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Play Forward: 妄想ショートショート045

Play Forward: 記憶のオーケストラ


2028年、メディア技術は生成AIにより飛躍的に進化した。それは伝統的な「記録-再生」メディアから「記憶-生成」メディアへと移行して5年の月日が経過していた。今ではこの新しいメディアは、単に保存した情報を再生(Play Back)するのではなく、ユーザーの過去の経験や感情、現在の状況を統合して、独自のコンテンツを"Play Forward"するものになった。

エミは、新しいタイプの音楽創作ツール「エモーションコンポーザー」を使って、自分だけの音楽を創ることに情熱を注いでいる。このツールは、エミの過去の感情、経験、さらには彼女の心の中の音楽への愛を分析し、まったく新しい曲を生成する。

「エモーションコンポーザー」はエミの感情や記憶をデータ化する。エミは、過去に感じた喜びや悲しみを音楽に変えることに夢中になる。

ある日、エミは失恋の悲しみを音楽に変換しようとする。しかし、「エモーションコンポーザー」は予想外の曲を生成する。それは悲しみだけでなく、希望や新たな始まりを感じさせる曲に変わっていった。そしてそれは聴く人によってもそれぞれ違った表現になっていた。
エミは気づく。テクノロジーは単に彼女の感情を反映しているのではなく、彼女が未来に進むための新しい道を示しているのだ。
私たちの感情や記憶を新しい形で表現するためにメディアは進化した。メディアは単に再生するものではなく、ダイナミックに変化する生成なのだ。

エミは自分自身の成長を実感し、テクノロジーが自身の内面を理解し、それを音楽という形で表現することに感動する。彼女は、自分だけの音楽で世界に新しい希望を届ける旅を続ける。


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妄想テクノロジー

エモーションコンポーザーの技術解説
「エモーションコンポーザー」は、革新的なアルゴリズムと進化したデータ処理能力によって、人間の記憶と感情の微妙なニュアンスを捉え、音楽に変換する。このシステムの核心には、以下の三つの技術的特徴がある。

可塑性のあるアルゴリズム
アルゴリズムはユーザーの経験や反応に応じて進化し、変化する。これにより、時間の経過と共により精度の高い感情表現が可能になる。エミが経験する感情の変化や成長は、アルゴリズムにも反映され、よりパーソナライズされた音楽を生成する。

動的なダイナミックデータ
ユーザーの記憶や感情は流動的であり、この変化するデータを捉えるために、エモーションコンポーザーはリアルタイムでデータを分析・処理する。過去の記憶や現在の心情、さらには将来への期待など、様々な感情のスペクトルが音楽創作の素材となる。

情感分析と音楽創作の統合
ツールはユーザーの心の動きを解析し、それを音楽の要素に変換する。たとえば、喜びは明るく活動的な旋律に、悲しみは緩やかで深いトーンに変換される。この過程では、心理学的理論と音楽理論が融合し、感情の本質を捉える音楽を創出する。

エモーションコンポーザーは単なる音楽創作ツールではなく、ユーザーの感情の成長と共に進化するインタラクティブな芸術体験を提供する。ユーザーは、自身の感情の旅を音楽として体験し、記憶の中に新たなメロディを紡ぎ出す。

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こちらも“Syn : 身体感覚の新たな地平” by Rhizomatiks × ELEVENPLAY を観て刺激を受けて考えたことがベースになっています。

生成AIの登場により、何が変わるのか?
その問いに答えを一つ考えてみました。

生成AIの登場によって、カードの裏と表がひっくり返ったと感じていましたが、Synの体験でそれが顕在化した気がしました。さっき撮ったはずの映像が目の前に現れる。しかしそれは記録されたものではなく、恐らく生成されたもの。もはや再生ではない。
映像が逆再生されているようで、実は現在進行形の現実を見せられていたりする。同じ出来事を違う方向から"実体験"することもできるかも知れない。
テクノロジーは見られる側だけでなく、見る側も複製するようになる。

データの書き込み(Writing)は、記録:Recordから記憶:Memoryになる。それは不安定さがありながらも、再現性や主観性を併せ持つものになるだろう。
そして、データの読み出しは、再生:Play Back から生成:Play Forward になる。

この考え方で新たなメディアや新たなAIのコンセプトも考えられそうです。
またね。

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