見出し画像

美容院のサブスクリプションモデル。美容院が抱える集客のデジタル化、平日・祝休日の稼働率、人材確保・育成の課題をアップデート。

本日は美容院に行ってきました。髪型は短すぎても長すぎても似合わないため月に1度行っていますが、本来2週間に1度行きたいと常日頃から思っていました。また、できれば眉カットなど、マイクロニーズもあり、サブスクリプションモデルの方が消費者として有難いと考えていましたので、店舗マネージャーに疑問をぶつけてきました。

会話の中で浮き彫りになった美容院業界の課題も理解でき、個人的に美容院経営のアップデートを考えてみました(BtoBサブスクリプションを運営する立場から書いてみますが、美容院経営は全く素人です)。

美容院経営の3つの課題

本日会話の中から浮き彫りになった美容院経営の課題は以下のように考えました。課題解決のアプローチがフランチャイズチェーンではなく、個人店舗の場合、なかなかソリューションが考えられない現実も本日認識いたしました。

従来までの経営課題は、客単価を増加する施策が一般的でした。一般的に6000円〜7000円の客単価を、指名獲得、トリートメント、マッサージを提案し、ブランド化することで客単価を上げる経営戦略が取られます。各店舗としては上記戦略は重要ですが、マクロ的に見て以下の3つをピックアップいたしました。

■美容院経営の3つの課題
 ① 集客のデジタル化
 ② 平日・祝休日の稼働率
 ③ 人材確保・育成

1つ1つ簡単に解説して行きたいと思います。

① 集客のデジタル化

集客手段のデジタルシフトです。美容室への来店経路としては、デジタル広告、DM(チラシ)、看板、会員があります。これらの来店経路のうち、一気にデジタルシフトが進んでいます。

そして集客に苦戦する美容室は、外部ポータルサイト(美容室検索サイト)であるホットペッパービューティー、楽天ビューティーなどに出稿し、集客機能を外部に依存するモデルが一般的です。自社でウェブサイト、オウンドメディア運用、リスティング運用を行う人員は通常の個人店舗の場合ありませんので、外部ポータルサイトに集客を依存することは合理的でもあります。

従来までは近隣住人にDM(チラシ)、看板で集客できていた集客方法がデジタル化し、外部ポータルサイトに依存することで利益率を下げる要因になっています。

ここで重要なのは、新規獲得顧客の囲い込み戦略です。新規獲得は外部サイトに依存しつつも、そこで獲得した顧客の継続化の戦略です。これこそがサブスクリプションモデルがしてきたビジネスモデルが参考になると考えました。

② 平日・祝休日の稼働率

次いで深刻な経営課題だと感じたのが、稼働率のバラツキです。美容室は圧倒的に土曜日が忙しく、日曜日、月曜日の順に忙しさが平準化し、火曜日はガラガラになります。祝休日は予約がいっぱいで顧客の予約を断っているようなお店でも平日はガラガラで利益率が悪くなっている店舗が通常とのことです。

本日店舗マネージャーにサブスクリプションモデルを提案した場合にも、ここがネックになるのではとの意見でした。結局月額課金化しても、祝休日に来店が集中し、依頼を断る現状がより加速するのではとの意見でした。至極まっとうな意見です。また、この問題は美容師も土日は激務で、平日は稼働しない場合もあり、働き方と連動する課題でもあります。しかし、この問題は解決するすべがあります。

まず、コの字型の営業時間モデルです。平日の稼働率の問題は営業時間に職務があるビジネスマン需要を捉えられてなく、営業時間のピークシフトで解決する可能性が高いです。平日午前中は休みとし、ランチタイム以降も休みとして17時から22時に営業する営業時間です。実際に消費者モデルである飲食店はこのような営業時間で成り立っており、可能な経営判断です。

また、サブスクリプションモデルにしても、スポーツジム型のサブスクリプションモデルでピークシフトを狙う手法もあります。スポーツジムでは、平日だけ通う場合には月額会員費用が安価に設計し、ピークシフトを図っています。そのほかにも、ダイナミックプライシングを採用する可能性など、プライシングと集客のバランスを行う経営判断が取り得ます。

③ 人材確保・育成

新卒美容師の数は減り、美容師資格を保有しているものも休眠が増え、昨今その人材確保は熾烈になっています。そしてようやく獲得した美容師も定着率が悪く、採用に困っている美容室は非常に多いとのことを聞きました。

消費者体験として感じるのは、美容師のランプタイム(独り立ちまでの期間)の長さです。受付・掃除のほか、シャンプーからスタートして、カラーリングやトリートメントを行い、カットにたどり着くまでの修行の長さです。せっかく獲得した人材を、集客できる人材に育成する環境に若干の長さを感じます。

フランチャイズチェーン店では、オンラインでの学習コンテンツを充実させ、育成環境を整えることにより新規採用を強化できていますが、個人店舗では中々そうも行きません。

そこで活用されるのが券売機の活用とシャンプーの自動化のような無人化の戦略です。そして、労働市場においては休眠となっていた美容師のパートタイム採用です。もともとピークタイムに偏りのある美容室業界だからこそ、パートタイム採用との相性は良いはずです。

また、人材育成の視点からもサブスクリプションモデルと上手く関連づけることができるのではとの期待もあります。一定の店内でのクオリティ審査を突破することの条件付きですが、課金形態のスタンダードプランでは比較的若年層の人材を実践の場に提供し、ベテランの美容師は上位プランやスポットでの指名料で課金していくモデルです。

ライトに髪の量を調整したいニーズは若年層で広い、デザイナーズカットは高課金とするようなプライシングです。上手く設計することで、消費者ニーズを捉えられるはずです。個人店舗では、店長クラスも新人でも同一料金のカット料金であることが通常で、本来的な提供価値と課金モデルがあっていないようにも思えるからです。

美容室のサブスクリプションモデルに合う顧客層

最近注目を浴びているのがメンテナンス型の美容需要です。私のニーズがまさにそうなのですが、こだわったカラーリングやトリートメントは必要なく、2週間に1回髪の長さ、襟足、もみあげ、眉毛などを調整したいと考えています。半年に1度はカラーリングを軽くするながらも、多くの美容室に行く動機は髪の長さの調整です。

そのメンテナンスのカット料金が、ツーブロックなどのこだわったカット料金と同一なのも不思議な話です。隣の女性のカット時間が1時間なのに、自分のカット時間が15分程度で終わった経験が多くあります。それもそのはずで、前者はデザイナーズ需要で、私はメンテナンス需要だからです。そのため、プライスが合わず本来2週間に1度通いたい美容室をなんとなく月に1度か2ヶ月に1度のような来店回数になっています。

このメンテナンス需要に応えるべく眉カットを安価に提供している個人店舗もありますが、本来的なカット料金を正常化してほしいと常日頃考えていました。この需要に応えるのが、美容院のサブスクリプション化ではないかと仮説を立てます。

平日のみの利用と休日を含んだ利用でサブスクリプション課金額を変えることでピークシフトも行えますし、カラーリングやパーマ、指名料金は追加課金要素で別料金体系で良いと考えれば、月7800円くらいの安価なカット料金の通い放題メニューができるのではないでしょうか。通う頻度が高くなれば、シャンプーなどの物品のレコメンドや、着付け需要やネイル需要(これはまた別の需要ですが、関連市場)を捉えられるビジネスモデルもありえます。

既に美容室の月額定額サービスはあるのですが、全日シャンプー・ブロー通うい放題で25000円で、また別の市場でした…。

まだまだトライアンドエラーが必要で、簡単に月額課金化するだけでは消費者需要は満たすことができないかとは想像つきますが、月額課金化することにより初期獲得さえできればリピート率は向上しますし経営の安定化が図れるメリットがあります。

自分で美容室経営をするわけにもいきませんので、是非美容室のサブスクリプション化の検討事例がありましたら、協力したいくらいの熱量があります。本日美容室に行った会話がてら、つらつら書いてみました。

お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ