讒文芝居

其の昔…って其の昔の話ばっかして居るが、
部屋にビン玉と謂う奴が物心附いたら在った。
結構喃デカさのガラスの玉に網の目の如く縄が縛って在る。
母親に尋いても「其れは浮き」と簡潔な答えし乎返って来ないが、
母親が納得しとるのだからと
納得した気に為って居たが、何で在ったの乎は謎だし、
面倒だから今更尋く気も無い。

或る家には御子様の身長位の天狗の面が茶の間の真正面の鴨居に
掛かって居た。
後、デカい亀も傍にに掛かって居た。
デカい異様なもんを掲げ勝ち喃御宅だった。
然かも全く生活の役に立たぬ潔さ。
卓袱台を囲んで飯を喰わせて貰ったのだが、
其処の御父さんもランニング・シャツにパンツ一丁で
其処の子と一緒に飯を喰った。まあ、落ち着かぬ。シュール過ぎる。
一言も発せ無かった。
劇団天井桟敷の如き心象風景。

ソウルDJの家に遊びに行った時は、四方の壁一面が棚で天井迄、
全部びっしりレコードだった。
此れがDJの普通だのだろう乎。
何乎、ジェラルミンの箱の様なもんをテーブルにし足りして居た。
後はターン・テーブルし乎物が無い。冷蔵庫もTVも無い。吉幾三も吃驚。

妙なもんが好きな海外旅行好きの女友達の家は、
全面的に部屋が真っ赤だった。
部屋を真っ赤に然れると、時間の進み方の感じ方が歪んで居た。
数分乎と想えば数十時間程経って居た。
「精神と時の部屋と乎云われる」と乎本人は云って居た。
何故乎、ジャマダハル(まあ、模造品だろう)
を印度から持って来たと見せて呉れ足り
土の味し乎せぬ希臘珈琲を御馳走に為った。