【緊急投稿】若手研究者へ

将来を嘱望された若手研究者が自ら命を絶った。ご冥福をお祈り申し上げる。

学振最難関のSPDを勝ち取ったばかりでなく、日本学術振興会賞や日本学士院学術奨励賞を受賞するなど、超一流の研究者であったに違いない。そのような方が自ら命を絶たなくてはいけないほどに、日本の学術界は救いようがない破滅の道を進んでいるのだろうか。答えはわからない。

私は自らの経験のもと、専任ポストを手に入れる方法を記事にしてきた。私のように苦労する若手を1人でも減らしたいとの思いからだったが、私の至らなさ力のなさを申し訳なく思うばかりである。

しかし、彼女のように苦しんでいる若手研究者は他にもたくさんいるに違いない。そこで、今回はそのような人たちおよびこれから研究職を目指そうと思っている人たちに向けてメッセージを送りたい。

君の味方は、君を助けてはくれない

最も大事なことは、私たちが生きている世界の現実を知り受け入れることである。つまり学術界の現状をよく知り、そこを出発点にすることである。今、大学は問題しかない。非常勤雇止め、ポスドク問題OD問題にはじまり、大学の統廃合や大学の企業化・金儲け主義、学長ガバナンスという名の事実上の教授会の無力化、文科省のご都合主義、少子化に伴う入学者減=収入減など、数え上げればキリがない。

これらの問題に対して、声をあげて闘っている先生方は大勢いる。雇止め反対、ポスドク問題への過激な批判、大学金儲け主義への強烈な批判など、大学労働者層の待遇改善を求める運動は日に日に大きくなっている印象がある。○○大学のナントカ先生とか××大学のダレソレ教授など、大学の内部にいる専任教員が急先鋒となってメディアや各種紙面上で問題解決を訴え続けている。あたかも、彼らはポスドクや雇止めにあっている非常勤講師たちの「味方」のように思える。

しかし、間違いなく彼らは「君」を助けてはくれない。

試しにお願いしてみるといい。「先生、あなたのポストを私にください」と。

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