「すべてはコンテンツに」を掲げる理由

編集やデザインの力で「すべてはコンテンツに」。

僕の仕事は、いくつかのカテゴリに大別されるのですが、多くの場合、共通するのは、「コンテンツをつくる」ということです。

パステルの「すべてはコンテンツに」というスローガンは、どんなに些細なことでも必ずコンテンツに仕上がるという考えを表現しています。これは「思い」ではなくて、「考え」である論拠として、このエントリを書きます。

コンテンツ化におけるテキストの重要性

コンテンツの基礎となるのは、テキストです。最終的な表現手法がムービーであろうと、グラフィックであろうと、理想的には言語化された情報がビジュアルに昇華されます。

これは、すなわち、コンテンツの元となる情報が、一度は必ずテキストとして整理され、アウトプットされる必要があるということです。

これには異論があると思います。非常に優れた表現者であれば、あらゆる段階をスキップして、核心をついたビジュアルコンテンツ(例えば、イラストレーションや、ロゴマークやシンボルといったグラフィック)を生み出すことができるでしょう。

しかし、クライアントワークに限って言えば、やはり「なにかをコンテンツにする」という作業において、テキストは不可欠なのです。

どうしてかというと、コンテンツを伝達、応用、展開、維持していくためには、クライアントとの協働が必要だからです。

協働のための認識や理解の共有、さらに資産として保存するためには、テキストという情報フォーマットが必須です。

僕は、基本的に誰もがコンテンツになりうる何かを持っていると考えています。個人、法人、プロジェクト、すべてに存在理由があり、それらに価値があるかどうかは情報の受け取り手の判断に委ねられます。

しかし、それらの価値がときに認識されづらい場合は、それを認識されやすい形にアウトプットする必要があります。

コンテンツづくりの流れ

僕の頭のなかでは、次のようなファネル(漏斗)で考えています。これがパステルのコンテンツづくりの流れです。

上の三角がクライアントが持っている情報で、上位2層は顕在化されており、下位2層は潜在的情報です。下方向のベクトルが、情報の独自性の強さを表しています。

画像1

上の三角の漏斗から絞りだされるのがコンテンツであり、下の三角です。これらがクライアントの持つ潜在的な情報資産で、マーケティングやブランディングなどの企業活動に応用することができます。

上の三角よりも下の三角が大きいのは、デザインや編集といったクリエイティブが情報のクオリティやボリュームを増大させることを表しています。

では、「企業のブランディングのために、その企業の活動をオウンドメディアにアウトプットする」と仮定して、上図の解説をしていきます。

1. data / fact

まず、第1層。

企業の持つもっとも表層的な情報としてのデータやファクトです。売上であったり、取扱商品やサービス、沿革まで、さまざまな客観的情報です。これらはもっとも加工しやすい情報のひとつと言えます。

「売上ランキング」や「人気商品紹介」、「企業のなりたち」などは、この第1層の情報を加工したコンテンツです。

2. episode

次に、第2層は、エピソードです。

コンテキスト(文脈)が顕在化されていないファクトとでも言いましょうか。実際には、潜在的な文脈は存在しますが、個別的な逸話です。

コンテンツとしては、「お客様の声」「商品開発秘話」「◯◯で活躍する□□」などがこれにあたります。商品開発のエピソードは、編集次第で第3層のストーリーになることも。

この段階までは顕在化されている場合がほとんどで、クライアントワークにおいては、ライターやプランナーがクライントにインタビューをすることで容易に見出すことができます。密なコミュニケーションによって発見される情報です。

次の層からは、クライアントとのコミュニケーションだけではなく、共同作業が必要になり、クリエイティブが介入します。

3. story

第3層は、ストーリーです。

さまざまなエピソードの水面下にあるコンテキストが顕在化されます。

ストーリーは、その言葉のとおり物語ですから、起承転結が必要です。個別的なエピソードとは異なり、どのように話が展開していくのか、読み手に期待感を抱かせます。それ自体にエンターテイメント性があり、期待ばかりではなく、ときに落胆させ、人の心を揺さぶる力があります。

エピソードをつなぎあわせたり、個別的なデータを掘り下げて、その文脈を読み取っていくことで、ストーリーを編み出すことができます。

多くの場合、文脈を読み取るために重要な要素は、人物です。人物の考え(ひらめきや苦悩など)や行動を追っていくことで、ストーリーは自ずと見えてきます。

具体的なコンテンツの例としては、障壁を乗り越える商品開発の顛末や、生産者から加工者までのリレーなどが挙げられます。

4. opinion

もっとも深い層は、オピニオンです。

意見、主張、こだわり、思い、情熱、思想、ビジョンなどがこれにあたります。(単純なopinionの語義には収まらないものもあり、もっと良い言葉がないものかと考えているところです。)もっとも独自性が強く、ストーリーでは間接的にしか伝えられない情報です。

非常に属人的な情報であり、扱いづらい一方で、誰もが必ず持っている情報です。どんなに小さな企業でも組織でも、構成員が人格を持っている以上、必ずそこにオピニオンがあります。

それは人間的な偏りであり、アンバランスさですが、独自性が強く、上手に加工することで、非常に効果的なコンテンツになりえます。しかし、当事者たちが言語化できない場合が多かったり、言語化できても、魅力的な表現方法を選ばないために、活用されていないことが多い情報です。

「社長ブログ」といった類の組織のなかの個人がつづったブログやメディアがおもしろくないのは、言語力が稚拙であるか、情報の質が劣悪かのどちらかです。

しかし、例えば、ある工業製品をつくっている町工場の社長の製品づくりへの思いを聞くと、心打たれるときがあります。決して大きくはない福祉団体の現場職員たちの仕事と向き合う熱意に思わず尊敬の念を抱くことがあります。これらもコンテンツになります。

エピソードもストーリーも、データやファクトでさえも、第4層が表象化したものです。

ただし、独自性の強さではストーリーはオピニオンに劣ることが多いですが、マーケティングにおいては、ストーリーの方が強力な場合が多いかもしれません。

テキストコンテンツがすべての基礎となる

これらのレイヤーを表層から掘り下げていくフレームワークが、どんな小さな企業でも組織でも必ずコンテンツを持っていると断言する根拠です。

適切な情報整理と編集をすれば、当事者が気づいていないさまざまな事柄がコンテンツになり、コンテンツは資産となります。

無論、ネットメディアに限る必要はありません。書籍やブックレットといった紙媒体でも、映像でも、グラフィックでも、デザインと編集の力があれば、表現手法は問わず、コンテンツになりえます。コンテンツをきちんと資産として運用することで、メールコミュニケーションやセールストークにさえ、応用することができます。

また、C.I.をするにも、ブランディングをするにも、メディア化できる程度に良質なテキストコンテンツがプランニングやコンセプトメイキングの段階で必要です。

デザインだけが先行して「ブランディング」という言葉が安易に使われてしまうなか、もう一度テキストの重要性を見直して、資産としてのコンテンツの醸成を考えてみませんか。

これから表現手段の多様化はさらに加速していきます。そのような流れのなかで、テキストコンテンツが軽視されがちですが、言葉を扱う仕事の可能性は、無限に広がっています。

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