【旅エッセイ39】二ヶ領用水の桜並木

 二ヶ領用水を知っているだろうか。
 多摩川を水源とする用水路で、かつては農業用水として使われていた。

 歴史は古く、用水路としての測量が始まったのは1597年(関ヶ原の戦いの3年前!)で、完成したのは14年後の1611年。

 それから400年。二ヶ領用水は今も地域の憩いの場所になっている。

 私の自然好きのルーツはどこにあるのだろうと考えると、やはりこの二ヶ領用水だと思う。二ヶ領用水は川を挟むように桜が植えられていて、桜並木になっている。幼い頃を二ヶ領用水の沿川で過ごした私は、春になるたび満開に咲く桜の木々を当たり前のものとして眺めていた。二ヶ領を泳ぐ鯉にカニパンをあげたり、飛び石をジャンプして落ちてずぶ濡れになったり、水源の多摩川まで出ては広々とした空と川を眺めていた。

 大人になり都会で暮らし始めて思うのは、自然の美しさを味わえるのは決して当たり前じゃない。贅沢なことだ。

 自然が好きだと思い出してからは、私は春になる度に二ヶ領用水を訪れている。帰郷や旅行と呼ぶほどの距離でもないけれど。東京と神奈川だから会社に行くのと掛かる時間は変わらない。

 でも、その程度の距離でも日常の忙しさに飲み込まれてしまうとなかなか行くことができない。毎日やらなければならないことが山積みだから、気を抜くと日常は必要なことの繰り返しに陥ってしまう。

 仕事、家事、子育て、仕事……時々は理由をつけてでも自然を見に行かないと、目まぐるしい忙しさに呑まれて気が滅入る。有り触れた日常を繰り返す中で自然に触れ合えていた子供時代は、本当に恵まれていたのだと思う。

 街の景色は移り変わり、私も大人になったけれど、桜並木の美しさはあの頃のまま変わらない。

 きっと400年前もそうだったように、今も桜並木と二ヶ領用水は人々に愛されている。


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ダイセンブ

旅と人生について考えるエッセイスト。散歩、自然、写真が好き。毎日、1枚の写真を載せて、旅と人生をテーマにした様々なエッセイを書いています。2019年4月21日から、1日1エッセイ継続中。

コメント2件

みんな相撲のマス席みたいなとこで呑んでますな〜。
なんかイイ!
\(^o^)/
鳥裸族さん
コメントありがとうございます!
毎年、春になると花見客でいっぱいですよ。場所取りが早朝から行われて、みんなお酒呑んで大騒ぎしてます。
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