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ヒトに望ましい行動をとらせたいときの強化原理をまとめてみた

メディアやWebサービスの運営などを通して、ヒトの行動原理を理解しておくことは非常に重要かと思います。行動分析学に関する本で、『うまくやるための強化の原理』という本が面白かったので、要点をまとめます。

著者はもともと動物のトレーナーをしていた方で、トレーニングのプロです。

人間の行動の継続は、「好子」と「嫌子」で強化する

人、動物に望ましい行動をとってもらいたい場合、「好子」「嫌子」を駆使して行動を強化します。

「好子」とは、餌をもらえたり、ヒトに褒めてもらえたりするような、うれしい刺激のことを刺します。

「嫌子」とは、逆に餌を没収されたり、ヒトに否定されるような、いやな刺激のことを刺します。

ある行動を持続させるためには、行動後に「好子」を与えます。これを「報酬」と呼びます。逆に行動を止めたい場合には「嫌子」を与えます。これを「罰」と呼びます。

「好子」の与え方のコツ

「好子」の与え方のコツとしては、以下の通りです。

①行動が起こったらすぎにフィードバックを与える
②一回あたりの「好子」の量は減らす
③ランダム性を持たせた大当たりを作る(※「変動強化」についてはのちほど解説)

まず、①行動が起こったらすぐにフィードバックを与える。理由としては、どの行動が望ましい行動だったのか時間がたつとわかりにくくなってしまうからです。行動とフィードバックの反応速度を速めてあげることが大事なようです。

また、①一回当たりの「好子」の量を減らします。これは「好子」が大きくても小さくても、さほど大きな差を生まないからです。

③ランダム性を持たせた大当たりを作るに関しては、次章で紹介します。

変動強化(ランダム性を持たせた大当たり)をうまく使いこなす

「好子」「嫌子」の与えるタイミングや量によって、強化の方法が異なります。それをわかりやすく示したのが以下の図です。

①連続強化
②固定強化
③変動強化

①連続強化とは、相手が望ましい行動をとったら必ず「好子」を与える方法です。望ましい行動が継続的に生まれていないような状態では効果を発揮しますが、一定期間連続強化が行われ続けると、強化が弱まります。

②固定強化とは、ある行動が行われてた時に一定のタイミングで、「好子」「嫌子」を与える方法です。例えば、会社員の給料みたいなものが固定強化に当たります。

③変動強化とは、ある行動が行われたときにランダムなタイミングで「好子」が与えられる方法です。

いつ「好子」が与えられるかわからないので、与えられるまでの行動が持続します。その結果、望ましい行動形成が長くなります。一方で、その「好子」が与えられる前に行動がストップしてしまう可能性もあります。

本の中では、「変動強化」がもっともパワフルだと書かれていましたが、思い当たる事例を並べておきます。

①DVを受けている女性:普段は殴られているが、たまに見せる優しい姿(大当たり)が出てくるのを期待して、「一緒にいる」という行動を継続する
ソシャゲのガチャ:普段は外れているが、たまに大当たりが出ることを期待して、「ガチャを回す」という行動を継続する

望ましい行動形成(シェイピング)のコツ

特定の行動を習慣的にとってもらいたい場合のコツです。

①十分の数の強化が得られるように、基準を少しずつ上げる
②一時に一つのことだけを訓練する
③基準を上げる前に現在の段階の行動を変動強化で強化する
④新しい基準を導入するときには古い基準を一時的に緩める
⑤相手を絶えず観察せよ
⑥一つの行動は一人のトレーナーが教える
⑦一つのシェイピング手続きをやっていて結果が出ないときは別の方法を試す
⑧訓練をむやみに中断しない
⑨一度できた行動ができなくなったら前の基準に戻る
⑩一回の訓練は調子が良いときに辞める

辞めてほしい行動を辞めさせる方法

辞めさせる方法まとめです。

①抹殺法
②嫌子法
③消去法
④対立行動法
⑤合図法
⑥他行動法
⑦動機法

①抹殺法

①抹殺法は、ヒトの行動を根本的に変えるというよりは、それが物理的に起こせないようにする方法です。

例えば、犯罪者に犯罪を起こさせないためには、

・刑務所への隔離
・死刑

などの行動をとることができます。

ほかのあらゆる方法で解決することが非常に困難な場合、最後の手段として効果を発揮します。

嫌子

嫌子法は、望ましくない行動に対して、嫌子を与える方法です。具体的には、

・万引きを繰り返す少年に「警察に突き出す」と脅す
・毎日不機嫌な夫に「むかつくからやめて」と不平を言う
・通学路で下半身を露出するおじさんを前に「きゃー」と叫ぶ

などがあります。しかしこの本では、嫌子法はあまり推奨していません。理由としては、以下3点です。

①嫌子そのものが相手に好子として作用する場合があるから
②嫌子そのものが繰り返されると効果が弱まるから
嫌子は利用者自体の自己顕示に使われてしまうことがあるから

例えば、

万引き犯なら「警察につきだされる可能性があるから逆にハラハラする!」みたいな好子として働いてしまったり、痴漢者だったら「女性の叫び声に興奮する」みたいな人もいるので、嫌子は逆効果になりがちです。

また、「やめなさい!って何度も言っているのに何でわからないの?」という悩みを持つ全国のお母ちゃんが証明しているように、嫌子自体の効果は持続性がありません。

また、言っている自分自身が偉いみたいな感覚にもなりやすいのが嫌子のネガティブポイントです。言っている本人が満足してしまうことがあり、効果がない場合があります。

※ただし、「普段全く嫌子を利用しない人が、1-2回使う嫌子」は有効なようです。普段めっちゃ優しい人が怒るみたいな。

③消去法

消去法は、行動に対する「好子」「嫌子」を与えないことにより、行動をストップさせる方法です。

例えば、愚痴を言ってくるのをやめさせたい場合は、「好子」を与える(愚痴を聞きたいという)とその行動が持続しますし、「嫌子」を与えても(私に愚痴らないでと怒る)場合でも効果が薄い場合があります。

そういう場合は、「好子」「嫌子」を与えずに無視する(話だけ聞く)のが消去法になります。

例えば、お店で子どもがおなかが減って泣き止まないときに、ご飯を食べさせると「泣く」という行動が強化されてしまいますし、逆に怒っても泣き止まない場合があります。そういう場合は無視することによって、「泣いても何も起こらない」という学習させるのが消去法です。

ただし、その行動が自動的に「好子」を与えている場合には効果がありません。例えば、「勤務中にさぼる」みたいな行為は無視していても自動的にリラックスできる「好子」を与えてしまうので、効果がありません。

④対立行動法

対立行動法は、「好子」によりある行動を起こし、その行動が行われるときに、同時並行して望ましくない行動を起こさないようにする方法です。

例えば、電車で泣く子どもにスマホを与えると、「泣く」という行為を「スマホで遊ぶ」という別の行動を同時に起こすことで「泣く」という行動をストップするのが対立行動法です。

⑤合図法

合図法は、望ましくない行動を特定のタイミングで起こさせることによって、望ましくない行動をコントロールすることができる方法です。

例えば、旅行中車で興奮して大騒ぎする子どもを静かにさせたい場合、一度車をストップして、「今から20分間だけみんなで大騒ぎしよう!それからあとは静かにしようね!」と言い、20分間騒ぎ終わったら子どもが静かになるという事例をこの本では紹介しています。

⑥他行動法

他行動法は正直④対立行動法とあまり変わらない気がしたので省略。

⑦動機法

動機法は、ある行動をとる場合の根本的な欲求を解決する方法です。

例えば、お店で子どもがおなかをすかして泣いてしまう場合は、お店に入る前に簡単なおやつを買ってあげたりします。

他にも例えば、金に困って泥棒を起こさせないようにするためには、生活保護を導入することで泥棒を起こりにくくします。

最後に

いろいろとこの辺の行動原理を使うと、マーケ施策、定着施策でも使えそうですね。

・SNSで指名キーワードで投稿→初期は連続強化でほぼ100%リツイート
・SNSで指名キーワードで投稿→投稿が増えてきたら変動強化でリツイート
・ログインボーナス:毎日ログインするとポイントがもらえる連続強化
・ログインボーナス:3日以上たって毎日ログインすると変動強化でたまに大当たりを作る

いろいろとサービスのUIを見ながら、「これはどういう強化なのか」みたいな分類をしてみるのも面白いかもしれません。

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