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横浜大洋ホエールズ

 小さい頃から横浜に住んでいるせいか、プロ野球といえばなんとなく横浜ベイスターズを応援している。
 といっても、年間何試合も見に行く、ずっとファンクラブに入っている、と言う訳でもない。小学校の頃からだから結構長く見ているけれど、その時によって結構熱心に毎試合結果を追って一喜一憂しているような時期もあれば、特にそれほど見ている訳ではないがまぁ勝てば嬉しい、と言うような時期もある。
 結構、でもそう言う人横浜市内の自分と同世代くらいの人って多いんじゃないかと思う。そんなに強くファンって言い切るほどでもないけれど、でもまぁ好き、みたいな。
 他の地方都市の球団、たとえば関西圏の阪神ファン、中京圏の中日ファン、広島の広島ファンや福岡のソフトバンクファンなんかは、もっとかなりその球団のことを熱狂的に推しているような印象があるが、横浜在住の横浜ファンってそれにに比べるとやや一歩引いているような印象がある。
 それには理由があって、単純にベイスターズがあんまり強くなかったからである。
 それが証拠に98年の優勝の時は、こんなにもベイスターズを好きな人がこの世にいたのか、と言うくらいの人の波が横浜スタジアムに押し寄せていた。しかし、ものの数年でまた暗黒時代に突入すると、またあっというまに人が離れていった。

 ベイスターズは、昔は大洋ホエールズという名前の球団だった。ぼくが野球を見るようになったのは本拠地が横浜スタジアムになった年で、その前の川崎球場時代のことは世代的にあまり見たことがない。
 逆に言うと、横浜スタジアムができた初年度から見続けていることになる。色々様変わりしたところもあるが、基本的なスタジアムの形状や特徴的な照明等の形がずっと変わらない。ネット裏から向こうに見えるYMCAの文字や旧横浜市役所も昔のままである。

 そして、その間約45年間、基本的にずっとあんまり強くない。
 強くないスポーツチームを好きになると、なんだか忍耐心がつくじゃないけれど、あんまり毎日の結果に一喜一憂しなくなる。だって、大概の場合負けているのだ。プロ野球の応援って基本的に優勝争いだと思うのだけれど、大洋はとにかくオールスターを開けてから優勝争いに食い込んだことがほぼないので、そんなに手に汗握って涙を流すような展開になること自体がないのだ。
 自分と同世代の横浜ファンの野球の見方が一歩メタ的な視点になるのも頷ける。そうでもないととても正気を保っていられない。

 ところがそんなベイスターズだが、2012年にDeNAに球団が移ってからはめくるめく球団努力によって一気に様相が変わり、あっという間に多くの熱狂的ファンを擁する人気球団になった。
 以前は、仕事帰りにちょっとナイター見て行くか、みたいなノリで球場に行けたが、今はまず無理である。当日にチケットなんてまず取れない。隔世の感である。
 なんと言っても、今は普通に強い。優勝こそしていないが、結構常連でAクラスだし、そこそこ終盤まで接戦を繰り広げるシーズンも多い。選手層も厚くて、魅力的な選手ばかりである。
 いまは人目を憚ってベイスターズが少し好き、と遠慮がちに言うような人はあまりいないのではないだろうか。みんな胸を張ってベイスターズファンだと言うに違いない。
 ほんとうに、あれほど変わらなかったものが、小さい頃からのあの風景が、地元の慣れ親しんだ球団の思い出が、こんなにも誇らしいものになるとは。
 なんだか泣けてくる。


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