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この前,ついこの前の話なんだけど,昨年度で介護教員を退職して施設に戻った「元先生」から連絡があった.

この前,ついこの前の話なんだけど,昨年度で介護教員を退職して施設に戻った「元先生」から連絡があった.

彼の学校も学生数が減り続けて,あと何年学科が続くかわからない状況になっているそうだ.今はほとんどの学校がそうなっているはず.

「生活を考えると教員にこだわってはいられなかった」と彼は言った.

よくわかる.
いや,痛いほどにわかる.

彼は(僕ももちろん),介護教員を辞めたいなんて微塵も思っていなかった.
彼も(僕ももちろん)なんとか学生を集めるために必死で動いて,考えた.
「学生数」という結果が少しばかりついてきても,問題はその中身だ.

高校は「君は優しいから介護に行けばいい」の決め台詞で「弱い」学生を介護の養成校に送る場合も少なくない.その学生は「何をしたい?」「どこに行きたい?」と聞いてすらもらえなかったと言っていた.

介護教員は間近で介護業界の危機と近未来日本の危機を目の当たりにしている.

もちろん社会にそれを訴える役割も……担うべきなのは理解している.

それでも,自分たちの生活を考えて教員を辞める選択をせざるを得ない.

次代の流れに乗った,と言えば聞こえはいいかもしれない.
でも結局僕らは時代に負けたのかもしれない.

介護教育は形を変えてでも,超高齢化していく社会,障害のある人の住みやすい社会を作っていかなければならない.

介護教員は(おそらく介護業界でも一番)潰しがきかない職業だと思う.

以前はっきり言われたことがある.

「先生たちが考えるロジックは理想論,それはそれで素晴らしいけれど,今の現場はそれを体現できる状況にないんです.とにかく学生さんを就職させててくれればなんだっていい」

……

養成校の学生が減って,教員の職場がなくなって,教員が持つスキルも行き場をなくす.

この状況が生む未来がどんなものになるか想像するのは簡単だろうと思う.
誰もが望んでいない未来を自分たちの手でつくってしまっている皮肉さ.

彼も僕も,教員として生きていくことが難しいことを十分に理解していたから,学校から離れざるを得なかった.
それでも,まだ見えない打開策をつくることを諦めてはいけないことを理解している.

これから「教員を辞めざるを得ない介護教員」は増えるだろう.

教員個人の生活の危機はもちろん,社会にとっても大きな問題になることは間違いない.

学生が減り,学校が消え,仕事もモチベーションも失った介護教員にスポットライトが当たることはほとんどない.
それでも,暗さの中でも爪を研ぐことを忘れないようにすることが,今自分たちにできること.

#コラム #エッセイ #介護 #教育 #介護福祉士

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