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チャーハン物語

町中華が好きでよくいく。いつも定食ばかり食べる。チャーハンはたのまない。チャーハンは好きなのだけれど、同じ味を食べ続けるというのが、どうにもいけないみたいなのだ。
似た理由でオムライスやもり蕎麦も注文しない。なにかと合わせるならだいじょうぶで、たとえば酢豚にチャーハンだとか、カツ丼と蕎麦とか、ハンバーグがついたオムライスというふうになっているとこれは問題ない。

食べるときにいろいろと考えたいらしい。たとえば定食のように、生姜焼きがあって、付け合わせのポテサラやキャベツ、お新香にスープ、ご飯と目の前がバラエティ豊かにひらけると、どういう順番で進めようか、口のなかを絶妙なバランスで満たしたい気持ちになり、ぐるぐると考えるのだ。食べるうえで、この順番とバランスはとても重要だ。特にさいごのひと口を何で終えるのかを画策しながら食べるのがいいようだ。

チャーハンやオムライスはその醍醐味にやや欠ける。ラーメンだと、同じどんぶりのなかに麺のほかにチャーシューやナルト、メンマ、ときに味玉もあり、それらのバランスを考えながら箸をのばすことができるのでだいじょうぶだ。

でも同じ味を食べ続ける快感ってきっとあるのだろうと思う。よしんばそれが大好きな味だったら、これ以上の喜びはないだろう。そう思って、すぐ横で大盛りのチャーハンをうれしそうに食べているひとを盗み見る。あちこちに箸を動かし、ちまちまと考えている自分がすこし恥ずかしい。豪放磊落に憧れがあるのかもしれない。大盛りチャーハンがそうなのかはわからないけれど、なんとなくいつかはやってみたい。


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