電子書籍と人工透析

電子書籍があまり好きではありません。一時は「滅びてしまえ」と嫌っていましたが、そうでもないなと思った話を。

紙の本が好きな僕は、電子書籍を敬遠しがちです。理由としては、単純に所有感がないことが大きいです。

あと、読みづらさ。漫画はともかく小説が読みにくいです。豊平文庫などのスマホアプリはもちろん、Kindleやkoboも、実際の文庫に比べれば、(僕にとっては)読みづらいです。

もちろん電子書籍にも良いところがたくさんあるので、要はライフスタイルの問題でしょうし、デバイスの進化でまた変わってくるでしょう。当初は嫌っていたのですが、最近はこんな風なつまらない一般論に落ち着いております。

さてさて、電子書籍が人工透析患者にとっては意外と良いというのが、今日の話です。

もちろん人によって意見はさまざまでしょうが、僕の父が人工透析を受けていたことがあり、家族としての体験による話です。

人工透析にもいくつかの種類がありますが、一般的には、週に3回、病院ないしクリニックに通います。透析時間は4〜5時間と長く、非常に疲労感を伴うことも多いようでした。

就労している人にとっての負担が大きいのはもちろんのこと、そうでない人にとっても、やはり辛い時間です。その長さを考えると、透析の時間をどのように使うかというのは、その人のQOLにも深く関わる問題ですよね。

市立病院などの透析室を除いて、透析専門のクリニックなどは、それぞれのベッドにテレビやDVDプレイヤーが備えられています。テレビを観たり、DVDで海外ドラマを観たり。ときにはパソコンを持ち込んでいる人もいたり、タブレットでサブスクリプション型の動画を観ている人もいたり。

片腕に穿刺する場合がほとんどなので、何をするにも片腕が使えない。基本は利き腕の反対ですが、いろいろな事情で利き腕に穿刺している方もおられます。そんな理由から、受動的なメディアを視聴することが多くなります。

父がよく言っていたのは、テレビは飽きるし、つまらない。時間を無駄にしている気もしてしまう。DVDも毎度毎度借りるのは手間だし、経済的でもない。パソコンはよく分からないし、そもそも使う用事がない。

本が好きな人だったので、本は読めないのかと訊いてみると、「文庫でさえも、長い時間読もうとすると、手が疲れてしんどい」とのこと。

そこで、ものは試しにと、当時、売り出し中で安価だった電子書籍リーダー「kobo」を買ってみました。書籍のダウンロードはパソコン操作に強い母が担当。

何作品かをみつくろって、持たせてみると、電子機器の扱いが不慣れな父にも意外と好感触。さすがに4時間は持ち続けられないものの、本に比べれば軽く、片手で持ちやすい形状のため、これなら読めると喜んでいました。

軽さは、読むときだけでなく、病院へ通うときの荷物の重量軽減にもつながります。気分が上下しやすい透析前後。複数冊を入れておいて、気分にあわせて読みたいものを選べるというのも電子書籍ならでは。

また、透析患者さんは、糖尿病性だったりすると、視力低下が著しい場合もあります。文庫本をテーブルに置いて読もうとしても、筋力の問題以前に、文字が小さくて読みづらいわけです。電子書籍リーダーなら、文字サイズを大きくできるので、その点も父には好評でした。

そんなこんなで、電子書籍もなかなかやりよるわけです。

僕は常々、紙の本の山に埋もれて死にたいと思ってはいますが、電子書籍の有用性を認めざるをえないと思った経験でした。

やはり道具は使い方。ケースバイケースです。その必要性を好みで語るというのはナンセンスで、僕の勝手なフェティシズムで電子書籍を排斥しようなどと述べるのは暴論も暴論……。

紙と電子の共存などとテーマを掲げて議論せずとも、紙の本の需要が消えることはないのでしょうから、電子書籍リテラシーみたいなものが高まるにつれ、適切に使い分けられていくのだろうと思います。(というか、すでにそんな感じになってますよね……?)

今日は電子書籍にまつわる話でした。本や文芸にまつわる話題は「どっぷり」で取り上げます。それではー。

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