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Bユースが創り出す 日本バスケの未来vol.2 サンロッカーズU15

サンロッカーズ渋谷ユースでは「渋谷から世界で活躍する選手を育てる」という理念のもと、トップチームとも連携した一貫指導体制を敷いている。さまざまな経験をしてきたコーチたちを選手の年代に合わせて配置するだけでなく、ユース活動を統括する「ディレクター」職を設置し、また現役NBA選手も指導するデイビッド・ナーステクニカルアドバイザーやパフォーマンスチームとも連携するなど、選手のさらなる成長を支援するための特徴的な取り組みが行われている。
 今回はU15の秋葉真司HCに、一貫指導体制におけるU15の位置づけや役割、目指すものなどを聞いた。(取材日:7月11日)

選手たちが主体的に取り組める環境がある

宮本 今回のユースの公開練習(7月3日、体験会と同時に開催)では、U12・U15・U18の3カテゴリーが体験会の参加者や保護者の前で練習を行いました。おそらく他のチームでも前例のない取り組みだと思いますが、秋葉コーチはどんな成果を感じましたか?
秋葉 やはり多くの人に見られながら練習することに、選手からは「緊張した」というフィードバックもありました。将来プロ選手になる選手がここから生まれると考えれば、見られている中でプレーすることをどれだけ楽しめるかなど、いろんなことが学べるすごくいい機会だったと思っています。また、そういう環境のなかで「僕らが目指している姿をこの練習会を見てくれている人に伝えられるか、チャレンジをしよう」とみんなに話をしました。その点では、今の彼らができる最大限の練習ができたと思っています。
宮本 サンロッカーズ渋谷ユースの特徴としては3カテゴリーがトップチームとも連携していて、指導体制が整っている点だと思います。ユースの中でU15は真ん中にあたりますが、U12とU18があるメリットなどは感じられていますか?
秋葉 やはり真ん中ということで、U12から上がってくる選手、トライアウトでU15から入ってくる選手、そして飛び級をしてU18に入っていく選手がいます。いろんな選手たちと関わりを持てる環境で、他のカテゴリーとは違う競争環境が作られていると思います。U15の選手たちはU18に上がりたいだろうし、U12から上がってきた選手に追い越される危機感もある。そういった競争環境はメリットだと思っています。
宮本 秋葉コーチが中学生、高校生のときはユースというカテゴリーがなかったわけですが、羨ましいと感じることはありますか?
秋葉 ユースでは、今の自分に満足しない環境が作られると思うんです。たとえば中学校だと3年生になったら試合に多く出られるようになるとか、やはり学年で考える部活は今も多いと思います。僕は中学2年生の時に全中で優勝したんですけど、その時は3年生がメインで出て、自分達も力になれたらいいなという感じでした。要するに自分自身が主体的に取り組めるのは、上級生になってからの場合が多いと思うんです。ユースは学年関係なく全員が同じスタートラインで、下からの突き上げと上に上がるという目標を持って今の自分と向き合える環境なのでめちゃくちゃ羨ましいですね。

宮本 なるほど。ユース同士の関わりについても少し伺っていきます。一貫指導体制のなかで、U12の堀部HCやU18の森茂HCとはどのようなコミュニケーションを取られていますか?
秋葉 コーチサミットと言って、サンロッカーズ渋谷ユースのコーチ全員が集まってどんなバスケットボールをやっていくかを定期的に話し合っています。U12に関しては、昨年まで僕がHC、堀部コーチがACで、当時から堀部コーチともU15との繋げ方をよく話していたので、「今、こういう指導の流れを作っていきたい」というところを具現化してU12が取り組んでくれています。「これは15歳からやり始めた方がいいかもしれない」「これはもしかしたら13歳くらいで覚えた方がいいかもしれない」というコミュニケーションが取れているので、いい関係が築けていると思いますね。
宮本 なるほど。U18との関係はどうですか?
秋葉 U18も同じで、「こういうことをU15でやっておいてくれるとU18に加入した時にもっといいプレイヤーになれるかもしれない」というようなやりとりを定期的にしています。ただ、正解がないものを探しているのが正直なところです。だからこそ、こまめにコミュニケーションをとってアップデートを続けています。

子供たちと本気で向き合う

宮本 では、公開練習について伺っていきます。U15の練習会では実戦に合わせてシチュエーションを切り取ったドリルを多く行なっていたように思います。どのような意図があったのでしょうか?
秋葉 日頃の練習から意識しているのは、個人、グループ、チームという枠組みです。個人の技術だけで終わらせないことは大切にしています。練習会がたまたま東京都リーグの前だったこともあり、実戦のシチュエーションを切り取りながら、グループ、チームに落とし込む練習のボリュームが多くなりました。
宮本 大会がない場合だと、どのあたりが変わりますか?
秋葉 枠組みとしては同じで、ボリューム(比率)を変えています。大会がない時期であれば、個人のボリュームが増えて、3vs3のグループの練習で終わることもあります。大会が近づいてくるとそれを5vs5の中で発揮できるかに焦点を当てるので、チームとしてのボリュームを増やすというような調整をしています。

宮本 なるほど。秋葉コーチが公開練習の最後にU15年代のメンタル面での難しさについて言及されていました。U15年代は人間的な不安定さというか、メンタル的にさまざまな感情が揺れ動くことが成長過程のなかにあると思います。
秋葉 最近「中学生はメンタル面の影響が大きいな」と感じることが増えました。どれだけ練習で調子がよくても同じメンタルで試合に向かうことは難しいし、バスケットボールに対するモチベーションが下がっている時はそれがそのままコートに現れます。そこはめちゃくちゃ難しいですね。
宮本 今はどのように向き合っていますか?
秋葉 すごくシンプルですけど、コミュニケーションの回数を増やすしかないと思っています。恥ずかしいのですが、僕が一時期選手たちに遠慮をしていたことがあったんですよ。
宮本 と言うと?
秋葉 「これを言ったら気持ちが沈んでしまうかも……」とか、「これを言ったら勘違いされるかもしれない」などと遠慮していたと気づきました。子供たちに本気で向き合って、それでダメだったらそれは仕方ないではないですけど、コーチも人間だし、選手も人間です。子供たちは大人が本気で向き合ってくれているか、気を遣っているかをリアルに感じ取っていると思いました。
宮本 そう言われると僕も子供の頃、大人をよく観察していたかもしれないです。
秋葉 そうなんですよね。子供たちもしっかりと大人を見ているので、当たり前のことなんですけど、本気で向き合うことを大事にして1対1でしっかりと話すことを意識しています。
宮本 それらも踏まえて渋谷ユースのU15として、これからどんな人材を輩出していきたいですか?
秋葉 サンロッカーズ渋谷のトップチームが持っているメンタリティをU15から作っていくことが大事だと思っています。U15年代は少しずつ他者貢献というか、周りにどうやって自分が貢献できるかを身につけていける段階だと思います。周りに貢献する楽しさや、それによって自分自身のモチベーションを見つけること、自信や喜びになっていくことがU15年代には大切で、そういった人間的成長がU18にも繋がるのかなと思いますし、バスケットボールのコートでも視野が広がるきっかけになってくれると考えています。

取材・文・写真=宮本將廣

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