見出し画像

舞台アクセル!! 脚本ができるまで

『舞台アクセル‼︎』のストーリー脚本ができるまで。その1。

2023年8月23日から新宿サンモールスタジオではじまる『舞台アクセル‼︎』の脚本を書いた園田英樹です。

公演の成功を祈願するとともに、この脚本ができるまでのことを忘れないように書き残しておきたいと思います。

今回プロデューサーであり、演出も担当している齋藤康嘉さんからは、以前から何か一緒にやりましょうという話をしていました。

でもこういう話はなかなか具体的にはなりません。
エンジンを動かすためのきっかけが必要なんです。

ある日、齋藤さんから電話がありました。
「サンモールスタジオさんから8月に何かやらないかという話があったので、やろうと思うんですけど、脚本をお願いできますか」

エンジンがかかりました。

「8月には鈴鹿の8時間耐久レースがあるんです、それに合わせてハチタイをテーマにした芝居をやりたいんです」

齋藤さんの言葉には電話を通しても伝わる熱を帯びていました。

アクセルが開かれた瞬間です。

そこからは一気にスピードアップ。
僕は一気にストーリー案を書き上げて、脚本執筆にとりかかりました。



『舞台アクセル‼︎』のストーリー脚本ができるまで。その2。

バイクについてのストーリーを書こうとした時、僕の頭に浮かんだのは、小学校から中学の卒業まで友達だった横山君のことでした。

彼はヤンチャな子供で、運動能力も高く、僕をいろんな遊びに引っ張ってくれた少年でした。
僕に木登りのやり方や蛇の捕まえ方を教えてくれたのは彼でした。

バイクの乗り方も彼に教わりました。
もちろん免許を持っていない中学生です、バイクに乗ったのは誰もいなくなった中学の校庭でした。
(彼は中学の用務員さんの息子だったので、中学校に住んでいたのでした。今は用務員さんが学校に住んでいるとかは無くなってしまいましたね)

はじめて乗ったのは125C Cのスポーツタイプのバイクでした。

エンジンをかけて、クラッチをつなぐと、いきなりバイクは勢いよく走り始めました。
生まれて初めての加速に、僕は一瞬でパニックです。
目の前に学校の校舎がみるみる迫ってきます。
ぶつかる!
そう思った瞬間、僕はバランスを崩して転倒しました。
バイクと僕は校舎に激突するのを免れました。

それが僕のバイク初体験です。

恐怖と同時に猛烈な興奮を感じたことを覚えています。

その横山くんは、高校に入学してすぐに、バイクで農家のトラクターに後ろから突っ込んで、数十メートル空中を飛んだ後、アスファルトに全身を叩きつけられて亡くなってしまいました。

僕にとって身近な人が亡くなるのは、初めてでした。
事故現場を見たわけではなかったので、彼の死は現実とは思えませんでした。

しかしバイクのことを考えると、いつも横山くんの顔が浮かんできます。

今回のストーリーを考え始めた時にも、彼のことを思い出しました。
もう彼がこの現実世界からいなくなって半世紀も経っているというのに。

振り返ると僕の書く戯曲のほとんどに、亡くなった人が出てきます。
そういう人をテーマにしていると言っても過言ではありません。

彼らが僕に書けと言ってくるんです。



『舞台アクセル‼︎』のストーリー脚本ができるまで。その3。

舞台のストーリーを作るにあたって、いくつか入れなければならない要素をあげました。

○レースシーンを入れる。
○登場人物、それぞれに見せ場を作る。
○ラブストーリーの要素も入れる。
○主人公の成長ドラマを大事にする。

以上のことは、この脚本に必ず入れることにして、次は主人公のキャラクター設定を考えます。

主人公を作ることで、その周囲にいる人物たちが自然と見えてきます。

家族構成やライバルなどの設定は、割とすんなりと見えてきました。

そこで大きな流れを書いたあらすじを作って、それを演出の齋藤さんに見せました。

僕の脚本執筆と同時進行でプロデュース側はキャスティングを進めなければなりません。
どのような人物が出てくるのかがわかってないと、キャスティングもできません。
齋藤さんには、主人公とその周囲の人物の設定を書いたものを渡して、キャスティングの参考にしてもらうことにしました。
同時にプロデューサーとしての要望も聞きました。

「芝居の中にレースやライダーの安全を目指すという要素を入れてください」

レースは危険だからこそ、安全を目指すという姿勢を入れたいということでした。
僕にはなかった発想だったのですが、これはぜひ入れなければとも思いました。

しかしこれはハードルが高い。
それは感じました。

ストーリーの構成を考える時に、入れなければならない要素にこだわり過ぎると、展開が難しくなってしまうことが多々あるので、この要素に関しては書いていくうちに入れられるところがあったら入れようと決めました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?