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続・最近のロボットはつまらない。

最近、こんな記事がBloombergから出された。

▼ソフトバンクの「ペッパー」、孫社長のロボットの夢実現に道は険し
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-28/OFLQU06JIJUS01

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記事内容の真偽については元・中の人としての守秘義務とかいろいろあるので差し控えるが、僕が個人的に腹が立ったのはこのあたりだ。

「ソフトバンクは2014年に発表後、積極的にマーケティングしてきた。接客や受付業務、翻訳などの仕事がこなせるという触れ込みだった。」

「当社のオフィスビルにはいまペッパーが何台かあるが、人が集まっているところは見ない。本質的にヒト型をしたiPadだ。」

はっきり言うが、これは違う。

Pepperは接客ロボットでも、受付ロボットでも、翻訳ロボットでもない。ましてやヒト型をしたiPadでもない。

Pepperは人間の持つ素晴らしいアイデアやクリエイティビティをヒューマノイドというデバイス上で自由に表現することを容易にした革新的なプラットフォームだ。パソコンやスマホ同様、基本的にその使い方は購入者に委ねられている。アプリケーションの開発だって簡単だ。だから、接客をさせることも、受付をさせることも、外国人観光客相手に通訳をさせることも、あなたが望めば、もちろんできる。でもね、それによって生まれるのは"あなた好みのPepper"であって、それをPepperだとひとくくりに言ってもらっちゃ困る。当たり前のことだけど、あなたがつまらない人間で、つまらないアイデアをPepperにプログラムすれば、当然ながらつまらないロボットができあがるんだよ。結果としてそれがヒト型をしたiPadにすぎないのなら、あなたはこの革新的なデバイスをヒト型iPad程度にしか使いこなせない、クリエイティブのかけらもない残念な人間だという証明にすぎない。超高性能PCをネットサーフィン程度にしか使いこなせないのと、本質的には同じことなんだ。

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ただかわいそうなことに、そういう残念なロボットが街ナカでよく見かけられるようになってしまった。商用活用しようと、みんなこぞってPepperを買っているのだから当然だ。ロボットなんだから、みんな珍しくて寄ってくるでしょ? ロボットってだけでおもしろいから、人もロボットの宣伝トークを聞いてくれるでしょ? そういう安易な考えが透けて見える。

またしてもはっきり言うが、そんなわけない。

人はそんなに簡単に心を動かされたりはしないし、ましてや具体的な行動を引き起こされたりはしない。だから企業の商品企画担当やマーケター、広告業界の人たちは必死に頭を悩まして、どうやったら商品やサービスに興味を持ってもらえるか、買って使ってもらえるかを日夜考えてるわけじゃないか。確かに今はまだ、ヒューマノイドロボットそのものに希少価値があるから、その物珍しさが多少は通用する部分があるかもしれない。でもこれが3年後、5年後になったらどうだろう。例えばテレビも、登場当初は誰もがこぞって番組を見ていた。番組の内容は二の次で、とにかくテレビという革新的な機械で映像を見ることが嬉しかった。しかし、テレビ離れが叫ばれる今となっては、視聴者が見たくなるようなおもしろい番組作りを目指して、テレビ局各局が必死に趣向を凝らしている。モノがコモディティー化し、差別化要素がなくなる中、広告屋さんが必死にアイデア探しに奔走し、人の行動を誘発するようなおもしろいCMやプロモーションを作り出している。ロボットも同じだよ。

僕は街にあふれるつまらないロボットを見て、「あー、Pepperってつまんねぇな」と思われることに腹が立っていた。アイデア次第でいくらでもおもしろくなる未開のプラットフォームなのに、それが伝わっていないことに憤りを感じていた。

だから、この記事を書いた。

▼最近のロボットはつまらない。
https://note.mu/daikikanayama/n/n36e70e1b5671

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ありがたいことに記事のシェアが1,000件を超えるなど、著名人でもなければライターやブロガーでもない一個人が溢れんばかりの憤りのみを原動力に書き散らかした乱文にしては、反響はなかなかのものだった。全然関係のないイベントなんかに参加したときに「あ〜、あのコミュ障の人ですよね! 記事読みました!」と声をかけられたりもした。(正確に言うと、コミュ障の人ではなくてコミュ障ペッパーを作った人、なんだけどなぁ…と心の中で思いつつ。)

Pepperの登場以降、ロボットは過去最大のブームを迎え、いろんな人や企業が、ロボットをマーケティングや人件費削減など、何かしらの企業活動に活用したいと言っている。それ自体は大変素晴らしいことである。しかし、そういう人たちの中には、「ロボット」というバズワードによって見事なまでに思考停止に陥ってしまっている人も少なくない。

例えば、「おもてなしロボットを作りたい」などという話を最近耳にしたが、これだってそうだ。本来「おもてなし」というのは、「来訪者に心ゆくまで気持ちよく楽しんでもらいたい」という目的あっての「手段」にすぎない。そんな本来「手段」であるはずのおもてなしが、いつの間にか「おもてなしロボットを作る」と目的化してしまっているのである。冷静に考えてみてほしい。人がこれまでしていたようなことをロボットに代替させて、ロボットに挨拶されたり、案内されたりすることが「おもてなし」だと感じるだろうか? そこに「おもてなし」の本質があるだろうか? ロボットを活用したいのであれば、考えるべきは「おもてなしロボットを作ること」ではなく、「来訪者が心ゆくまで気持ちよく楽しめるようなロボットを活用したサービス」なのではないだろうか? この的を射て外国人相手に大繁盛している新宿歌舞伎町のロボットレストランのほうが、よっぽどマシだ。

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先の記事では軽い読み心地にこだわるために、こういう裏側にあった僕の思いなどは極力省いたため、本心の部分を伝えられずじまいになってしまっていた。もう少し丁寧に、この記事に少し書いたようなその背景を伝えられる機会があればと思っていたところ、コミュ障ペッパー開発に関するトークイベントに登壇してもらえないかというお声がけをいただいた。

▼Pepper 2016年ハッカソン総おさらい!Mizuho.hack / BEAMS HACKATHON 作品発表展示会
https://pepper.doorkeeper.jp/events/53552

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嬉しいことに申し込み多数のようで、すでにキャンセル待ち状態になってしまっているようだが、申し込みがよほど多い場合は事務局もいろいろ検討してくれるそうなので、興味のある方はぜひポチっていただければと思う。

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コミュ障ペッパーの記事については、「実物に会ってみたい!」「体験してみたい!」「BEAMSに設置されるのはいつ?」「街にいるペッパーは触れ合いたいと思わないけど、このペッパーは触れ合ってみたい」などと嬉しい反響を多数いただきながらも、なかなかそういった機会を用意できていなかった。しかし今回、おそらくハッカソン後初となるコミュ障ペッパーのデモンストレーションも実施する予定だ。チームメンバーで技術面のリーダーをしていただいた同じく元・中の人の河田さんもお越しになり、主に足回りのレーザーセンサー活用など、コミュ障ペッパーの技術的工夫点もお話いただけるそうなので、記事を読んで体験してみたかった人や技術的な面で興味のあるエンジニアの方も、ぜひお越しいただければと思う。

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長々とした告知になってしまったが、当日はつもりつもった鬱憤を吐き散らかしてやろうと思いますので、ツバがかかっても構わない服装でお越しくださいませ。一緒につまらないロボット撲滅運動をしていきましょう笑


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