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SaaS Product Crunchまとめ

6月4日に渋谷で開催された「SaaS Product Crunch」がかなり勉強になったのでまとめます!
すでにSaaSを作っている方にも、これから新規事業としてSaaSを考えている方にも役に立つ内容かと思いますので、ぜひお読みください。

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Talk1:レガシーな業界における、SaaS新規事業の事業戦略 - 50社に提案して契約ゼロから始まった、潜在市場における戦い方 -

登壇:宮坂 直 (スタディプラス株式会社)

まず登壇されたのはスタディプラスの宮坂さんです。
スタディプラスといえば、受験生に使われる学習管理サービスStudyplusが有名ですが、実は2016年から Studyplus for School というtoBのサービスもローンチしています。
今回は教育業界というレガシーな業界にどのように挑んでいったのかをお話くださいました。

・なぜ始めたのか

時代のトレンドとして、B2Cの事業を展開していた企業がB2Bの領域に展開する流れがあります。スタディプラスも2Cで成功していたUIUXをB向けにも使うことになったそうです。

・どう始めたのか

開始➡︎徐々に暗雲が
for Schoolは2016年4月から作り始めました。当初は代々木ゼミナールと共同開発という形でスタートさせていたそうです。
しかし、大手と共同開発したことにより機能が大手向けになってしまい、小さな塾に使われないという問題が発生しました。
さらに、大手はスタートアップと比べてどうしても動きが遅く、改善も思うように進みません。
サービスは思うように成功せず、社内では営業部と開発部で責任のなすりつけあいが起こっていました。
このようなタイミングで宮坂さんがスタディプラスにジョインします。

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完全リニューアル
まず宮坂さんは、組織の構造を機能部生から事業部制にして責任の所在をはっきりさせます。製品の完全リニューアルを決行します。こうして for Schoolの改造は始まりました。
事業部制として始動してからまもない頃はデザイナーもいなかったため、宮坂さん自ら100枚ほどのワイヤーフレームを作成し、展示会や営業でデモを繰り返して行きました。
NPS(Net Promoter Score)という、どれだけそのサービスを使いたいかを示す値をKPIに置いていましたが、かなりいい数字が出ていたそうです。

本格的に開発・プレセールへ
ニーズが確認できたので、いよいよ本格的に開発に入ります。
開発には3ヶ月かかるということで、この間ビジネス側は暇になりました。そこで、ビジネス側は事業計画をたて、プレセールを実施することにしました。営業一人当たり10社獲得が目標でした。しかし、現実は厳しく、50社に営業して獲得0社という絶望的な結果が出ました。
SaaSには2種類あり、それは既存の業務を効率化するものと、まだない業務を効率化するものです。生徒の学習管理は、一部の塾をのぞいて行われていない業務であったため後者にあたり、営業の難易度は高くなっていました。

どう売る?
そこを掘り出していくために、スタディプラスは「経営コンサル」という視点を持って塾にアピールしていきます。つまり、塾の経営者の視点に立って、塾と関わって行きます。こうすることで顧客との繋がりもでき、それが参入障壁になっていくようです。

SmartHRはどのようにしてファンを獲得してきたのか
 - SaaSビジネスのロードマップ戦略と開発の裏側 -

登壇:副島 智子 (株式会社 SmartHR)

続いて登壇されたのはSmartHRの副島さんです。
SmartHRはアナログで面倒な人事や労務の作業をクラウドソフトで効率的に行うことのできるサービスです。既存の方法だと従業員から情報を集めてそれを元に役所に行ったりと色々な作業があるところを、PCやスマホで簡単に行えるようにしています。

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このSmartHRを作っている経験から、今回はSaaSの作り方についてお話いただきました。

何を作るのか
ひとくちにHR Techと言っても、中には様々な業務があります。その中で何をやっていくのかが大切です。

SmartHRは様々存在する業務の中で、すでに他の企業がやっている業務をやってもインパクトが弱いだろうと判断し、入社カテゴリーから雇用契約・マイナンバー・入社手続きと、就業・報酬カテゴリーから年末調整・給与明細の業務を扱うことにしました。
限られたリソースをこの領域に集中投下しているようです。

ターゲットユーザーの設定
どんな業種の会社でも、従業員に対して会社側がすることに大した差はありませんが、業種によって、どのような人がどのくらいいるのかは変わってきます。
そこで、SmartHRが主なターゲットとしたのは飲食小売のチェーンです。
特に、店舗が全国に複数あり、アルバイトがたくさんいる会社を対象としています。
これは、
・人の流れがはやく管理が面倒
・本部と店舗との距離が遠く管理が難しい
ためです。
このようにターゲットを決めることで、この業種に合わせた対応と営業ができるようになりました。

ターゲットユーザーへの対応
実際にSmartHRが行ったことは、「複数事業所に対応」「メールアドレスを持っていないアルバイト・パート向けにiPadアプリの開発」です。
「複数事業所への対応」としては、店舗ごとに住所が違う飲食チェーン店で、一つのテナント(契約)ごとに複数の住所と雇用番号をもてるようにしました。
また、意外ですが最近はメールアドレスを持っていない人が一定数います。
そういうパートさんやアルバイトさんは店舗ごとに持っているパソコンで手続きをすることになりますが、そうすると個人情報がローカルに残ってしまいます。この個人情報の問題を解決するために、ローカルに個人情報を残さないようにできるiPadアプリが開発されました。
このように、ターゲットユーザーを設定したことで必要な機能を絞ることができます。

ユーザーからの要望には答えるべきか
SaaSを作っていると、ユーザーから多種多様な要望が寄せられます。これに全て応えるべきではありません。「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という有名なフレーズがありますが、このように本質的に何に困って出てきた要望なのか、というところまでブレイクダウンすることが大切になってきます。副島さんは労務の経験があるため、このブレイクダウンの精度を求められているそうです。

優先順位はどうつけるか
SmartHR社には、「人が欲しいものをつくろう」というものがあります。これをさらに掘り下げて、人が使うものは何かを考えています。

また、バックオフィス部門は使わないものにコストをかけるほど余裕がありません。使わなくなったSaaSはすぐに解約されてしまうそうなので、実際に使われるSaaSを作り続けることが大切です。
これまでに、「SmartHRを導入したこと自体を褒められた」というコメントを導入社からもらえるほどSmartHRは評価されているそうです。

まだまだ課題があり、SmartHRは完成品ではないそうです。これからのSmartHRの進化が楽しみになりました。

SaaS新規事業に最も必要なエコシステムの作り方 -リリース2年で導入社数2万社を突破したエコシステムの秘訣-

登壇:橘 大地 (弁護士ドットコム株式会社)

最後にご登壇されたのは、弁護士ドットコムの橘さんです。
「弁護士ドットコム」は弁護士検索のポータルサイトですが、今回は「クラウドサイン」というクラウドで契約できるサービスについてお話しくださいました。
クラウドサインでは、大量の契約書・煩わしい契約書締結の作業フローなどをパソコンのみで完結させ、短時間で完了することができます。

なぜクラウドサインは短期間で市場に受け入れられたのか

クラウドサインは2015年のリリースから急成長を続けていますが、なぜこれほど市場に受け入れられたのでしょうか。
その鍵はエコシステムにありました。

クラウドサインがクライアント企業と契約するとき、そこには「クラウドサインー顧客」という構造があります。
この構造をもう少し解像度あげて見てみると、クラウドサイン側にはエンジニアとセールスがいて、顧客側には導入担当者、その裏に法務と情報セキュリティ室があって、となります。
このように構造の解像度をあげていくことで、事業の精度を高めることができます。

クラウドサインが成功した要因として、バイラルで製品が広まったことがあげられます。これはB向けのプロダクトでは珍しいことです。
クラウドサインは、一社でも大企業に導入されると、その取引先もクラウドサインに触れることになり、それがクラウドサインを広めていったようです。

他のSaaSに対してクラウドサインとの連携を持ちかけたり、企業と契約する弁護士に対してクラウドサインの導入を促すなど、クラウドサインは様々な対象に営業をかけますが、それぞれが本当に求めていることは何かを考えて、それを提供する意識を持つことは大切であるようです。

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クラウドサインの価値観は「出会った人全員を成功させる」だということで、当日イベントに参加した人にはクラウドサインを使ってamazonギフトコードが送られてきました。

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このクラウドサインを使う過程は本当にわかりやすく、便利さがかなり伝わりました。

以上でレポートを終わります。
このイベントでは実際のSaaSの始め方から意識すべきポイント、有効な施策の打ち方などかなり勉強になりました。
SaaSに俄然興味が出てきたので、継続的にリサーチしていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました!


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