列車
夜、列車を待つきみは震えていた。カンカン坊主が素通りで、先の方では海が続く、岬に面したこの通り、きみは見慣れていたこの風景をどうにか目に焼き付けようとした。ちょうどシャムキャッツの曲がイヤフォンから静かに流れていた。ディズニー映画のエンディングのような明るい未来を信じて桜の花びらをポッケに入れて軽く触れるとインチキな魔法を使える気がした。気がした、そう、気がした。きみは幼い。きみは何も知らない。きみはガキだ。
ちょうど、列車が来た。
きみはこの終電に乗って書きかけの小説を携えて、それを完成させるのだ。きみは、もう、春なんだ。
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