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僕が国家公務員を辞めて「成年後見」分野に飛び込む理由

はじめまして。加藤大貴といいます。

7年5ヶ月勤めた裁判所を2019年3月末日付けで退職します。
現在2週間の有給を消化中です。

IT業界を中心に退職エントリーを書く文化があることは知っていましたが、
国家公務員(裁判所書記官)として定年まで働くつもりでしたので、自分とは関係の無い世界の話のように思っていました。

ただ、思うところがあって転職&起業をすることになったため、せっかくの機会なので、現時点の思いを整理するために私も書き残そうと思います。

司法試験の挫折と、裁判所に拾ってもらったこと

ロースクールを卒業した後、3回ほど司法試験落ちてみたら、あっという間に30歳が目前に迫っていました。

大学の友人達は既に立派な社会人8年生になっており連絡を取りづらく、母親にも当時の彼女(今の嫁)にも不甲斐ないと泣かれ、「いやぁ…俺も泣きてぇよ…」と絶望しておりました。

そんな折、司法試験浪人仲間から、
「国家公務員はほとんど年齢制限に引っ掛かるけど、裁判所事務官は29歳まで受験資格あるよ~」
との情報が。ワラをもすがる思いで受験してみたら裁判所に拾って頂けました。ありがたやー!

裁判所事務官・書記官ってなにしてんの?

実は、裁判所って「裁判官」だけが働いているわけではありません。
知っていましたか?私はロースクールを卒業するまで知りませんでした(笑)

裁判所には裁判官以外にも、「裁判所事務官」と、内部試験合格後に任命される「裁判所書記官」がおり、裁判の運営やバックヤード(総務等)を支えています。

私は裁判部(民事部)に在籍していましたが、例えば
・訴状の審査
・調書作成
・判決原稿のチェック
等を行っていました。そうそう、テレビでみかける裁判官の前に座ってる黒い服のあれ。あれも裁判所書記官です。

ペアになって働いている裁判官と相談し、事件の進行や段取りの計画をたて、それが上手くハマって早期に紛争解決ができたりすると「くぅ!よっしゃぁ!」などと、叫びたくなる爽快感。大きな充実感が得られたものです。

また、つい先日までは、差押えの業務なんてものをしていました。家を差押えして売ったりなんかしているは税務署だけじゃないんです。

なぜ辞めるの?

尊敬できる裁判官、育児にも理解がある優しい上司、真面目かつ面白い同僚(世間のイメージとは違う人も多い!)たちに囲まれ、私は毎日楽しく仕事をしておりました。

内部試験を経て3年目に裁判所書記官となってからは、専業主婦と子供2人を養えるだけの給料も頂いており、正直職場に何ら不満はありませんでした。

しかし、3年ほど前、高齢者の福祉に興味を持つきっかけとなる個人的な出来事があり、高齢者などが利用する「後見」の業務がある家庭裁判所への異動希望を出したり、裁判所職員有志による成年後見人に関する勉強会に参加する中で、いつか「高齢者とその家族が安心して暮らせる社会を創る」手伝いができればなぁ~、という思いが強くなってきました。
(ここらへんは書き出すと長くなるので、興味がある人はご連絡下さい。)

そんな中、平成30年6月に「国家公務員にもNPOで兼業することを認める」という衝撃の政府指針が発表されました。
(参考)http://retz.seesaa.net/article/460000647.html
「やった!公務員も兼業OK?!いよいよ夢を実現させられる!」と私は考え、東京大学の市民後見人養成講座を受講する等、さらに本気になって「成年後見」について学びました。

そして、今年の2月に上記の養成講座を修了するに併せて、お誘いがあったNPOや社会福祉協議会で兼業する道を探ったのですが…。結局、様々な事情からこの道は叶いませんでした。
(ここらへんも長くなりそうなので、リクエストがあれば別に書きます。)

期待していた道が途絶え、数ヶ月間は悩みに悩み、「高齢者の福祉に関わる」という夢を一旦は捨てようかとも思いました。
しかし膨らみきっていた思いを簡単には諦めきれず、私は裁判所を飛び出して活動する決意をしたのです。

これから何するの?

一言で言えば「成年後見制度」を皆さんにもっと知ってもらい、
「認知症等で判断能力が不十分な人を地域社会が支える仕組みづくり」を行いたいと考えています。

これまでのように興味のある人間だけが裁判所内部の勉強会に参加するだけでは、成年後見制度の利用低迷の現状を打破できません。
皆さんもあんまり「成年後見制度」を「自分ゴト」として考えたことってありませんよね。
私は、行政・司法・民間を巻き込んだ新しい取り組みが必要だと感じています。いわゆるリノベーション的な。

ただ、私一人で上記の取り組みを実現させるのは不可能であるため、まずは4月1日から、品川区社会福祉協議会の成年後見センター(日本一の後見実施団体と名高い)の職員として働くなかで力を磨きます。
併せて、NPOの役員として、私が居住する埼玉県戸田市を中心に成年後見の広報活動をスタートしたいと思います。

★5月9日の成年後見チャリティー落語会&勉強会のご案内はこちら↓
https://shimin-koken.com/archives/392

最後に

突然の退職報告にも関わらず、温かい言葉で裁判所を送り出してくれた上司・同僚の皆様。
いつも元気と笑顔をくれる5歳の長男と2歳の長女。
そして何より、転職と起業を受け入れてくれた妻へ。

本当に、本当に感謝しています。

単身バンコクへの取材に向かう機上から
加藤大貴

おまけ

辞める前に人事課に退職金の概算額を聞いてみました。

「7年5ヶ月もご奉公したから、200万円~300万円くらいかな?」
と予想してましたが、

「ざっくり100万円くらいで~す」とのご回答。

意外と少ない(涙)

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