『この世界の片隅に』については筆が進まないのに『逃げるは恥だが役に立つ』のことはどんどん書ける。

なんだろう。星野源だからか。

昨日放送された第10話は素晴らしかった。これまでこの作品は津崎の童貞的精神を転倒させてその価値を抽出してきた。契約結婚が成り立ったのは津崎の合理的思考のおかげだし、今回もあったように恋愛の不得手さを「かわいい」に昇華していた。

今回はその問題にちゃんと向き合っていた。童貞を喪失した途端に問題が表出するのだから、童貞精神とはかくもタチが悪いのだ。津崎がイケメンの家の家事代行を辞めてほしいという場面。みくりからすれば急に金が必要になっただけだったので自然に受け入れられていたが、みくりの事情を知らなかった津崎の視点で考えると、恋人になった途端に囲い込ませろと言っているのと同じだ。自分の不安を消すために仕事を辞めろってんだから、相当やばい。

とどめは最後のシーン。監督か脚本家か原作かわからないけれど、これを描いたことだけで花丸を付けたい。自分が傷つきたくないあまり人を傷つけないよう避けてきた津崎の帰結は、他人の感情が理解できないという残酷な現実だった。これまで苦々しく見てきた津崎の行動だったが、初めて胸に刺さった。津崎をハグしたくなった。だめなんだよ、それは……。

「仕事としての主婦業の価値」なんて話はどっか行ったのかと思ってたら、まさかそれを最も支えていた津崎に否定させるとは。最終話を前にして、ようやく物語が動き出した。それは星野源世界の綻びを意味する。

とはいえ綻びは綻び。崩壊ではない。はてな匿名ダイアリーだったら500ブクマくらい付きそうなエピソードだけど、どうせだれも津崎サイテーとか言ってないんだろ。そもそも愁嘆場なんてだれも期待していないし、すぐに補修されてハッピーエンドだ。そうなんだろ。

・ドラマの『逃げるは恥だが役に立つ』を7話まで見た。
・『逃げ恥』の8話を見た。

・もう物語なんて誰も欲していない。『逃げ恥』9話


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大熊信

上野から浅草通り無限遠

大熊信(だいくましん)。東東京在住の編集者、ライター。たまに写真。cakesやnoteをやってるピースオブケイクという会社にいます。最近聞いた一番面白い話は「"坊主憎けりゃ袈裟まで憎い"の対義語は"シスターのことが好きなので下着をください"」です。
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