見出し画像

自由連想法による文章練習【26】

 カラオケ動画をしっかり作りこみ直そうと思ったのはカッチンたちと電話で話したからだ 俺がアイツらの英雄として君臨するにはカラオケしかないぼくはカッチンが用意したプロジェクターにでかでかと手っとり早く映った 構想の三畳はおもったとおりの広さで カーテンよりもブラインドのほうがすっきりもするし見栄えもニトリが叶う コピー チャージ 時刻表 リンゴジュース 表札 突っ張り棒 トイレブラシ タオルかけ 歯ブラシたて 洗濯金具 踏み台 コード留め エアコン ブラインド 警察変更 モデム返却 電気名義 NHK ビレッジ振込 ニューロ光 段ボール ポケットWi-Fi 死亡保険 カード払い…… そう やることはまだたくさんあるシロとの最後は最高の形はまるがるんぷん シロは寝ていた茶色にぼくは妻のよろこぶ顔をしかたなく黒も買っていってやった たぶん妻は車にひかれないしワサビの店もちかい妻のパーカーのフードにポツ姉はいた 一代限りの命 次の休みまえにこそグランデュオでフグ皮を買えば妻の日々はより輝き喜ぶその連続のために生きるおなじぴったり六時にぼくはまた家をでた 三菱の家の正面が毎回視界にはいるだけで何かが大きくちがうかもしれないなら少し迂回すればいい話 ぼくはでも迂回しなかったがたぶん写真を撮る翌朝はせいぜいマルエツと近所を散歩するくらいにシロが下水管のうえにいた ぼくが近づくと来るなとシロは鳴いたぼくはルンプンがたぶんルンプンで締めくくった例の動画に大池ヨウスケはパチペンもしくは悟空対天津飯の天下一武道会 新生活は順調だが氷をあさる妻の音が月はもうマッピーじゃない目覚ましが二回鳴ってもぼくはまだすごく眠かった ぼくはやっぱり忠正にもりんごジュースをやることにした いや 忠正にこそやるべきだと思った そのくせ平山さんにあげられないもどかしいエアコンを消したぼくは洗濯機の横がけっこう水浸しでガムテープもはがしづらくてますます妻の不幸を思わずにいられないシロの絵を熊谷守一風に描いてみるのを思いついた 朗読とシロの絵 カラオケとすべらない話 主にこの四方向から攻め進んでしまるこは当面シカト 嫉妬やらの面倒くさい自分はともあれ「わが道を行く」と名付けた母のとおりに行くとしても所詮全体の産物は無用 結局はシロのまるさをキチンと描くことと妻の部屋とキッチンは無印で統一するべきだと確信した たぶんぼくはまだ疲れていない 揉めごとにも精力的だ 仕事も順調 だから保坂さんがいうとおり胸のなかに温かいものや軽く弾むようなものが何もない空虚さはまだわからないし「中央線がすきだ!」でまた一つ元気になった妻も大いに生きたがっているわりに幽霊のように見えることもあるぼくはシロの絵を描くのをたぶんやめる そう 絵ではなく シロをみて発せられる「すぷん」などの擬音語を録音してそれを作品とする 世界は無理やり全体のバランスを保っている歪なまとまりから逃れるには個人の殻をつくるしかない 表現もだから新しい表現をつくる「擬音読家」をたとえばフキさんのブログにコメントしたらグレープ酎ハイの箱に空の缶が偽装してあったことをぼくはむしろ笑った もちろん笑い事ではない ぼくがでも破滅に甘んじてもいいと思えるのはすでに十分幸せだからで たしかに欲望を支配はまだしていないが今度はきみひとさんにむちゃくちゃ攻撃したうえ 所長に提案する仕事の段取りをつけ終わってもぼくはまだエネルギーに満ち溢れていた 小川への再憎悪 しまるこへの難癖 暴れがとまらないあばれはっちゃく しまるこの器が実は極小だったことにもはや驚きも悲しみもあまりない次へぼくはもうそろそろいく 擬音家 臭い屁 争いをこえて次へ次へ まだコンビニがない頃のむかしの人がコンビニのようなものを探し歩く朝の渋谷は母だった やがて霧のなかから虎がしまるこを断罪したぼくは沈黙の意味を再確認した朝焼けが自由通路の左右脇から覗きこみながらあまりにも強すぎる自分に惚れ惚れした ぼくは東所沢にさきに降りることにした 新秋津の次が東所沢だったのを勘違いしたぼくはさらに新秋津の一番線と二番線を往復までした東所沢をコンコースと連絡通路で分けたら電話口の相手はノリオじゃなくてノリオの父ちゃんだった ぼくは戦慄した ぼくは自分がイズミユウスケであることを伝えて電話を切ったのはナリタケイコのときもそうだった たしかサダハルの家のちかくの公衆電話で魚谷もいた時代がぼくはもう前世のことにしか思えない そしてしまるこはまたぼくをシカトしたぼくは何度も最後の引導的文章の自分を少しも恥ずかしいと思わなかった バンテリンのコルセットも買ったし 畳の部屋に電気もつけた 「妻にお土産を買って帰るのは楽しくて嬉しい」からはじまる文章はどうやら破棄されそうがぼくはまだ寝ている妻に一声かけてから仕事にいった けっきょく妻は病院にいかなかった 翌日もいくかあやしい妻のいびきがやっぱりもう妻は死ぬかもしれないこのまま青梅にのこったとしてもどうせまだ母がいる ぼくは三十分になったら家をでることにした 朝日はどんよりで雨の予報だった 「仰げば尊し」が沁みたいったいアメリカだったことがドイツだと思った次はイギリスで ルイージがアメリカと答えたら檻からだしてもらえたつまりアメリカのゆかりおにぎりをぼくはぜんぶ食べてしまうことにした 御岳山の南山荘でみた朝日レベルどころか仙台の朝日にもまだ及ばない朝日がぼくはもう一度スマホをみたら「羊をかぞえる」に立ち返るのはこれからも何度もあるだろう ぼくは十年も沈黙していた だからいま沈黙をしいられている若者になにか言いたいらしいが沈黙をぬけるのは結局彼ら自身の力でしかない 要するに「おちんちんバスターズを貫け」ということだ ぼくが言いたいのはこれだ 食事の記事を要求してくる読者に気遣ってしまうくらいならコメント欄をなくしてしまうべきだ 「今は食事の記事を書くモチベーションではないのですすいません」となぜこの簡単な一言がいえない?神は君の苦悩をみている 君の苦悩に寄り添うことは君のためにならない 君には前進する義務がある 人類の総レベルを引き上げる礎の一人としての自覚をもっと持たねばならない 大衆の声に耳を傾けるな 耳を澄ますべきは大衆の魂である 大衆の声などどれも皆身勝手で腐っているというに違いないぼくはベートーベン ぼくは妻に弁当をつくらせることに聞いたらやっぱり松潤でますます福島さんを可愛いとおもった 男は女のため 女はぜんぶのため 偽善が真実の美に到達するまでに美と真逆の憎悪や戦いを繰り返すのは男の仕事 一方の女の幸福は留まることを知らないし留まる必要はない 羽ばたき飛ぶのは女を見守る男もまた宇宙に輝く 生まれたと同時に完成しているわれわれ人間は時間の経過で崩れ醜くなっていく流れを要はどこかで食い止め踏ん張らねばならない それはぜんぶの人間の使命でありわれわれ芸術家たちはその先陣を担う幸福と慈悲にいっそう満ちた妻を宇宙に捧げるほうが自分の道をとるよりむしろ世界のためになるとぼくはほぼ確信した だからぼくは万寿園の営業時間を調べるといったら妻が嬉しい顔をしろチャンネルも古い順にならべてキングダムも用意した 男が女のために戦い女が世界のために輝くいまのぼくの大雑把な結論は妻がまた腰が痛いというほど風は強くなく シャチハタと箸を買いにあいだぼくは万寿園を通りすぎていた ぼくはカツオにんにくを食べたかった妻にはイチゴを買い マルシンの雑多を心配する妻にコタツをつくった 仙台の古着やで買ったオリーブ色のマフラー的がなかなかオシャレにきまったコタツとマルシンには一緒にいくことでふたたび笑顔をとりもどした妻は薬の飲み合わせを失敗してもう二度ともとの正常には戻らないだろう ていうかもともと妻は正常でもなかったウサギがもう本当にダメかもしれないぼくはでも妻以上にぼくの妻にぴったりの妻はいない ぼくは妻に明日の弁当はつくらなくていいと言った 下半身がコタツで上半身を日光浴しながらシロの動画と一日中寝ていた妻は本当にもうあまり長くないかもしれない親知らずも無事ぬけたし天気も新しいシロの動画がなによりお土産の妻はマルフジまで歩いてくるといった 現行最後の新秋津の集積所はあいかわらずネズミ臭く 灰色の毛がわき腹に突き刺さったプラスチックの鋭利が母との同居をリアルに計画したぼくは夏の二週間だけ母と子供たちを島根に帰す約束を祖母にした父にもそのとおりにすることを思いついた 

▼全文はこちら▼


▼全集マガジン購入者は、こちらから全文無料で読めます▼

ここから先は

10,386字
返品はできません。購入後はノークレームでお願いします。

種々雑多 な過去記事です。毒々しいテキストも多いため、良い子が気軽に購入できない金額(50,000円)に設定しています。一部もしくはタイミ…

サポート金は5,000円以上でお願いします。