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アナログレコード再生環境を+8万円で再構築してみた

7年間ほど居住スペースの関係でアナログレコードの再生環境を構築できなかったのですが(その間に世間ではやけにアナログレコードブームが盛り上がってた)、ようやく昨年7月(2022年)辺りから再構築に取り掛かかり、一応の完成に至った感があるので、経緯をまとめてみることにしました。

何十万円もする機材を取り揃えた所謂「ハイエンドオーディオ」の世界とは縁遠いこともあって、デジタルのオーディオ環境+ほどほどのお値段のアナログ再生機器・・・ということをやっていますので、アナログの世界を試してみたいという方の参考になればとも思っています。

レコードプレーヤー

TEAC TN‐4D-SE

レコードプレーヤーについては、まずは15年程前に購入した旧機(DENON DP-300F)を復活させて数ヶ月使用しましたが、色々と不満点があり、結局この機種を新規購入しました。

また、購入を検討していた時期(2022年末辺り)が、ちょうど円安が急激に進み出していた時期で、各オーディオメーカーが続々値上げを発表し始めていたことも、思い切って新機を導入してしまおうと考えた大きな理由の一つです。

この機種を選んだ際に考慮した点と導入後の気づきをまとめてみます。

①価格は10万円以下であること(条件)

当然予算の関係もあるし、いわゆるハイエンドオーディオの世界に踏み入るとキリがないので、アンプであったりスピーカーであったり、それぞれ一つの機器の購入価格の上限を10万円と考えていました。実際は②以降の条件を加味すると、旧機(約3.5万円)の価格以上という条件も加わることになります。

またオーディオの世界では一点豪華主義というのは成立しないと個人的には考えているので、他の機器との価格的なバランスも考えてのことでもあります。(この10万円という価格や機器間の価格バランスの理由については、別項で述べようと思います)

結局新機はAmazonで6.4万円(定価は8万円)で購入。(ただ、2023年8月現在市場価格は6.1万円まで下がってます。メーカー卸価格値上げの対象外だったのか・・・?)

②ユニバーサルアームであること(条件)

旧機がストレートアーム、専用ヘッドシェルであったため、カートリッジを取っ替え引っ替えするにはユニバーサル(=汎用)のいわゆる「S字型アーム」が必須であると考えました。(と言いながら現状はそれほどカートリッジを取っ替え引っ替えすることも無いのですが)

③回転数制御機能が搭載されていること(条件)

旧機のもう一つの不満点は(原因はわかってないのですが)ターンテーブルの回転数がおそらく+5%くらい早くなっていて、またその調整が出来ないということでした。

実際は調整できる様な機構になっているが、メーカーに修理依頼する必要があるとのこと。(ネット上で得られる非公式な調整方法も見つけたのですが、万一トラブルがあった場合にリカバリできなくなる不安もあります。)

ですので、新機では回転数の自動調整機能(もしくはマニュアルで微調整できる機能)が搭載されていることを条件としました。新機はダイレクトドライブ(DD)方式で、電子的に回転数精度を保つ機能を搭載していましたので、この条件は問題なくクリアできました。

④オートリターンorオートリフトアップ機能搭載であること(条件)

狙いとしていた価格帯(3.5~10万円)で該当する機種が1機種(DENON DP-400)のみで、どうにも選択の余地が無くて困っていました。

オーディオテクニカ社が出しているセーフティーアームレイザーを導入するという手段もあるのですが、設置にはターンテーブルとアーム間のスペースが必要で、全ての機種に設置できるわけではないということで断念。

結局は「機械式の機構が故障しやすいのではないか?」などと無理やりぎみの理由をつけてこの機能は諦めることにして、この新機(完全マニュアル式)の導入となりました。

導入後の感想としては、BGM的(要は寝落ち前提)な聴き方であればサブスクを聴けばいいわけで、そこまでの必要性はなかったというところです。

⑤内蔵フォノイコライザーのバイパススイッチが付いていること(条件)

新機購入時点では外付けフォノイコライザーを導入済。後述する理由で外付けフォノイコライザーがほぼ必須となっていましたので、内蔵フォノイコライザーのバイパススイッチは必須でした。

ただ狙いとした価格帯で、フォノイコライザー内蔵しているタイプの機種にはほとんどバイパススイッチが付いていましたので、この条件は問題なくクリアできました。

⑥トレース性能がいい?

導入後いちおうの慣らし(8時間程の稼働)後の音質の感想としては、内周歪み(盤の内側で針が正確に溝をトレース出来ずに音に歪みが発生してしまう現象)が軽減しているかも?ということでした。アームのトレース精度上がって、今まで歪み感が気になってた盤の歪みがなくなっていました。

また解像度が微妙に上がってる気がするのも、トレース精度向上のおかげかも。といったところが導入後の感想です。

ただ、音質の評価についてはカートリッジのクオリティが上がっている可能性もあって、何が音質向上に寄与しているのかは実際のところは不明です。

⑦その他旧機からの変化した点

その他グレードアップした点としては、旧機のRCAケーブル直付けではなくなって、RCAケーブルのグレードアップが可能になったこと、アース線の接続ができるようになったことでしょうか。

また、新機はダイレクトドライブ(旧機はベルトドライブ)で、ダイレクトドライブのデメリットとして言われるモーター振動が音に影響するという点については特に感じていません。

DENON DP-300F

結果的に、旧機についての辛口レビューみたいなことにもなってしまいましたが、カートリッジさえそこそこの質のものに替えれば、良い製品であると思います。発売から20年近く経って現在も製造が続いてる~ロングセラーとなっているということが証明していると思います。

カートリッジ

カートリッジについては合計3機種を試したことになります。それぞれレコードプレーヤーやその他機器の構成が異なるので、導入順、時系列に説明したいと思います

①DP-300F付属カートリッジ

旧機(レコードプレイヤー)に付属していたカートリッジ(MM型)です。先ずはこのカートリッジ→DP-300F内蔵フォノイコライザー→パワーアンプという構成からスタートしています。

同じ曲で、デジタルのハイレゾ音源(Apple Music)とアナログの比較ではハイレゾ音源が圧倒的に良い音。アナログ側は全音域の音やせ、パワー不足(出力レベル不足)、低音不足、解像度不足といった印象でした。

アナログ機器を復活させたはいいけど「アナログレコードの潜在力はこんなものではないだろう」というのが、今回の一連の活動の動機となりました。

この状態から次は、内蔵フォノイコライザーの質を疑問視して、外付けフォノイコライザーを導入(後述)しました。しかしパワー不足の解消にはなりましたが、さほどの改善は見られなかったというのが正直なところです。

② CHUDEN MG-3675

次にいよいよカートリッジのグレードアップにかかった訳ですが、MM型かMC型か?とか、どの音楽ジャンルに適しているとか、果たして付属カートリッジからのグレードアップになるのはどの価格帯からなのか?等選ぶ上で不明なことが多すぎました。

もう価格帯でエイヤで決めるしかないと思って、いろいろなメーカーから出ている機種の価格を調べたところ、もっとも種類が多いのが1万円前後~1万円台前半くらいの価格帯でした。

いろんな通販サイトのレビューも参考にしつつ(その他にDJ用は避ける。交換針の価格、入手の容易さといった点も考慮しました)、この価格帯であればダメ元でいいだろうということで決めたのが、CHUDENという日本メーカーから出ている MG-3675(MM型)という機種です。

旧機(レコードプレイヤー) でMG-3675→外付けフォノイコライザー→パワーアンプという構成となりましたか、これは大成功でした。

音やせ的な全体の質感の改善、低音のパワーアップ、解像度アップなど驚くほどの改善となりました。ハイレゾ音源との比較ですと、盤によってはハイレゾ音源に迫るといった感想でした。

更にこの構成に、真空管プリアンプ(詳細は後述)を追加し、旧機(レコードプレイヤー) でMG-3675→外付けフォノイコライザー→真空管プリアンプ→パワーアンプというグレードアップを行った時点から、既にハイレゾ超えになったとの感覚を得て、これ以降デジタル音源との比較は基本的に必要性を感じなくなりました。

③ SUMIKO Oyster

新機(レコードプレイヤー)に付属していたカートリッジ(MM型)です。構成としては新機(レコードプレイヤー) でSUMIKO Oyster →外付けフォノイコライザー→真空管プリアンプ→パワーアンプとなりました。

結果としては、レコードプレイヤー新機導入時の感想と重なりますが(カートリッジの変更によるものかどうかは不明ですが)音の質感が更に上がったような気がしています。

SUMIKOは米国のメーカーで、単体売りもされているのですが、価格帯としては先のMG-3675とほぼ同じ価格。2機種を同じプレイヤーに搭載すれば比較は出来るはずなのでやってみたところ、使用したヘッドシェルやリード線が安物のそれもかなり古いモノだったので、きちんと比較はできていないといったところです。

フォノイコライザー

ART Precision Phono Pre U

前述の通りレコードプレイヤー内蔵フォノイコライザーの音質、パワーに不満があった為に導入しました。価格はサウンドハウスで0.8万円(2023年8月現在、市場価格は1.4万円程度まで上がっています。)

結果的には音質的な改善効果は今ひとつ不明ではありますが、GAIN/TRIMという要は出力レベルの調整ができる機能があることで、今回の構成での肝(後述)になる機材となりました。

もう一つはローカットスイッチ。一般にはサブソニックフィルターと呼ばれている機能で、ハムノイズやモーター音などをカットする目的で、人間の可聴領域以下の音域をカットするフィルターとして(または過入力時にスピーカー保護する目的で)装備されてることが多いようです。

ローカットスイッチは、あまり音質がよろしくない盤で、特に低音のモコモコ感が大きい場合にONにするとモコモコ感が低減される効果があって時折使っています。

プリアンプ(真空管プリアンプ)

カートリッジをまともなモノに替えたことにより、だいぶ満足度高い構成になってきたのですが、やはり「アナログレコードの潜在力はこんなものではないだろう」という感覚は拭えずにいました。

次の手段として「真空管アンプ」導入と考えた訳ですが、いかんせん真空管搭載のアンプ(ブリメインアンプ)を導入しようとすると20万円は下らないという状況です。

最近では中華製のプリアンプが1万円以下の値段で販売されていたことは知っていたのですが、品質そのものへの懸念がありましたので導入は躊躇していました。

そんな中、FX-AUDIO-というメーカーがオーディオ系サイトでちょくちょく取り上げられている事に気づきました。(ちょと前の記事ですがこちらの記事をご参照ください。)

FX-AUDIO-は日本人技術者を中国現地工場に派遣して品質管理をしてるとのことで、中華オーディオでも他と一線を画すクオリティとなってると思われる為、試しにということで導入したのがこのプリアンプです。

FX-AUDIO- TUBE03J+

価格はACアダプター含めて0.8万円。結果は予想以上でした。端的に言うと「音の生々しさが増す」。

真空管特有の音の色付け(倍音構成に変化がある?)がされているということなのか、音の質感も上がっています。また、BASS/TREBLEのコントロールも有用性高いです。

ただし取り扱い上の注意点があって、それはこの真空管プリアンプの特性として「過入力での音の歪みが発生」することです。

個々のレコード盤によっても(カートリッジによっても)出力レベルは大きく異なり、レコード盤によっては真空管プリアンプの適正入力レベルを大きく超えてしまうことが多々あります。

そこで、先の外付けフォノイコライザーの出力レベル調整機能を使うことになります。出力調整ツマミではマイナス10db~±0db~プラス10dbの調整が可能になっていて、だいたいマイナス8db~マイナス3dbの範囲で出力レベルを絞って、歪みが出ないようにしています。

また、この様な中華アンプに使われてる真空管は(所謂「プリ管」)は、中国、ロシア、米国で主に軍事用として1970年代に製造されてたモノのデッドストックが利用されていて、折しもの世界情勢から今後入手が困難になる可能性があると考えていました。

また、真空管の寿命は一般に5000時間と言われていて、一日の使用時間4時間として約3.5年という寿命になります。

そこで個人的にもストックをいくつか持っておきたいと思うのと、製造国や個体によって音の傾向が異なるとのことらしく、その違いを確認したいとも思って予備管を購入しました。(価格は2本セットでだいたい0.1~0.2万円)

まとめと補足

以上が昨年(2022年)7月〜今年1月くらいまでに行ったオーディオ機器の構成変更作業の全貌になります。

結果、実現したオーディオ装置のレベルがどうなったか?デジタル音源との比較で説明してみますと、

デジタル
スピーカー位置の「目に見えない平面」の所々にベタっと音源が貼り付いているような、謂わば平面的な音像。時折デジタル特有の角がある質感を感じる場合がある。全体のボリュームを上げると迫力は増すがうるさく感じることが多い。

アナログレコード+真空管プリアンプ
個々の音源(楽器)がスピーカーより前で迫ってくるような感じで鳴っていたり、かなり奥の方に鳴っていたりと、立体的な音像。音の質感はとても滑らか。全体のボリュームを上げると迫力は増すが、うるさく感じることがない。

といったところでしょうか。
因みに総コストを計算してみると、

・レコードプレイヤー:6.4万円
・フォノイコライザー:0.8万円
・真空管プリアンプ:0.8万円

合計8万円ということになりました。

結果的に試行錯誤となって現状利用していないカートリッジや、ケーブル類、オプション類、消耗品などを加えるともう少しかかっていますが、「既存のデジタルオーディオ環境があって、ここにプラス8万円でこの効果が得られます。」ということです。

参考:デジタル機器とアナログとの共用機器

DAC:ifiオーディオ ZEN-DAC

オーディオ切替スイッチ:FX-AUDIO- LS-02J

パワーアンプ:FOSTEX AP20d

パッシブスピーカー:DALI SPECTOR2

サブウーファー:YAMAHA YST-FSW050