U-30ドリームトーナメント 津風呂湖編 2日目編ライブソナーの是非

敗戦処理


負け方

初日のウェイトを見て、自分が如何に下手くそかを突きつけられると精神的に凹む。
プラの段階から厳しい戦いになるとは思っていたのだが、やはり2日目のモチベーションを保つのはキツかった。

ライブスコープを使いこなす魔法使い達には一切追い付けず、自分が見つけていた釣りではキーパーを揃えられるか否かという低次元だった。
唯一の希望は初日のビッグフィッシュを獲った選手が魚探なしで釣っていたという事くらい。

勿論あんなサイズの魚が簡単に釣れるとは思っていないし、そもそもリザーバー経験値の低い自分が釣れるとは思っていない。
ただそれくらいしか自分にはすがるものが無かったのだ。
確かに頑張ればキーパーを3本揃える事も出来るだろうが、それで年間順位を数個上げた所でこの試合では意味がない。

勝てるとは思えるほど経験が無いわけじゃないが
それでも試合に出てる限り、可能性はゼロだと諦めるほど落ちちゃいない。

負けるにしても足掻いてから負けたかった。

自分の一番得意な釣りで勝負。
もはや勝負にすらなってないのは分かっていたが。

2日目のフライトも50番代。
ただあまり焦りは無かった。

どうせバンクには私しかいない。

魔法使い達は沖で空中戦をしている。

地に足付けて、出来ることを黙々とするだけ。


初めに入ったエリアでは不発。

移動しようかと思ってエレキのダイアルに手をかけた瞬間に近くから叫び声が聞こえた。

誰かが釣ったらしい。

行こうと思っていたエリアで魚を抜かれた。
勝てない時はいつもこうだな…とそのエリアに向かうと、そこにいたのは初日ビッグフィッシュを獲った選手だった。

彼が移動してからバンクにドライブビーバーのフリーリグを投げる。
いつものタックルにいつものリグ。
慣れ親しんだ感覚、ボトムとの会話を楽しむ。
ハードボトムに枝が絡み、それを抜けると石の大きさが変わり、そこからフッと深海に、真っ暗な宇宙にルアーが落ちていく。



そして不意に跳ねるライン。
自分でも驚くほどスムーズに、ラインを巻き上げロッドを跳ね上げさせる。




小さい…が…キーパーはある!



ある程度慣れてきたエア抜きをしてライブウェルへ。

魚が落ち着くのを確認して、こちらも深呼吸をする。

なんて事無い、折り重なったような石のバンク。


その後も近くのカバーを撃つもノンキーパー。
結果としてこれが津風呂湖で最後に釣ったバスになってしまった。

ある程度水深と地形はプラの時点で分かっていたので、似たような場所を流していく。

そしてその先にはことごとく魚探のついてない、ビッグフィッシュの彼がいた。

もしも、もしも津風呂湖だから、リザーバーだから、ワカサギレイクだからと思わず、普段通りの自分の釣りをしていたらウェイトは変わっただろうか?

今となっては分からない。

練習で8日間、試合で2日間。
会社に無理を言って休みを取り、貯金を切り崩し費用を捻出した半年間。

何者にも成れないまま、私のドリームトーナメントは終わった。

新利根川戦3位、津風呂湖戦46位。
総合19位でドリームトーナメントを終えた。


魔法使いの条件

ライブソナー。
今更説明する必要はないと思う、近代バスフィッシングトーナメント、特にある程度水深があるフィールドではこれら無しで戦うのは本当に無謀だと言うことが良くわかった。
マディシャローのフィールドですら、橋脚などのポイントでは既に使いこなしている選手も多い。

ルールで許されてる以上、使わない方が悪い、買えないのなら努力が足りない。
これは正論であるし、トーナメントに出ている限り私もそう思う。
使っている選手やメーカーを悪く言うつもりは一切なく、ただ買わない自分が悪いだけである。

ただハッキリと言うが、私はこれらが大嫌いである。

バスフィッシング、というか魚釣りは「想像の遊び」であると思う。

使いこなすことに技術がいる、持っているから釣れるわけではない。
勿論分かってはいる、いるのだが極端な話水中を覗くことが出来る機械で魚を釣ることにどうしても違和感がある。
それはあまりにも「想像」の部分を狭めてしまっているように感じる。

もちろん魚探全般が水中を覗こうと開発された物ではあるし、GPSやサイドイメージ、360度、と時代が進むにつれて技術は進歩し、それぞれの時代で「こんな機械で〜」という議論はあったと思う。
なのでライブソナーだけを言うのは違うんじゃないか?という意見も分かる。

ただ、ケビンバンダムが引退したのもライブソナーで沖の釣りで勝てなくなったから(年齢もあるとは思うが…)、TOP50の三原選手が引退したのもライブソナーの存在があったから。

これは事実としてあると思う。

今までの物は魚群探知機の延長線上にある機械だったが、ライブソナーはどちらかと言えば全く新しい、水中カメラの方が近いと感じる。

またトーナメント人気が落ちてきている事もライブソナーが関係していると思う。

過去の魚群探知機はあれば便利、なくても何とかなるというレベルの物だったが、ライブソナーは無くては話にならない、あって初めてスタートラインというレベルの物になってしまった。

しかもそれが高価である点、見ている側は画面が見れない限り何をしているのか分からない点。

ハッキリ言って持ってない人から見ても何の参考にもならないトーナメントを楽しめるか?というのはかなり難しいと思う。
(ただ、これは伝える側のアップデートによって大分面白く出来る可能性は大いにある。今大会で黒田さんと川村さんの解説で一人の視聴者として「面白いな」と純粋に感じたし、これで魚探の画面も見れるのならばそれはサイトフィッシングと同じになるのでは?とも思う。)

ある程度普及して、ボートユーザーが全員持てるぐらいならばまだ自分の中でも納得できるのだが、現状では思うところがあるのが正直なところである。


人間を辞めるかという選択

ライブソナーを迷っている。

金額的な事を考えればかなりキツイが買えなくはない。
ただ買いたいかと聞かれると答えに困る。

元々マディシャローのタイダルリバーである長門川でバスフィッシングを覚え、利根川や霞ヶ浦を主戦場と考え続けてきた。
TBCに参戦する為にバスボートを購入して利根川を練習していたが、コロナウイルスによるパンデミックで数年間中止となり、再開されたがルール変更により、自分は出たいと思えるような大会ではなくなってしまった。

それならと霞ヶ浦に拠点を移し、大会に出ようとバスボートを買い替えて準備していた所にこのU-30ドリームトーナメントの話が来た。
初戦は得意なタイプのフィールドという事もあり3位に入賞出来た。

そしてこの津風呂湖での惨敗である。
元々リザーバーの試合に出ることはほとんどなく、ライブソナーも正直そこまで意識した事は無かった。

ただハッキリと今回分かった。
「ないと勝てない、それどころか私の技術ではスタートラインにすら立てない。」
今回の出場選手のライブソナー搭載率は8割くらいだろうか?

前述したが、僕はライブソナーが嫌いである。
というか魚群探知機全般が嫌いである。

水中がどうなっているのか、ルアーはどうやって動いているのか、そもそもバスがそこにいるのか

それらを想像して試行錯誤するのがバスフィッシング、魚釣りの楽しさの本質であると私は思う。

そしてそんな不確定要素、イレギュラーだらけだからこそ大ドンデン返しもあるし、ジャイアントキリングもあるのがバスフィッシングトーナメントの魅力の一つでもあると思う。

しかしライブソナーはそれらの曖昧さ、悪く言えば楽しみを大きく減らしてしまったと思う。
純粋に上手い人が勝つ。
それはスポーツとして正しいと思う。
ただそれなら他のスポーツと変わらないじゃないかと。

それは私の好きなバスフィッシングトーナメントではない。

どんな素人でもトッププロに勝てることがある。
それがバスフィッシングトーナメントの最大の楽しさだと私は思う。

そんな中でライブソナーを導入するか否か。

春先に買ったバスボートで一度も釣りに行っていない。
今回の津風呂湖戦のために苦手なリザーバーの釣りを練習する為だ。
努力がすべて報われるなんて甘い考えを持って訳では無いが、分かっていても練習はキツかった。

もし、私がプロだったら、どこかしらからスポンサーを受けているのであれば迷わずライブソナーを導入するだろう。
持ってないことを売りにしているわけではないのであれば最大限バスを釣るための努力をするべきだし、それがプロとして正しい姿勢だろう。

ただあくまで私は一般リーマンサンデーアングラーである。
バス釣りでお金を貰おう、生活していこうとは一切考えていない。

また私があと数年若かったら導入するだろう。
今回のU30ドリームトーナメントは一人の選手としてとても燃えていた。
これに勝つ為だったら金銭的な負担も努力も苦にならないだろうと思えるような大会だった。
本気で勝ちたいと思える試合だった。
もしこの試合にあと数回出れるのであれば同じ土俵でコイツらと戦いたい。
それが心からの思いだった。

ただ残念ながら私は30歳になる。
もう何度もは出ることが出来ない。


社会的には若造だが、スポーツを本気で戦うには遅い。
特に選手生命が長いと言われていたバスフィッシングトーナメントにおいてライブソナーは一気にその寿命を縮めた。
それは近年のTOP50の上位陣の顔ぶれを見れば分かるだろう。
勿論、純粋に今の若手プロが競技者として上手いというのは大いにあるが、ライブソナーの影響がないとは言い切れないと思う。
(一応1月生まれなのでもう1年は出ることが出来るが…)

嫌いな機械を大金を使って購入し、苦手なタイプのフィールドに通って練習して、目標となる大会はない。
正直言ってモチベーションは上がらない。

人間としてのキャパシティは人それぞれだが、仕事や今後必要になってくる親の介護などを考えた時に、それらとバスフィッシングを両立しつつ、マディシャローの技術を維持しながらライブソナーの練習を続けるのは残念ながら自分には無理だろう。

周りの人間と比べても仕方が無いのだが、釣りをしない同世代の友人達は結婚をして、子育てをして、家を買ったりしている、また仕事に情熱を燃やし、懸命に目標に向かっている友人もいる。
また今回参加してくれた多くの若いバスアングラーも夢や目標に向かって一心不乱にバスフィッシングの腕を磨いている。

そんな中で、どっち付かず中途半端な自分はどうしたいのか分からず一瞬立ち止まってしまった。

バスフィッシングを辞める。
という事はないが
自分の年齢、金銭的な部分、会社での立場、近代トーナメントの在り方、若いアングラーの情熱、そして今の日本でのバスフィッシングの立ち位置。

他にも色んな事を考えた時にどこまで自分がバスフィッシングトーナメントに出続けるかを考えてしまった。

ライブソナーを導入して、本気で今の若い世代とトーナメントで殴り合いをするのか。

自分の得意なタイプの釣りだけを続け、それを磨きトーナメントに出続けるのか。

いっそのことトーナメント、バスフィッシングと少し距離を取り生きていくのか。

大会が終わってから数日
思考の宇宙を彷徨い続ける私は
未だにその答えを出せないでいる。

ライブソナーを使いこなす若手を見つめる私。

終わり。

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