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38年目のナウシカ

singsジブリコンサート@TACHIKAWA STAGE GARDENに娘と行ってきた。ネタバレありなので、これからこのツアーに行くという方はスルーしてください。
最初に書いちゃうけどこのコンサート、あれだけ複数のカメラでしっかり撮影していたんだからコンテンツとして円盤販売なり配信なりされるんじゃないかと思う。三脚のついたカメラがさらにレールに載せられてステージ下を左右に行ったり来たりしていたので。前方の中央の席なんて普通なら一番良い席なんだろうけど、カメラが気になったのでは?それにピアノが組み合わされている部分が正面にくるので、ピアニスト目当てだとちょっと残念だったかも。

会場についてはこちら↓

CDについて、以前書いた記事はこちら↓

ここんところ角野さんずっと海外で、ちゃんと日本に戻ってくるのか心配していた。2月のコンサート以降、TV番組のテーマ作曲やらCMやらロックフェスの出演決定やら、ドイツでコンサートやら、新人賞受賞やら、快進撃を続けている。まあ、あの流行病が無かったら、とっくにこういう活動をしていたはずだと思う。
このコンサートの前日の夜に、ご本人が宿泊しているホテルの客室からインスタライブが始まってびっくりした。近況報告でしたね。

ということで、今回も内容を記録しておこうと思う。もうね、こぼれ落ちる短期記憶を引き留めるのに必死なのだよ。ただし、それほどメモも取ってなくて(途中でペンを落としてしまった)思い違いしているところや抜けもあるかと思うので、そこらへんは生暖かく見守っていただけるとありがたい。だけど全力で行くよ。他の人のレポートは読んでないよ。

今回のコンサートは、「singsジブリ」と題して声優の島本須美さん、久石譲さんのお嬢さんで歌手の麻衣さん、ピアニストの角野隼斗さん、菊池亮太さんの4人(+女性コーラス)で構成されるステージだ。プログラムはスタジオジブリの映画で使われたり、3年前に発売されたCDの楽曲からセレクトされている(厳密に言うとルパンはジブリじゃないんだけど、宮崎駿さんつながりで島本さんクラリスでってことかな)。

ステージ上には大きなスクリーンが降ろされていて、タイトル画像が映し出されていた。ステージには2台のグランドピアノが組み合わせて置いてある。左のピアノは台に乗っていてちょっと高い位置(こっちがメイン)。右のピアノは蓋が取り外されて手前に置いてある。
ホール内には鳥の鳴き声が流れているのだが、ところどころでヒヨドリのヒーヨヒーヨという鳴き声が混じっていて、近所で録音したのかと思った。

先行でゲットした私の席は右寄りの前方だった。座席を確認したら1列目が無かった。このホールは多目的に使えるようになっていて、1階の席は取っ払うことができる。イベントで恐竜が歩いていたり、プロレスのリングが組まれていたりする。今回1列目を取っ払って撮影用のカメラが置いてあった。

おおお!近い!右側のピアノの鍵盤がよく見える。これは期待大!

開演時間が近づいて、ホール内に案内のアナウンスが流れる。ん?これ島本さん?と思ったら、大人の声と子供の声を交互に使い分けながらの読み上げが続く。…「携帯電話の電源をお切りください」「マナーモードじゃだめなのよね!」みたいな一人二役のアナウンスの最後に「声優の島本須美でした」で締める。途端に拍手が起こった。注意のアナウンスの後に拍手って斬新すぎる。

以下はもらったパンフレットにあったプログラムに演奏者をつけたしたもの。角野さん菊池さんはそれぞれの曲のアレンジも担当している。

人生のメリーゴーランド(角)(菊)
海の見える街(角)(菊)
カントリー・ロード(角)(島)
ひこうき雲(菊)(麻)
もののけ姫組曲(菊)
アシタカとサン(菊)(麻・コーラス)
千と千尋の神隠し組曲(角)(麻)
-------------休憩--------------
ルパン三世のテーマ~サンバ・テンペラード(菊・角)
炎のたからもの(角)(島)
ナウシカレクイエム(角)(麻)
風の谷のナウシカ(角)(島・麻)
崖の上のポニョ組曲(菊)
ひまわりの家の輪舞曲(菊)(麻・コーラス)
君をのせて(全員)
-------------------------------
【アンコール】
Madness(菊・角)
となりのトトロ(全員)

♬♩♫

客席の照明が落ちる。するとまだ暗いステージに人影が。あ、角野さんだなと思ったら、右側のピアノの前に。ライトが当たって赤い鍵盤ハーモニカをピアノの上に置くのが見えた。静かに「人生のメリーゴーランド」が始まる。
途中から現れた菊池さんが左のピアノの前に座り、2台での演奏になった。アイコンタクトを交わしつつ、角野さんは伴奏を菊池さんに任せ、完全に鍵盤ハーモニカだけの演奏に。ラスト部分のタンギングがすごい。

一曲目が終わると、角野さんがアコーディオンを抱えてピアノの前に立った。チャラン・ポ・ランタンの小春さんの動画で指導されていた、ボタンアコーディオンだ。ひょっとして初披露?いっひゃー!真正面だよ!そこで「海の見える街」だよ。菊池さんのピアノ、スクリーンにはアニメの背景のような、海辺の街を俯瞰したイラストを使った映像が流れている。そこへ角野さんのアコーディオン。まんま「魔女の宅急便」の世界だよ!いやちょっとこんなお宝シーンを拝めるとは思わなかったよ。

2曲終わってステージ上にメンバーが並ぶ。島本さんの挨拶からメンバー紹介が始まった。台本を持ってらしたので、今後のツアーでも同じトークが入るのだと思う。この後のプログラムも、曲と曲の間にはトークやナレーションが入るという進行になっていた。今日が初日で通しでやるのも初めてということで、慣れてなくてごめんなさいね、みたいなコメントがあった。
角野さんは、アコーディオンが終わって緊張のピークが過ぎた、みたいなコメントをして会場の笑いを誘う。
麻衣さんは「風の谷のナウシカ」で、らんらんらららんらんらん…のスキャットを4歳のときに歌ったそうだけど、それが今ではこんなに育って(ちょっとふくよかなので)…とこれまた会場の笑いを誘う。そして菊池さんと麻衣さんは、すでに何度か一緒に仕事をされているそうだ。
島本さんは、角野さんと菊池さんが休憩時間でもピアノを弾いていた、と舞台裏の話を。本当にピアノが好きね、と。

今回のコンサートは子供料金も設定されていたので、子供に寄せたファミリーコンサートなのかなと思っていたのだが、島本さんの口からは〝大人なジブリコンサート〟という表現が出た。おおう、そうだったのね。ピアノがあの2人だしね。

角野さん、左側のピアノに移動して「カントリー・ロード」が始まる。CDに収録されているのとはまた違うアレンジだった。ちょっと緊張気味の島本さんの歌が入る。真っ直ぐな歌声だった。

トークを挟みつつ次は菊池さんのピアノで、麻衣さんが「ひこうき雲」を歌う。さすがプロの歌手なので、伸びやかな響きだ。
曲が終わるとコーラス担当の女性がステージに現れた。13名からなるリトルキャロルというグループだ。今日のために結成された、と麻衣さん。右のピアノの奥から、要所要所でバックアップしてくれるメンバーだ。

次の「もののけ姫組曲」は「アシタカせっ記」から始まる菊池さん編曲のメドレー。これがすごく重い響きがあって、やっぱり菊池さんすごいなーと思った。実は菊池さんの生演奏を聴くのは今日が初めてなのであった。重低音と振動がピアノ本体から直接伝わってきて、近くで聴けてよかったなと思った。
メドレーは「アシタカとサン」へとつながり、麻衣さんとリトルキャロルの歌声が重なる。これ、歌詞が付いてたんだと思ったら、作詞は麻衣さんだった。

トーク(編曲について話していたと思う)の間にコーラスが退場して次は角野さんの「千と千尋の神隠し組曲」が「あの夏へ」から始まった。スクリーンには、劇中の水の上を走る電車から眺めたような風景が映し出されている。
「ふたたび」と「いのちの名前」を麻衣さんが歌う。歌とピアノ、シンプルで美しい響きだ。

♬♩♫

休憩を挟んで始まった第二部。ステージ上のスクリーンがすーっと引っ込められる。島本さんがステージの下手で「カリオストロの城」のクラリスのセリフを読むと、菊池さんのピアノが始まった。しっとりと「ルパン三世のテーマ」を弾いている。ルパンなんてまだアニメじゃなくて〝テレビマンガ〟と呼ばれていた時代の作品なのに、大野雄二さんの曲は知らない人はいないくらい長きに渡って愛されている。
ところで菊池さんはベージュのトレンチコートを羽織り、ソフトハットをかぶっている。これは…ひょっとして銭形警部か?と思っていたら、角野さんが上手から出てきていきなりグリッサンドからの参戦!2台ピアノの「サンバ・テンペラード」が始まった。
これ、前日にリハーサルの様子がツイッターで流されていた。角野さんは右側のピアノなので、これまたよく見える。マゼンタのライトを浴びて、時々左手で指を鳴らすようにリズムをとっている。立ち上がって弾いたりしてる。

角野さんの生演奏は何度か見ているけれど、いつもガチのクラシックだったので、こういうノリノリのやつは初めてだよ。やー、神席で嬉しい!今回も眼福耳福!おばさん、これで今年いっぱいは頑張れると思ったよ。

曲が終わって島本さんが現れる。お褒めのコメント中に、並んで立っていた菊池さんが何やらごそごそとメモを取り出してセリフを読み始めた。やっぱり銭形警部だよ!「カリ城」のあの有名なセリフを慣れない様子でダミ声で読んでいる。突然の寸劇にホール内大爆笑。
その後角野さんが左のピアノに移動して、島本さんが「炎のたからもの」を歌う。しっとりと、まとまった。

ステージ下手で島本さんがセリフを読む。「風の谷のナウシカ」で、ナウシカが幼少時に、隠していた子供の王蟲を大人たちに取り上げられるシーンだ。セリフを聞いているだけで頭の中にはっきりとそれが浮かんだので、自分でも驚いた。角野さんの「ナウシカレクイエム」が鳴り出す。三鷹のホールで初めて生演奏を聴いてドギモを抜かれた曲だ。
再度降ろされていたスクリーンには、風の谷をイメージする映像が流れていて、途中から麻衣さんのらん、らんらら、らんらんらん、が入る。映画公開当時はおぼつかない歌声だったのが、今こうして時を超えて同じフレーズを辿っているのが感慨深い。

私はナウシカ公開時に高校生だった世代だ。トークにもあったけど、ジブリの映画は、サントラの前にイメージアルバムが制作される。当時その「鳥の人」のレコードを聴いて衝撃を受けたもんだ。映画公開はもう38年も昔の話(角野さんも菊池さんも生まれていない)なのに、くり返しテレビで放映されて、世代を超えて広く知られる作品になっているのがすごいなと思う。
まさかね、「風の谷のナウシカ」をナウシカ役の島本さんが目の前で歌っている、というシチュエーションに出くわすことになるとは思ってもみませんで。ぬいぐるみのキツネリスに指を噛ませて「痛くない…」というナウシカのセリフをここで聞くことになるとは。ええ。邂逅というか、時の神様のお導きというか、人生何があるかわかりませんね。

トークを挟み、菊池さんの「崖の上のポニョ組曲」から「ひまわりの家の輪舞曲(ロンド)」へ。歌詞を聴いてじーんとしてきた。現在の母や、それほど遠くない自分の未来を思う。
麻衣さんとリトルキャロルの歌声を聴いていて、口を開けて歌える日々がやっと戻りつつあると、しみじみと実感した。

またトークを挟み最後の曲へ。このコンサートはトーク多めで、いろいろ裏話が聞けて面白かった。あまりしゃべりが得意ではないピアニスト2人を、島本さんが無理やり引きずりこむ。
CDに収録されている「カントリー・ロード」の話題が出た。ラストは角野さんの伴奏がフェードアウトしていく。道はずっと続いていく、そんな意図が感じられて好きな曲だ。普通フェードアウトは編集でボリュームを絞っていくのだが、あの時は角野さんがピアノを弾きながらフェードアウトしたという。つまり、ピアノ→ピアニッシモ→ピアニシッシモ…って弾いていったってこと?

うそだあ!

CD発売後、3年を経て今明かされる衝撃の事実!いや本当に驚いた。

最後に全員での「君をのせて」。おばさん、実はジブリの映画で一番好きなのが、「天空の城ラピュタ」だったりする。当時の映画館は座席指定もなく、入れ替え制でもなかったので2回連続で見た覚えがある(それなりに疲れた)。

♬♩♫

さて、プログラムに無いアンコールは何だろうと。拍手が続く中、またスクリーンがすすっと上がっていった。角野さん左側、菊池さん右側で2台ピアノの演奏が始まった。さっきのサンバ…のような、疾走感あふれる曲だ。ちょっと記憶にない。菊池さん、立てかけたタブレットをスワイプしつつ鍵盤に指を走らせる。お互いのアイコンタクトでタイミングを合わせる。やー、かっこいい!「紅の豚」の中の曲だそう。サントラには入ってないみたいで、よくこの曲を引っ張ってきたなと思った。

二人の演奏が終わると、今度こそ最後の「となりのトトロ」を全員で。島本さんもおっしゃっていたけど、一緒に歌いたいと切に思った。締めのトークの終わりに、リトルキャロルのメンバーがメインの4人に花じゃなくてトウモロコシを渡す。サツキとメイが入院中のお母さんに届けたあれだ(本物だったのかな?今の季節に用意できる?)。
拍手に送られて、出演者たちがステージから姿を消した。

ということで、休憩を挟んで2時間半近く、思ったよりずっとがっつりとしたプログラムの今回のコンサートだった。頭の中だけ38年前にタイムスリップしたような、不思議な感覚だった。気づいたらまだつながっていた、そんな印象だった。ナウシカの周りにいた爺様たちは皆鬼籍に入ってしまったので、まだご活躍中の島本さんにうれしく思う。

出演者の皆さん、スタッフの皆さん、今回のコンサートをありがとうございました。おばさん満足です。まだまだツアーは続くので、どうぞお体に気をつけて。

って、ここまで書いてきて、改めて自分は相当昔からオタクなんじゃないかと思った次第。

※6月15日追記:実家でレコードを発掘したよ!(ポスターもあった)

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