)を通して提供される。メディアドゥによると、2023年3月時点では以下の図書館で導入されているという。

  • 宇治市図書館(京都府宇治市)

  • 加賀市立図書館(石川県加賀市)

  • 三条市立図書館(新潟県三条市)

  • 江戸川区立図書館(東京都江戸川区)

  • 熊取町立図書館(大阪府泉南郡熊取町)

  • 柏原市立図書館(大阪府柏原市)

  • 八女市立図書館(福岡県八女市)

  • 知立市図書館(愛知県知立市)

  • 前橋市立図書館(群馬県前橋市)

仲介役としてメディアドゥが果たす役割

アクセシブルライブラリーは、一般的な電子書籍サービス/アプリと比較して、決して特別な機能を備えているわけではない。むしろ最小限の機能しか備えていない。しかし、この手の取り組みで最も重要なことは、書籍の権利者である著者や出版者に呼びかけ賛同と許諾を得て、対象となる書籍のタイトル数を増やすことだ。

視覚障害者が読みたいものを追加して、アクセスできる本とできない本の差をできるだけ縮めることが、アクセシブルライブラリーの使命である。

その意味でも、電子書籍の取次や電子図書館の運営を事業とするメディアドゥが取り組むにふさわしい、社会的にも大いに意義のある読書のバリアフリー化サービスだと言える。

実際、アクセシブルライブラリーは業界では高く評価されており、デジタル庁による「good digital award」では2022年度グランプリを、日本電子出版協会(JEPA)による「電子出版アワード2022」では大賞とエクセレント・サービス賞を受賞している。

電子出版アワード2022の授賞イベントでは、メディアドゥ取締役副社長の新名新氏が、受賞にあたって次のようにコメントした。

できるだけ広く日本の自治体に採用してもらって、少しでも視覚障害者の皆さんの読書環境の改善の前進を実現できればと思っている。
理想を言えばもっとやりたいことはたくさんあるし、まだまだだが、一歩でも前進して、一作でも多くコンテンツを入れて、障害者の皆さんが少しでも良い読書環境を得られるよう目指していきたい。

電子出版アワード2022 大賞受賞挨拶

今後、アクセシブルライブラリーに多くの出版者が参加し、導入自治体が増えていくことを期待したい。


文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。

トップ画像:「アクセシブルライブラリー」ウェブサイト

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