新しい伝説の時代へ

2018年初頭、過疎化と先鋭化、分断化の進むオーディオ世界に新しい伝説となる機材が誕生した、個人メーカー「逢瀬」の新型パワーアンプ、その名はWATERFALL Integrated 250。

小型軽量な複合機能型のD級パワーアンプである、銀色のシンプルなスタイル、簡素なコンソールに多機能を象徴するかのような、幾つもの接続形式を備えたバックパネル、弁当箱を3つ並べた程度のサイズに秘めたる力。

先だって購入したこのオーダー注文式の風変わりなパワーアンプは、オーディオを深く覗き込むオーディオ趣味者だけでなく、これからオーディオを始める人々にも隔てなく、超越的な力を所有者にもたらす、歴史にその名を刻み、そして静かに埋もれていくであろう伝説となりえる機材だと感じた。

このアンプのスペックについて我輩が語るべき事は特にない、そういうものは製品紹介に丁寧に書き込まれている、自分が語るべきは数字が読めない…「全く判らない、俺は雰囲気でオーディオをやっている」という己も含めた多くの人々へ語りかける使用の体感であろうと思う。

「欲しかったのはこういう力なんだ!!」

感想は簡潔、圧倒的な力だ。

フルアーマーガンダムを得たイオ・フレミング少尉ばりの台詞が飛び出すこの新型アンプWF250は、パワーアンプとしての個体性能が同価格帯どころか倍額以上の領域の機材のそれに対してすら、圧倒的に優越している、我が家で使用されていた以前の機材はLUXMANのミドルハイ級モノラル・パワーアンプ、それも4基だ。

WF250はパワーアンプ4つ分の力を遥かに上回る、僅か1基、ステレオでだ。

これほどの力は想像していなかった、あまりにも圧倒的、圧倒的な力である、オーディオにおいてアンプのもつ「力」というのは数字上の定格出力だけを指さない、巨大なスピーカーを動かすだけでなく、暴れまわるスピーカーを「止める」ことも重要な性能だ、WF250の実行出力は旧来のアンプとそこまで差があるわけではない、寧ろ低い…だというのに、この冠絶した力はなんなのか。

それが「制動力」これをダンピングファクターと言い、アンプ選択の重要な要素となる性能だ、WF250はこのダンピングファクターが文字通り桁が違う、そう本当に「0が一個多い」のである、その数値…優に5000。

このあまりにも強力な力は、駆動に巨大なパワーが必要なMANLEY/ML10を十全に、最高の状態でドライブ可能だ、非力なアンプではML10が持つ直径22センチものSGMユニットをまともに可動させることは不可能だ、動かすことは出来ても止めることは出来ない、ブゥーンボォォーンといった、低音の止まってない、このスピーカーの栄光の歴史からすればあまりに惨めな音色を出すことだろう。

LUXMANを4基も使用してようやっと、これまでまともに使用することができたのである、しかし、WF250は僅か1基で、そして遥かに上回る。

剛力だけでなく、音の繊細さ…表現力も圧倒的に上回っている、D級駆動…つまりこれはデジタルアンプなのだが、従来のアナログアンプ、A級・AB級駆動形式に比べてクラスD駆動は、ハイパワーを得やすい代償に音は繊細さを欠き、面白みのない泥のような音色に彩られた2流の商品だった、それもこのWF250が登場するまでの話となる。

発展著しい2017-2018の音響シーンにおいてDクラス製品の進歩はめざましく、もはやアナログアンプに迫るのではないかという領域にあった、そしてついにその高い壁を超える機材が、今ここに誕生したのである。

現状望みうる、最強にして最も「廉価な」究極の力。

今尚、Dクラス製品でアナログの音色に比類しうる製品は少ない、あったとしても100万円以上のハイクラスに絞られる中、WF250は税込み38万8000円である、異常な数値といっていい、当然理由もなく廉価なはずもない、WFはブランドの牽引役として開発された事実上の音の良い広告であり、その制作難度とコア部品の供給性からして少数生産を運命づけられた、生まれながらにして希少なアンプなのだ。

希少なのは個体数だけの話ではない、その機能も音響機器の歴史上類を見ない特異な構成である、WF250は「DAC内蔵パワーアンプ」なのだ、プリメインアンプではない、DACを内部に「分離内蔵」した「パワーアンプ」なのだ、複雑に思えるが実態は簡素である、1つの筐体の中に電源を共通としたDACとパワーアンプという2つの機材を搭載している。

そしてWindowsとMAC、2つのOSに対応したUSB接続I/Fを持っており、他の機材を必要とせずにPCと直結し、ただ1基で即使用可能だ。

オーナーは使い方を選べる。

単純に強力なパワーアンプとしてDACをスルーしてアンプのみを使うか、驚異的な高性能を誇るDACとしてパワーアンプ部をスルーしDACのみを使うか、Integratedの名の通りDAC部に入れ、パワーアンプから出力させ複合機として使うか…そして音が澄みすぎていると感じるならオーナーは「プリアンプを追加する」ことができる、これはプリメインアンプではない、機材を自由に追加し、その機能を拡張させることができるのだ。

スピーカーを持たないオーナーは、そのフロントパネルに搭載されたヘッドホンジャックから所有するヘッドホンやイヤーホンを使うことができる、当然その圧倒的な力は、それらの十全な駆動を約束する。

今日、オーディオはそれ単体では完結しない、PCに接続されその音声を出力されることを望まれている、PCとオーディオの接続は常に専用の機材を要求され、それらがなくては音は出ない、しかしWF250はUSBと光接続が可能だ、光…オプティカル入力を持つということは、ゲーム機器の音声を直接再生することが可能だということだ、PCで再生する音楽・動画…PS4やXBOXから光を通して再生されるゲームの迫力ある音、空間すら表現する音の世界、WF250は他になんの機材も必要としない、これ1つで完結し、音が表現する別世界にオーナーを送り出す。

これほど冠絶した性能を持ちながら、ここまで特殊な複合機能を持った機材は類を見ない、通常オーディオ者は1つの筐体に複数の機能を持つ機材を避ける傾向にある、ノイズの元だからだ、しかし強力な電源とシールド性能、Dクラスの高効率はアナログ時代のそれらの欠点をほとんど見せない。

趣味者の求める性能と初心者が求める多様性の全てを兼ねたWF250、それはその性能に対してあまりにも安い、このあまりに破壊的なプライスがごく短い生産期間の対価であるといえども、これだけの物が誰の手にも届く範囲にあるというのは大きい、現状オーディオを新品で始めるにはそれなりの金額がかかってしまう、PCと接続させるI/FやDACを別途用意し、アンプを買えば30万円という数字はそれほどに珍しい状態ではない。

中古機材の流通が発達した現在、投資額のハードルは相当に下がっている、その半額で同格の構成を手に入れることも苦難ではない、新品でも20万円あればFOCAL/ShapeシリーズとI/Fが新品で揃い、格別の音色をオーナーにもたらすだろう、だがWF250はスピーカーやヘッドホンを除けはこれ1つで完結する、それほど莫大な予算を必要とせずに得られる環境は、20万や30万程度の「はした金」で手に入るモノでは全く無い。

オーディオの世界には壁がある、投入金額という絶対的な壁が、10万…30万…50万…70万…100万、その金額ごとに切り替わる絶対性能の壁を超えた、未知の領域の音、それを所有することのできるチャンスは少ない、しかし極稀にやってくる、残された時間はわからない、全ての状況がこのオーパーツが短命に終わるであろうことを示している、1基作るだけでも企業体力を削ぐであろう代物だ、長命であろうはずもない。

オーディオ者は優良な機材を他人に知らせない習性を持つ、しかしこの機材に関してはそうであってはならない、これは逢瀬の未来を決める試金石であり、このWFシリーズの成否が逢瀬の今後の機材制作の傾向とその総数を左右する、WFの成功は逢瀬と共に音響の明るい未来の兆しそのものなのだ。

音響の歴史は重大な転換点を迎えている、ついに実用化なったクラスDアンプの驚異的な性能進化が生み出す、新しく、そして古い、様々な形式のオーディオがこれから続々と生まれてくる。

WATERFALL Integrated 250は多くの人の手に渡らなければならない、この音が未来のオーディオの入り口、新しい音響の歴史、その始まりなのだ。



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siina-daioujou

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