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コラム・エッセイ「特筆すべき点P」(無料)

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脈絡のない思いつきを長々と書いているシリーズです。
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2018年8月の記事一覧

悼む人(お茶の間で)

『TVブロス』2018年3月掲載のコラムを加筆修正したものです。  芸能人の訃報に胸が痛む。私はその人のことを知らないし、向こうも私のことを知らない。  にもかかわらず、私の内部を構成するパーツの一部が欠損したかのような痛みを、訃報で感じることが「できてしまう」。不思議なことだ。  寝入り端によく空想していることがある。私はどこかの農村で生まれ育ち、百姓としての毎日を過ごしている。  妻と子がいて、隣人はみな親戚のようなものだ。その世界の私が出会う人間は生涯で100人に満

だと思う広告

『TVブロス』2016年8月掲載のコラムを加筆修正したものです。  最近、「だと思う広告」が気になる。  これは僕の造語で「『○○は、☓☓だと思う』という形式のキャッチコピーが使われた広告」のことだ。この説明で「ああ」と思った人は多いのではないか。誰もが一度は見たことがあるはずだ。  たとえば、タバコのポイ捨てをやめよう、という広告に、こういうキャッチコピーが付く(これは架空です)。  旅行会社の広告だと、こう(これも架空)。  こういう感じの「だと思う広告」に触れ

3大おにぎりの具「シャケ」「梅」あと1つは?

みんなが自由に決めればいいと思う。 (おわり) ※ ※ ※  すみません。おにぎりの話がしたいんじゃないんです。 3大○○、「☓☓」「△△」あと1つは?↑このフォーマット、完成度高すぎない? という話がしたかったんです。 インターネットが誕生し、アクセス数で収益を上げるビジネスモデルが確立して以降、「記事タイトルでいかに読者を釣るか」という問題は常にホットであり続けました。その結果生まれたのが「【悲報】」や「結果」などの釣りワードです。その中でも上記の「3大○○」は

地元民の矜持

(TVブロス2015年9月掲載のコラムに加筆と修正を加えたものです)  2015年に、『止まりだしたら走らない』(リトルモア)という短編小説集を出版した。収録されている短編の中に、いつもディスカバリーチャンネルで海外の映像を眺めては「生きているうちにそこへ行くことはないだろう」とぼんやり考える女性の話がある。  テレビを見ながら行く予定のない場所に思いを馳せるのは、ある意味「正しいテレビの使い方」だ。だが、逆の出来事もある。「地元がテレビに映る」という事態である。かなりの

曖昧W杯

(月刊まんがくらぶ 2014年7月掲載のコラムに加筆と修正を加えたものです)  ワールドカップをよくわかっていない。  今年も、青いユニフォームを着たコンビニ店員を見かけてやっと「どうやらワールドカップというやつが近いらしい」と推理するに至った。 僕が持っているワールドカップの知識はごくわずかだ。まず、トロフィーの形。これは知っている。僕にはあれが何かのサナギに見える。逆さになって天井にはりついていたらとてもいやだな、と見るたびに思う。サッカーボール柄の模様がついた巨大