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讒文芝居

●最近の此のバンド弩豪い

■The Real Thing(ザ・リアル・シング)

君が特別な人間でなくていい。
君は世界を救うヒーローにも、駅を破壊する悪魔にもならなくていい。
ただ一粒砂が下りてくるように、力を貸して欲しいのだ。
(柞刈湯葉「横浜駅SF」)


(13)生前、親鸞聖人が「そなたは聖人の言うことを信じるか」
といわれたので「はい」と、「親鸞の言うことに違背しないか」
といわれたので、また「はい」と言ったところ、
「では、人を千人殺してみないか。そうすれば浄土に往生できる」
と重ねて問われた。
そこで自分(唯円)は「千人はおろか一人も殺せません」と答えたが、
聖人は次のように戒めた。どんなことも思う存分できるなら、
千人も殺せようし一人も殺せようが、逆に殺さないからといって
善意があるからとはかぎらない。
殺すまいと思って一人も千人も殺すこともあるはずだ。
われわれは、毒を消す薬があるからといって好んで毒を飲んではならないのである、と。

松岡正剛の千夜千冊 397夜『歎異抄』親鸞・唯円


「ソーナよ、どう思うか。もしあなたの琴の弦が張り過ぎたならば、
琴の音色は快く妙なる響きを発するだろうか?」
「いいえ、そうではありません、大徳(釈迦)よ」
「ソーナよ、どう思うか。もしあなたの琴の弦が緩すぎたならば、
琴の音色は快く妙なる響きを発するだろうか?」
「いいえ、そうではありません、大徳よ」
「ソーナよ、どう思うか。もしあなたの琴の弦が張りすぎず、
緩すぎもなく、丁度よい度合いを持っていたら、
琴の音色は快く妙なる響きを発するだろうか?」
「そのとおりです、大徳よ」
「ちょうど同じように、ソーナよ、行き過ぎた努力は高ぶりを招き、
少なすぎる努力は懈怠を招く。それゆえソーナよ、
あなたはちょうどよい努力を保ち、
感官にちょうど良いところを知り、そこに目標を得なさい」
( 吹田隆道 「ブッダとは誰か」)

 
焦げた手拭いを頬かむりした中年の女が二人、
ぼんやりと路傍に腰を下ろしていた。風が吹いて、
しょんぼりした二人に、白い砂塵を吐きかけた。そのとき、
女の一人がふと蒼空を仰いで
「ねえ……また、きっといいこともあるよ。……」
と、呟いたのが聞えた。
自分の心をその一瞬、電流のようなものが流れ過ぎた。
数十年の生活を一夜に失った女ではあるまいか。
子供でさえ炎に落して来た女ではあるまいか。
あの地獄のような阿鼻叫喚を十二時間前に聞いた女ではあるまいか。 

それでも彼女は生きている。また、きっと、いいことがあると、
もう信じようとしている。人間は生きてゆく。命の絶えるまで、
望みの灯を見つめている。……この細ぼそとした女の声は、
人間なるものの「人間の讃歌」であった。
(山田風太郎「戦中派不戦日記」)

やっぱり、モータウンの流れを汲んで居るの乎も知れない。
其の遍に最近入門した筆者には其んな在り来たりの感想し乎無い。
気合の這入った曲、というのは此の世に沢山在るだろうし、
「キラー・チューン」と謂うのも今は懐かしい「ミリオン・ヒット」した
と謂うグループも其の昔にはわんさか居る。

リアル・シングとは「本来の物」詰まり「本物」と謂う意味である。
随分と大きく出たもんだ。
UKのソウル・グループらしいが、寡聞にして知らんかった。
だって、渋谷のタワレコが推してたという安直な理由で
更に2枚組ベスト盤が、2000円しない安価と謂う理由で
買ったからだ。
「本物」と銘打つ物が其んな安価で中るも八卦中らぬも八卦。

果たして、本物乎如何乎は判らんが、恰度良い。
ソウル特有のベッタベタに暑苦しく、血沸き肉躍る感じも好いが
適度に冷えていて、控えめ、でも中途半端とは違う。
此の遍がUKなの乎喃?と、想うや否や

「日常の多幸感」に満ち満ちて居た。
丸で、衒いや厭味の無い、夢に迄見た
心から気の置けない家庭の晩御飯に招かれた乎の様な。
星野源さんの「Family Song」の様な温かさ。
アース・ウィンド・アンド・ファイアーとも違う宇宙的沸く沸く。
残酷や怨嗟、悲哀や悲愴で泣かせるのは、実は簡単だ。
だって、世の中に溢れ返って居るから。
もっと、感動的で劇的な音楽は、屹度もっと在るだろう。

けれど。

唯、貴方の優しさが怖かった。とは神田川だが、
怖い程の幸福過ぎて泣ける歌が在る。久久に慥かに聴いたのだ。
人目を憚る程に噎び泣いた。泣けるから良い歌とも限らない、

然し。

自分の心を其の一瞬、電流の様な物が流れ過ぎた……。

●You To Me Are Everything

●Can You Feel The Force

●Can't Get By Without You


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