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赤木ファイルとひとのいのち

麻生氏:あの、赤木さんのファイルというものは定義が難しいんですよ。赤木ファイルというのは何を意味しているんですかって、と言われると、赤木ファイルとして厳然と存在しているわけじゃありませんから。赤木さんが書かれたという紙自体は1枚に書いてあるからね。でしょ? あんた分かってないで質問なんかするなよ? ね? ちゃんと分かったふうに質問しないとおかしなことになっちゃうから。ね? あの、私どもは赤木さんが書かれたというものはほぼ1枚なんですよ。赤木ファイルというものを裁判所からそういったものを出せと言われたので、そういうものはないと。赤木さんが関与したと思われるところだけずーっと出して、その全てを出したのをまとめて、赤木ファイルと呼んでいるんだよね?
 
(財務省職員が麻生氏に耳打ち) 赤木さんがまとめたファイルです。
 
麻生氏:そうですよ、赤木さんがまとめたファイル。
 
(財務省職員が麻生氏に耳打ち) それを全部出している。
 
麻生氏:だから全部が今までだって全部が載っかってるわけじゃないですからね? 分かるでしょ? だから赤木さんが出されたのは1枚だけ。そのためこれまで赤木さんがずーっといったものをまとめて、何ページか、このぐらいになっているんですよ。でしょ? 全然頼りねえ顔してるけど、質問するんだったらちゃんと、きちっと知ってないと具合悪いよ? 何新聞?
 
 
 これは昨日(7月2日)閣議後の記者会見で、東京新聞の記者の質問に麻生財務大臣が答えた内容です。安倍元総理が、Twitterで指摘した「現場として厚遇したこと事実はない」という一文をどう解釈するかという質問を受けてのものですが、麻生財務相は、記者の質問の意味がつかめずにいたようです。
  ここで麻生氏は「赤木ファイル」とはちゃんと定義できるものではないと言っています。赤木さんが残したのは紙切れ一枚しかないと。ほかは赤木さんが言ったものをまとめて何ページかにまとめたのが、いわゆる「赤木ファイル」なのだと公言しています。
 赤木さんが紙切れ一枚に殴り書いたようなものを、省内のみんながこうして500ページにまとめてやったといわんばかりです。それも内容が重複したものは省いているとも言っていました。

 ぼくは「赤木ファイル」のことを、赤木さんが改竄の詳細な経緯をまとめてファイルにしていた書類だと思っていました。おそらく多くのひともそう思っていたはずです。しかし財務省内で起きた歴史的な改竄事件の最高責任者が、「赤木ファイル」とは、いうなれば、赤木さんが一枚の紙に書いたメモに、関連した資料を添えて作った書類だと、さらにいえば、本来そんな「赤木ファイル」などというものは存在しないのだと、公の記者会見で、新聞記者の質問に対して答えたのです。そして質問した記者の不勉強をあげつらっています。そんなことも知らないで質問するなとはっきり言っている。
 
「国民の命が最優先」としながら「安心安全な」東京オリンピックの開催を宣言した菅総理大臣とともに、麻生副大臣兼財務大臣もまた、「人の命」をあまりにも軽く見ています。この内閣だったら、戦争だろうが国家的規模の不正だろうが独裁だろうが、平気な顔でやってのけてしまうでしょう。麻生大臣の不適切な発言はお家芸などと笑っている余裕は、少なくともぼくのなかにはありません。それほどにそら恐ろしい気持ちになっています。
 
 なにかがもはや決定的に手遅れだということを、突きつけられているようです。「戻る」ことも、「収束する」ことも、「再生する」こともかなわない。一見普通に見えながら、底なし沼のような、荒涼とした不幸がやってくる。いや、もはやそんな事態に、ぼくたちは首までどっぷりと浸かっているのかもしれません。

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