ギターは実在物なので、対称性などもともとないのだという気付き

ギターのチューニングをいろいろ変えてみるのが好きだ。色々試した中で、なんで今のチューニングを気に入っているか、改めて言語化してみる。

自分の性格を考えるときに、ギターを小学五年生から30年弱続けているし、ブランクはあれど小学生からプログラミングに興味があってやっていたり、大枠で言えばあまり飽きっぽいということはないのかもしれない。けれど、ある程度以上細部になるとあれこれ手を替え品を替えていってしまう性格だなあと思う。むしろそれによって、大枠ではひとつのことを続けてこられた、という気もする。

ギターのチューニングに関しては、

  • レギュラーチューニング(EADGBE)

  • 4thチューニング(EADGCF)

  • 7弦レギュラーチューニング(BEADGBE)

  • 7弦4thチューニング(BEADGCF)

  • New Standard Tuning(CGDAEG)

  • 7弦New Standard Tuning(FCGDAEG)

  • CGDGBE

  • 7弦FCGDGBE

  • CGDGAD *現行

  • 7弦FCGDGAD *現行

くらいの変遷を辿ってきた。

この中で、4thチューニングとNew Standard Tuningは、レギュラーより「対称性」が高い。
ここでいう対称性とは、同一フレットの位置で各弦の音程がどのくらい一致しているか、ということ。
例えば、レギュラーチューニングで隣接弦の音程は

  • 完全4度:4つ(6弦E-5弦A、5弦A-4弦D、4弦D-3弦G、2弦B-1弦E)

  • 長3度:1つ(3弦G-2弦B)

一つ飛ばしだと

  • 短7度:2つ(6弦E-4弦D、5弦A-3弦G)

  • 長6度:2つ(4弦D-2弦B、3弦G-1弦E)

に対して、4thチューニングだと隣接で完全4度が5つ、一つ飛ばしで短7度4つ。New Standard Tuningだと隣接で完全5度が4つ(短3度が1つ)、一つ飛ばしで長9度3つ(短7度1つ)。

このように、対称性が高いと、例えばアドリブで演奏する際にメリットがありそうな感じがある。つまり、いま左手人差し指で弾いたある音から次の音で5度上に飛びたい、というときに、プラスマイナス何フレット・プラスマイナス何弦にその音があるのか?ということが指板上のどこであっても同じである可能性が高く、脳のリソースを使わなくて良さそうな感じがする。

Tom Quayleなんかは、確か自分のYouTubeでも、対称性を理由に「4thチューニングはいいよー」と言っていたはず。

私も同様の観点でこのような対称性の高いチューニングをしばらく使っていたが、取り組んでいるうちに、この対称性は単音でメロディを弾く際にはある程度有効だが、複音・和音では逆にデメリットもあるかなと思い始めた。

ギターは、特に複音・和音を弾くときには「左手の指が届くか・きれいな音で押弦できるか」という問題が重要になってくる。
人間の左手の構造と、ギターの各弦の位置(指板の裏側の親指との距離や、ネックの芯からの距離)という物理的な要素によって、例えば同じ(C,E)のような複音でも押さえやすさがまったく変わってくる。チューニングの構造だけで見たら対称性が高くても実際の演奏感覚としては対称性が低い、ということが起こりうる。

自分で歌を歌いながら伴奏をギターでやるようになってきたときに、この問題が自分にとっては大きくなってきて、「対称性など幻想だ」というくらいの気持ちになってきた。
ジャズギターの教本などでは「同じフレーズを複数ポジションで弾けるように」というような教えがよく登場するが、むしろこのポジションで弾きたい、このポジションでないと弾けない、ということこそが、楽器やチューニングの個性であり味であり、面白味ではないのかと。

この観点から言うと、なんなら各弦の音程があまり統一されていない方が、ある音域内で生成できる複音・和音のバリエーションが生まれて、優れたチューニングと考えることもできる。

そんなわけで今は7弦FCGDGADに取り組んでいる。DADGADという、なんとなくあまり使ってこなかったチューニングをもとにしたセッティングだが、今はこれがとてもしっくり来ている。
隣接弦でいうと完全5度(3つ)、完全4度(2つ)、長2度(1つ)の3種登場する。「FCGD・A・」と3弦1弦を無視するとここは全部完全5度になっているし、「・・・・G・D」の無視した3弦1弦も完全5度。
3弦Gと2弦Aの長2度は、ちょうどいいくらいの中高域にクラスター(密集したハーモニー)を作りやすい。
完全4度、完全5度、長2度(9度)は、Circle of 5thで考えれば同じまたは近い。

今のところ、こういった特徴から、ある程度癖がありつつ、色々な場面に対応しやすく、かつ私の好きなサウンドを作りやすいのがこのチューニングだと感じている。
*ちなみにJoe Diorio(5rthの音程を基盤にした独特なハーモニー、メロディラインが素敵)やSteve Vai(5thの堆積やそこから出来るリディアンスケールの使用が、フレーズメイクの特徴の一つになっている)、Jacob Collier(Super-Utlra-Hyper-Maga-Meta-Lydian)、といった面々の音楽が大大大好きな私の個人的な趣向がかなり反映されている。


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