daigomatsumoto0702

哲学、批評、詩学。 慶應義塾大学通信教育課程文学部1類哲学専攻

daigomatsumoto0702

哲学、批評、詩学。 慶應義塾大学通信教育課程文学部1類哲学専攻

マガジン

  • ー詩と形而上学ー

    創作している詩をまとめました。お気軽に御覧下さい。

最近の記事

炭酸水

現在地を 忘れてしまった夜に ノースダコタの 緯度を知った 干したままのシーツに 冷えた雨がこぼれたら アボカドが生えて それを前菜にした ステレオを流れる スローなロック ブラウン管の 白いノイズを ゼリーにして スプーンで掬ったら 観葉植物が 枯れてしまった 痺れながら 三十二階の 炭酸水の中 背泳ぎをする 淡いたましいの 二分の一のn乗 束の間の雲間に 垣間見て 夢をみることと 耳をふさぐこと 或いは、その両方を 器用にこなすことが必要で 曖昧さを回

    • 月と雨

      四等星は藍色の雲間の滲みとなって 三月の記憶は、双眼鏡のレンズに彩りを与える 「もうそろそろ、水をやらないと」 彼は緑色の詩集を観葉植物と呼んでいる 手際よくダイニングテーブルを片付けて ノートに書いたインクが乾くまでの束の間に 昔よく観た映画のアングルを思い出している それは、光と影の、一寸した交錯で 色彩を忘れる前の祖母の写真の背景のようで 褪せた新聞紙の写真の遺失物だった 雨脚は、五月の面影をレインコートに隠して はじいて、つたって、流れ落ちていく

      • 冷蔵庫と靴

        買ってきた靴を 仕舞う前に もう一度 値札を見る 押し入れに Tシャツを 軽くたたんで 片付ける なんでもない 五月は 換気扇を つけたままにして 僕たちは 何度でも 生まれ変わった 気分となって 同じような 営みを 同じように 繰り返す まるで 無かったようだ 最初から 無いのだろう 冷蔵庫のドアは 閉じたままでいた

        • 運命論

          運命論   ブラジルでの蝶の羽ばたきが テキサスで竜巻を起こしたので そっと、今 頁を閉じることで ふたたび 時折、蒼白く 田園から伸びた 一本の糸が 南アフリカの 貝殻の破片に 結ばれ 鞄に忍ばせた 前世紀の詩集 その背表紙から 微かに溶け出した ひと際、甘い 或る、メランコリー 眺めていた空色は、90年代のanthemのそれで 薄荷の薫り 換気扇が、憎らしく ケラケラと、回っている 人の絶望の 褪せた半色の鮮やかさも知らず あまりにも 平坦な季節に 立ち尽く

        マガジン

        • ー詩と形而上学ー
          39本

        記事

          過去詩②

          過去詩です。ココア共和国さんに初めて佳作になった時の詩です。今とはだいぶ作風が違いますね。最近は筆名をダイゴ・マツモトに統一しようかと思っています。覚えてもらいやすい気がしており…。どうなんでしょうね? メロウ / ダイゴ・マツモト 走りぬけた ピアノの 全力疾走 呼吸が くるしくても 言葉をさがす 月並みな 感傷を 鑑賞して さかさまの コードの 六連符を弾く 問いかけたら 駄目だよと ぼくたちは ちいさな頃から 教わって 世界は 大きくは 変わらない ただ ぼくたち

          過去詩

          過去の詩を整理していて、初めてココア共和国で傑作選に入選した詩がでてきたので、掲載しときます。コロナの第一波くらいのときに書いた詩です。 50ぱーせんと / ダイゴ・マツモト ぼくのすむまちは まいにちせんにん かんせんしている そのうち ぼくも かんせんするのだろう にゅーすをみると てのひらが じわっとするし せすじも ぞわっとする たぶんしんじゃう ひょっとしたら いきる たぶんしんじゃう ぼくにむけての てがみをかく それはしろい のーとに えんぴつを はしらせて

          ー詩と形而上学ーNo.44

          止まれ     波は、確かに線になっていた 消えかけた、道路の止まれに なぜそうなのかを、質問して そして、確かに止まっていた 着彩する前の水彩画の描きかけの白い部分が パースを意識する前に現前した不在の空間が 冬の空の水色を認識する前のブルーの直観が 未完成なまま完成していて、それを鑑賞した 親切な主旋律と交響楽 昨夜は、零下二度まで 冷えてしまったようで 雪の積もったピアノに 視線を交えて、会釈をする 都市の夜景の一部となった人々を思い出して 東部戦線の兵士の残

          ー詩と形而上学ーNo.44

          ー詩と形而上学ーNo.43

          傘を差す、ブルー この冬空の水色を 翻訳しようとして 誰も知らない 国のことばを探していた この色彩の、にじんだ輪郭を 透き通る、青い温度の余韻を 風に秘められた、果実の予感を 何処かの国では、何と 洗剤のプラスチックの容器から 剥がしてベランダで干したような青 3度の気温を、パレットに並べて 抽象的な、風景画にした ピンク色のレコードに 針を乗せる 回転し始めた音色と 旋回する旋律 リフレインを、反復させて 明後日の気配を眺めて 徒歩5分程の距離を 時間を掛けて歩

          ー詩と形而上学ーNo.43

          <ゆる募> 1)オンライン詩話会 →詩集や詩誌についての座談会 →投稿詩などの作品の事前相互論評 ※「現代詩手帖」·「ユリイカ」等の入選を目指して →詩誌の作成(年1回) ※当方、元デザイナーで制作環境有り みたいな会に、月1回参加してもいいよという方、いたらコメントください。

          <ゆる募> 1)オンライン詩話会 →詩集や詩誌についての座談会 →投稿詩などの作品の事前相互論評 ※「現代詩手帖」·「ユリイカ」等の入選を目指して →詩誌の作成(年1回) ※当方、元デザイナーで制作環境有り みたいな会に、月1回参加してもいいよという方、いたらコメントください。

          ー詩と形而上学ーNo.41

          GOOD MORNING      抑揚のない声を ミキサーにかけて ジュースにする 今日の、搾りたての かすれた声帯は おはようございますが うまく言えない 背景だと思ったら 風景画だった時のような 掴み損ねている 本日の、自分の居場所 頁を開いたら 繰り返される 契りのような、或る永遠性 ありのままの背中を現実として 只、生き延びていくだけでは 干乾びてしまうようなので 植物園の入場券の半券を 柔らかく握りしめながら じっと、待っていようと思う 花が咲く、その瞬間

          ー詩と形而上学ーNo.41

          ー詩と形而上学ーNo.39

          花束     百万通りの感傷が 癖になり ワイシャツの皺 裸になった襞 唇を通り越して 半音階の♯となった そのまなざしは 魂の真ん中の 脆弱性を攻撃した ウォーターハウスの 絵画の濃紺 裸体  飾ろうとして 極めて透明に 無邪気な無色になった なにもいらない 革の手帖も 氷点下の陽炎も たてがみをゆらした 燃える馬を見た 俄に透き通った 凡庸なわたしの血 たっぷりと、お飲み 一際、燃え盛った彼は 暫し、嘶き 蹄の跡を残して 薔薇のように散った 暁光の光束が いろあ

          ー詩と形而上学ーNo.39

          ー詩と形而上学ーNo.38

          SUMMER SWEARTER     半年前は サマーセーターで それに 理由を 探していた 通り抜ける うつろうことを 恐れない Ethicsで 田園を飛び立ち 都市に至る 一本の 糸のような 必然性で 一貫性が あるようだ どうやら あなたとの間に 枯れなかった 向日葵 朝六時の 初冬の気配 誰もいない それが似合う ひろがる 青い塵 首都圏から 遠く離れた 美しい街の 踏切に たたずんだ カーブミラーが 仄かに映す 触れられないもの 無邪気で 無色な 置

          ー詩と形而上学ーNo.38

          ー詩と形而上学ーNo.37

          或る、雨について   或る、雨について 語ろうとしている この白雨が 概念ではないことを知った わたしの傘は どこへいったのだろう バスに乗り 列車に乗り 飛行機に乗り 南半球の最果てまで 旅をしておくれ ボリビア辺りの 紺碧の その空を 観てくればよい 雨は、要りますか 宿命のような雨は ベランダで 金魚鉢が 鳴いている かつての 青い季節のままで 冷えて 蒸発して 乱反射して 交差点を照らす 誰も弾かない ピアノが 濡れたまま 水溜まりが 反響している

          ー詩と形而上学ーNo.37

          ー詩と形而上学ーNo.35

          脱意味のためのエチュード 躁 不完全 声を掬う 淫靡たる血気 が 陽転 エチュード 喉を伝う 清浄な性交 破裂 暗転した アラベスク 完全な 俄雨 排水溝が Xだった 未熟な こめかみ 結論は 湿り気のある 南アフリカ  まだだ 戦闘が始まる 水泳着 顎鬚とカブール まただ ニュースキャスター 無条件 沈黙の憤怒 破水 破壊 笑っちゃうような グレネード 笑っちゃうよねと 冷笑して ハブられた メランコリー 冷凍されて 凍り付く 砂漠 消しゴムで消そう 完全になるらしい

          ー詩と形而上学ーNo.35

          ー詩と形而上学ーNo.34

          完璧な青       帰り道に見つけた 完璧な青が 高い空の天辺に 一滴のインクで 孤独な絵を描く 雲は遥か眼下にあり 飛行機の主翼の 揚力も必要なく 酸素の限界を超えて 魂が昇っていく 無重力 飛んでいる気分 万有引力に逆らって ひとひらの羽根 羽ばたくまでもなく 無と銀色の宇宙の 中間地点にいる 二つ目の瞳に映った 白い鯨がよく見える それは空を泳いでいる 詩性は音階になり 名前のない祈りになり 包まれるように 心音のあわいに 青く揺れている 再び魂が昇ると

          ー詩と形而上学ーNo.34

          ー詩と形而上学ーNo.33

          この夏のこと 駅前から堤防に向かって歩いたその先にある カーブミラーに映った黄昏 その、ブルーモーメント 被写体として最適化された 青の導きに身を任せながら 嫋やかな名画を透かしたような 嘗ての時代の肖像画を眺めている 黄色のスケッチブックを一枚破いては 機械的に折り畳んでいる 飛行機として秋空に放したその紙は 螺旋としても楕円としても不十分なまま 何かを語りかけるようにして 東部戦線の戦場で散った兵士の 最後の優しさのような柔らかな着地をした それは花の冠を探すような手

          ー詩と形而上学ーNo.33