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東急線(改

先週の東急線の話ですが、こっちの方がなんか疾走感あるのでこっちも載せます。


この前、夜に都内で用事があり、帰宅するために23時過ぎの東横線で中目黒から横浜方面に向かっていた。

「えっ」

ふと顔を見上げて驚いた。

「なんだよ・・・新綱島って・・・」

慌てて電車を飛び降りる。電車の行き先表示を見る。

「えっ・・・?新横浜行き??」

不思議な夢の中にいるようだ。いや違う。そうだ。

この電車は最近できた、東急新横浜線に直通するやつだったのだ。

だから当然のように日吉を過ぎたら綱島ではなく新綱島駅についてしまう。

ふと周りを見る。ホームには、同じようにうなだれて立ち尽くす何人もの人の姿があった。

だってそれはそうだ。生まれてこの方、東横線の行き先なんて、一つしかないじゃないか。桜木町か、元町中華街だ。行き先なんか見なくたって、そのどちらかに行くに決まっている。

これからは違うのだ。これは異世界に行く電車なのかどうなのかを確かめてから乗らないといけない。人は失敗によって学んでいくものである。

とはいえそんな場合ではない。時間はもう24時近いじゃないか。本格的に家に帰れなくなってしまう。今来たのの反対側の、日吉に戻る上り電車はいつ来るんだ。いや、夜中だから全然来ない!これは、久々に終電に間に合わないのでは。

いや違う。まだ助かる。まだ助かる。Google調べによると、新綱島駅は本体の綱島駅と少ししか離れていないから、走っていけば綱島から横浜方面の最終に乗ることができる。

急いで踵を返し、誰もいない静かなエスカレータを改札に向け駆け上がる。初めて見る景色の改札を通り抜け、地上を目指す。しかし、これがまた昇っても昇っても一向に地上に着かない。そして誰もいない。無音。次から次にステージが変わり、また新たなエスカレータが現れる。これは本当に夢なんじゃないか。もがいてももがいても進まない悪夢だ。

無限城みたいな構造の駅からようやく脱出し、地上に出る。気分的には、HPぎりぎりでダンジョンから街へ生還したみたいな感じだ。

そして、決して焦ってなどいませんよという風で小走りに本綱島駅へ。確かに、ほんの京急鶴見とJR鶴見くらいの距離だ。幼少時から見慣れた綱島駅が見えてくる。助かった。

そして後で分かったことは、あのまま新綱島で降りずに終点の新横浜まで行けば、実は終電の横浜線で大して焦ることもなく横浜方面に帰って来れていたという事実である。驚いた。

これも幼い頃からのぼんやりとしたイメージ、「横浜線」の字面からくるイメージ、薄汚れた窓と緑の車体のイメージ、車窓からの田園風景のイメージ、なんか硬い椅子のイメージ、聞いたことのない秘境の山の中に行くイメージ、つまり絶対にもう横浜線の電車なんかこの時間あるわけがないと、頭から完全に思い込んでしまっていたわけである。

思い込みはよくない。本当によくない。

心を入れ替えて、次もし新綱島に行ってしまったら、慌てずに浜線に頼る選択肢のある人生を送ろうと思う。

※さらに後日、「東急の新横浜駅はとんでもなくJRと離れており、乗り換えはお勧めしない」との証言が多数寄せられました。となると思い込みのために横浜線に乗り換える選択肢が脳内から消え去っていたのは、むしろ天啓。

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