讒文芝居

宵闇に紛れて短目の金髪以外は全身黒尽くめの、
耳当て帽に塹壕外套(トレンチ・コート)の
謎の女人と往き交い、

其の怪しき何処ぞの某国の諜報員乎、私立探偵も斯くやと謂う
急進古典主義的恰好宜しさに、直感的にすっかり遣られて仕舞って、
柄に無く、耳当て帽に塹壕外套を探して居る自分が居る。

真逆、己が麗若き女人の服装を真似ようとは……。
伝統的で在る趣だので照れは隠せるが。
然し、初めての心持ちにて、気も漫ろで在る。