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分数コード

ギターは、ピアノなどの鍵盤楽器よりも、和音の演奏に制限が多い。
最大同時発音数にも制限があるし、両手タッピングとかしない限り音域も2オクターブくらいが限界。クラスターや密集和音も作りにくい。
それでも、ストレートな三和音やセブンスコードよりも複雑な響きを使いたい。そんなときに活躍するツールのひとつが分数コードだ。

私は分数コード大好きで、多用するほうだ。新曲でもゴリゴリ使っている。というか、新曲ですごく効果的に使えた気がする!という自慢のためにこの記事を書いていると言っても良い。

分数コードというのはC / F、とかC on F、などと書き表されるもので、この場合「Cmajトライアドが上部で鳴っていて、ベース音はF」という意味。分子はコード表記、分母はベースの単音を表している。
これと似たものにアッパーストラクチャートライアド(UST)というものがある。USTの場合はC / Fと表記した場合、「Fmajトライアドの上にCmajトライアドを乗っける」という意味。
逆に言うと、USTの下部(この例ではFmajトライアド)の、ルート以外を省略してしまったのが分数コードという捉え方もできる。

USTにおけるC / Fの構成音を書き出すと、下から
f,a,c,(c),e,g
となり、Fmaj9のコードと同じだと分かる。
一方で分数コードのC / Fの構成音は、下から
f,c,e,g
となり、三度の音がないのでメジャーかマイナーか確定しない。Fmaj9とも、FmM9ともとれる。
つまり、
・響きの土台部分の音を省略することで、ギターでも表現しやすい音数に減らして、
・かつ上声部とルート音とのコントラストで響きの複雑さは保持される。
・抽象的、あいまいな響きなので、複数のシチュエーションで同じ分数コードが使えたりもする。
この3点が分数コードのいいところである。

私の新曲では、Aメロでこんなコード進行を使った。
E A/E F/E D#/E F#/E Am/E
キーはEメジャー。ずっとベース音はEのまま。上部のトライアドが移り変わる。
最初の2つだけがダイアトニックで、3つめ以降はモードチェンジしている。
また、それぞれのオンコードは機能和声的な役割を担っていることもポイント。具体的には
E → Eアイオニアン、トニック。
A/E → Eアイオニアン、sus4またはサブドミナントな響き。
F/E → Eフリジアン。構成音がBオルタードスケールと殆ど同じなので、ドミナントっぽいニュアンス。
D#/E → Eディミニッシュスケール。トニックディミニッシュ。
F#/E → Eリディアン。トニック。
Am/E → Eエオリアンメジャーまたはハーモニックメジャー。サブドミナントマイナーな響き。

こういうパートと、ベースも動く普通の?コード進行のパートがあると、これまた対比が効いて良いのだ。

というわけで、本日1/31(水)に、ひさしぶりに新曲を配信リリースする。igarasimacoto名義にしてからは最初の曲。
「花火」というタイトル。ちょっと季節外れ感もあるけど、まあいいか。
ポップなようで地味でちょっとキモい、良い楽曲になったと思います。よければYouTubeやらSpotifyやらApple Musicで聴いてみてください。

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