『LA LA LAND』を見てない人は読まないほうがいい感想(ネタバレあり)

年に1、2本、見なくても名作だってわかってしまう映画ってのがある。監督の信頼度や映画で扱ってるテーマ、試写で見た人たちの感想、予告編からにじみ出る空気、あとは洋画だったら国を超えて伝わってくる興奮だったりとか。最近だと『この世界の片隅に』がそうだった。そして見たらちゃんと生涯で5本の指に入る傑作だった。

『LA LA LAND』はそれを予感させた。条件のほとんどを満たしてた。それなのにこのビッグウェーブに乗れなかった。なんで乗れなかったのかを、他の人たちの批評とかを一切見ないで書いておこうと思う。このあと誰かの映画評読んで、全然理解できてなかったって恥かくのも覚悟してる。

前提として、凄くいい映画だと思った。ストーリーはベタだしご都合主義だし青臭い。びっくりするような展開や、深いテーマ設定みたいなものは一つもない。でも、要所要所で挟まれるミュージカルシーンが秀逸で、登場人物の内面がわかりやすく表現されるし、少し強引な話運びも違和感なく進められる。ミュージカルのおかげでベタさもご都合展開も青臭さも寓話的に見えて説得力が出てくる。それだけで映画としてとても魅力的に感じられた。「がんばれば夢は叶う!」って映画だもんねえ。

セリフで全部説明しちゃうような映画を作るくらいなら、ミュージカルにしてもらったほうが全然面白いなって思った。つか多分この映画明日アカデミー作品賞取るから(※追記、作品賞は逃した)、今後ミュージカル取り入れる映画増えそう。ミュージカル映画ってそんなに詳しくないけど、こんなに便利なんだな。そういやミュージカルではないけど『(500)日のサマー』『プレシャス』も、妄想シーンの導入が素晴らしかった。

なんだけど、やっぱり青臭い。僕が三十代も後半に差し掛かって、現実的になりすぎてるのかもしれない。「夢は叶う!」なんてもう言えない。自分ができることできないことがわかってきて、それまでの経験を活かしてできる範囲のことを最大限やろう、って感じの年齢だもの。だって彼らの言ってることって、ユーチューバーを目指す若者とあんまり変わらない。ユーチューバーになりたい女と、アフィリエイトで食べたい男の色恋沙汰なんて見たいかなあ……そう考えたらちょっと面白そうに思えてきた。

そういえばエマ・ストーンの一人芝居の顛末、とりあえずニコ生やってみたけどコメント欄に「人いないねw」とか「勝間和代www」とか書かれて傷ついて即閉鎖、ってのと一緒だ。それをたまたまテレビ局の人が見ててオーディションに呼ばれるみたいな話だから、まあご都合展開。寓話だから別にいいんだけど、せめて一人芝居の演技は見せて欲しかった。

こういう青臭さって、僕がもうちょっと歳いけば諦めがついて楽しく見られるのかなあ。と思ったらライアン・ゴズリングの実年齢が僕と同い年で二重三重に衝撃を受けている。だからってあのピアニストの保守的で偏ったモダンジャズ崇拝は見ていて痛いし、バンドのことも他の音楽のことも舐めすぎ。マンガ『BECK』の商業ロック批判描写思い出したよ。そう、『BECK』くらいの青臭さだ。

それを差し引いてもいい映画だと思ってるんだけど、もう一個問題があって、見てない人には呪いになるかもしれないから、この先本当に読まないでほしい。この映画、全体のテーマとして使われる曲がある。

この曲どうなのかな……というのは感性の問題だから、すごくいいと思う人がいてもいい。なんだけど、『FAKE』で佐村河内守が作曲した曲に似てないか? 映画中そう思い始めたら、全部それに聞こえてきた。佐村河内が演奏しているって想像したら、もう面白くて面白くて。必ず重要なシーンで流れるのが致命的で、ライアン・ゴズリングに長髪が生えてきて、ジャズバーの照明が落ちる演出は強い光に弱いからかな、なんて思ったりして、もう無理。

ただ、Twitterで「ララランド 佐村河内」で検索しても一件もヒットしなかったから、世界でそう思ってるのは僕一人だろう。聞き返したら佐村河内の曲はそんなに似てないのかもしれない。もう一回映画見ないと聞けないから、確かめようもない。

あと、この映画がアカデミー賞総なめにしそうってのはちょっと示唆的な感じもする。まさに『雨に唄えば』のオマージュがあったけど、大統領が変わって国内での対立も深まっている閉塞的な状況で、「ミュージカル」とか「ジャズ」とか古き良きアメリカの自由な空気みたいなのを求めてるんじゃないか。確かに今年のアカデミー賞が『ノーカントリー』みたいな映画だったら目も当てられないね。いや、そのほうが皮肉がきいて面白いか。

でもそれって日本で言う『三丁目の夕日』が大ヒットってのと同じようなことなんじゃないかなあ。クオリティは『LA LA LAND』のほうがうん万倍高いけどさ。

最後にいいわけで繰り返すけど、ほんと、劇場で見るべきいい映画だとは思った。エマ・ストーンが最後にオーディションを受けるシーンあたりからエンディングぐらいまでは、本当に素晴らしくて普通に泣いた。涙もろい人間だけど、それを見るために劇場行っても損はないと思う。

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大熊信

上野から浅草通り無限遠

大熊信(だいくましん)。東東京在住の編集者、ライター。たまに写真。cakesやnoteをやってるピースオブケイクという会社にいます。最近聞いた一番面白い話は「"坊主憎けりゃ袈裟まで憎い"の対義語は"シスターのことが好きなので下着をください"」です。
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