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月面歩行器 : 妄想ショートショート016

月面歩行器 ムーンハブ

火星への探査が進む中、月は火星への旅路の中継点としての役割を果たすようになった。火星への直行は地球からの大気圏脱出のためのエネルギー消費が大きく、また、乗員の身体的負荷もあることから多くのリスクが伴った。月には豊富なヘリウム-3が存在し、これを用いて水素燃料を製造することができる。この水素燃料は火星への航行に必要なエネルギーを供給する主要な燃料となった。このため、月ステーションは火星探査のための重要な拠点としての役割を果たす。

リョウは地球で生まれ、エネルギー開発のエンジニアとして活躍してきた。彼の専門は再生可能エネルギーで、特に水素エネルギーの開発に従事していた。彼の技術力と経験が評価され、宇宙開拓プロジェクトに参画することとなった。今年から、彼は月ステーションに駐在することとなった。2年間の滞在予定である。この2年という期間は、月ステーションの環境に適応し、体調を維持するための最適な期間とされていた。また、2年後には新たな技術や装置のアップデートが予定されており、彼の知識と経験が再び地球で求められるためであった。

リョウは、月ステーションの新入りエンジニアとして、月面での生活を始めていた。彼の最初の任務には、月面歩行器の最新モデル、通称"ムーンハブ"のテストも含まれていた。

月ステーションは、地球の1/6の重力のもとで機能している。この軽い重力は、物資の移動や建設作業においては大きなメリットとなった。しかし、人間の体にとっては長期間の低重力環境は筋肉や骨密度の低下を招くデメリットがあった。
そこで、リョウたちが毎日使用するのが月面歩行器"ムーンハブ"である。月面歩行器は、筋力維持のための装置として開発されたものだったが、使用者からのフィードバックにより改良が重ねられ、さらなる機能が追加されていた。

最新モデルには「BodySculpt Navigator」(ボディスカルプト・ナビゲーター)という、数ヶ月〜数年先の目標体型を設定する機能が搭載されている。これは、使用者が希望する体型や筋肉のバランスをデータで管理し、実際の身体に負荷をかけ作用させることができるものだった。
リョウは、この機能を使って、地球に帰るときの目標の体型をセットしていた。彼の希望は、オリンピックのアスリートのような逞しい体型。毎日の行動の中で、"ムーンハブ"がリョウの筋肉に負荷を加え、確実に目標まで導いてくれる。
「2年後、地球に帰ったら、友人たちに驚かれるだろうな」と、リョウはしばしば思っていた。彼は、月ステーションでの滞在を、自分自身を磨く貴重な時間と捉えることができた。

つまり、"ムーンハブ"はフィジカルな身体にも心にも作用する未来の装着型スマートフォンとも言える多機能デバイスで、ウェアラブル・ハブとしての役割を果たしていた。
リョウが"ムーンハブ"を身につけると、そのインターフェースが彼の視界に浮かび上がった。通信、エンターテインメント、健康管理、そして筋力増強のためのトレーニングプログラムまで、彼の日常のあらゆるニーズに応えてくれる。

月ステーションでの生活は、リョウにとって新しい挑戦だったが、"ムーンハブ"のおかげで、彼は孤独や不安を感じることなく、充実した日々を過ごすことができた。

新型ムーンハブ:アップデート機能紹介

BodySculpt Navigator:
目標体型設定: ユーザーは1年後、2年後などの目標体型を設定できる。
進捗トラッキング: 日々の体型変化をリアルタイムで観察・管理。ユーザーの体型や筋力に合わせて、適切な負荷を自動で調整。
GravAdjust System:
重力調整: 地球の1/6の重力を模倣することで、月面での移動を容易にする。
筋力維持: 重力を増減させることで、筋肉のトレーニングをサポート。
Lunar Dust Repellent:
月の塵対策: 静電気を利用して、ムーンハブの表面から月の塵を反発させる。
Oxygen Recycler:
酸素循環: ムーンハブ内部で酸素を循環させ、長時間の活動をサポート。
Holo-Comm Interface:
ホログラフィック通信: 3Dホログラムを使用して、地球や他の宇宙ステーションとのコミュニケーションを可能にする。
Adaptive Footing System:
地形適応: さまざまな月面の地形に適応するための足部の柔軟性を持つ。
Energy Harvesting Skin:
エネルギー収集: ムーンハブの表面は太陽エネルギーを収集し、バッテリーに蓄える。
AI-Assisted Navigation:
AIナビゲーション: 月面の地形や障害物を認識し、最適な経路を提案。

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